「ホントに、片付いてきたね」
遊びに行った、あいつの部屋。
テレビの上とか下とか、すっきり。
前は、乱雑に本とかCDとかゲームソフトがおいてあったのに。
「あたし、お風呂場掃除してあげるね」
そういって、お風呂に入るついでに、綺麗に掃除した。
それくらいは、やらせて欲しいなぁって、言って。
「寂しくなった?」
あいつが聞いてくる。
実はまだ、実感が湧かないの。
って、あたしは答える。
でも。
何かあったとき。
あなたに会って話したいとき。
いないって事が、やっと現実に感じ取れるんだと思うよ?って。
だから。
その時はきっと、辛さにつぶれそうになっちゃうかもしれないなぁって。
「電話とか、メールじゃ、埋まらないかもしれないから。これあげても、そんなの全然埋まらないかもしれないんだけど」
あいつが、そういいながら箱を出してきた。
「本当は、一年目に、送る予定だったんだけど。引越しの物に紛れちゃったりしたら、嫌だからさ」
「何?」
「開けてみて」
中に入っていたのは。
薄い紫の、ガラスで出来た、オルゴール。
天使が、キャンドル持っている、形。
天使の顔には、目や口や鼻がない。
「これ聞いて、埋めてくれたらいいなぁって思った。顔がないのはね。そのときそのときの、りりかの気持ちに合わせて想像してもらおうかなぁって思って」
黙ったままの、あたし。
「嬉しくなかった?」
慌てて首を振る。
「嬉しいよ・・・素直に。ホントに・・・ありがと。でも、これ聞くとき、きっとあたしは悲しいときばかりで、天使の顔は悲しい顔ばかりじゃないかなぁ」
あたしの頭をなでながら。
あいつは、言う。
「嬉しい気持ちのときも、聞いて。たとえば、俺と会う前の日、とか」
曲目は、星に願いを。
あいつは、この曲が好き。
あたしからの着信音もこの曲。
ご飯を食べて。
二人で寝転がる。
あいつの胸に、あたしは頭を乗せて。
うとうとする。
いつもみたいに。
あたしの頭をなでながら、あいつが口ずさむのは、星に願いを。
あたしは、今は嬉しい、幸せな気持ちでいられる。
けど。
きっと、泣いてばかりの、寂しい表情の天使を。
この先、何度も見る事になるんだと、思う。
でも、もっともっと先で。
笑顔の天使ばかりを、見る事になりたい。
なりたい・・・なるよね。
そんな事を。
あいつの子守唄を聞きながら。
眠い頭で考えてた。
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