march forward.
りりかの独り言。

2003年01月24日(金) 顔の無い天使

「ホントに、片付いてきたね」

遊びに行った、あいつの部屋。

テレビの上とか下とか、すっきり。

前は、乱雑に本とかCDとかゲームソフトがおいてあったのに。



「あたし、お風呂場掃除してあげるね」

そういって、お風呂に入るついでに、綺麗に掃除した。

それくらいは、やらせて欲しいなぁって、言って。





「寂しくなった?」

あいつが聞いてくる。

実はまだ、実感が湧かないの。

って、あたしは答える。



でも。

何かあったとき。

あなたに会って話したいとき。

いないって事が、やっと現実に感じ取れるんだと思うよ?って。

だから。

その時はきっと、辛さにつぶれそうになっちゃうかもしれないなぁって。





「電話とか、メールじゃ、埋まらないかもしれないから。これあげても、そんなの全然埋まらないかもしれないんだけど」

あいつが、そういいながら箱を出してきた。

「本当は、一年目に、送る予定だったんだけど。引越しの物に紛れちゃったりしたら、嫌だからさ」

「何?」

「開けてみて」




中に入っていたのは。

薄い紫の、ガラスで出来た、オルゴール。

天使が、キャンドル持っている、形。

天使の顔には、目や口や鼻がない。



「これ聞いて、埋めてくれたらいいなぁって思った。顔がないのはね。そのときそのときの、りりかの気持ちに合わせて想像してもらおうかなぁって思って」



黙ったままの、あたし。

「嬉しくなかった?」

慌てて首を振る。

「嬉しいよ・・・素直に。ホントに・・・ありがと。でも、これ聞くとき、きっとあたしは悲しいときばかりで、天使の顔は悲しい顔ばかりじゃないかなぁ」

あたしの頭をなでながら。

あいつは、言う。

「嬉しい気持ちのときも、聞いて。たとえば、俺と会う前の日、とか」




曲目は、星に願いを。

あいつは、この曲が好き。

あたしからの着信音もこの曲。




ご飯を食べて。

二人で寝転がる。

あいつの胸に、あたしは頭を乗せて。

うとうとする。

いつもみたいに。




あたしの頭をなでながら、あいつが口ずさむのは、星に願いを。

あたしは、今は嬉しい、幸せな気持ちでいられる。

けど。

きっと、泣いてばかりの、寂しい表情の天使を。

この先、何度も見る事になるんだと、思う。



でも、もっともっと先で。

笑顔の天使ばかりを、見る事になりたい。

なりたい・・・なるよね。






そんな事を。

あいつの子守唄を聞きながら。

眠い頭で考えてた。


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