今日、婦人科の検診の日だった。
朝から行きたくなくて、あいつがモーニングメールして起こしてくれたんだけど、「行きたくない」って返したりしてた。
何で、行きたくないなんて言うの?
だって、生理来て無いから・・・
どうせ、注射だもん・・・
ライラを保育園に送る。
このまんま、家に帰って寝ちゃおう。
それで、あいつには適当な事言って、行った事にしちゃおう。
自宅の駐車場に付いたら、見覚えのある車。
「なーに、家に戻って来てんの?予約は九時からでしょ?もう15分しかないじゃん」
「なんで、ここにいるの?」
「絶対に、家に帰ってきて寝ようとか思っているだろうなぁって思ってね。見張ってた(笑)」
「後つけてたの???」
「違うよ、九時までここで待っているつもりだったんだよ。ライラ送って、真っ直ぐ病院に行くなら、九時まで待っても来ないでしょ。それで、来なかったら俺も病院に行こうと思ってた。けど、りりかさん、やっぱり帰って来るんだもん、がっかりだよー」
見透かされてる・・・
時間を潰してから帰ってくればよかった・・・
あ、でも、病院に行くつもりだったみたいだし、あたしが嘘ついて「行ってきた」なんて言ったら絶対に怒るだろうから、逆によかったか。
「行きたくないんだよ・・・」
「だめ!早く乗って!」
「やだー。やだやだ、やだって!!!」
「うるさい!乗るの!!」
無理矢理、あいつの車に押し込められる。
あたしも、観念して、おとなしくした。
これ以上嫌がったら、マジで切れるかもしれないしなぁ・・・
せっかく、こうして来てくれているんだし。
九時を過ぎたせいか、いつも通りか、二時間半待たされた。
でも、あいつと一緒に話したりしていたから、時間が過ぎるのが早かった気がした。
待っている途中、生まれて1ヶ月くらいの赤ちゃんを見た。
検診かな。
「かわいいね」
あたしが思わず声に出して言ってしまった。
あたしは、無意識に自分のおなかに手をあててた。
ホント、無意識に。
そしたら、赤ちゃんのおばあさんと見られる人が、話しかけて来た。
「初孫なんです」
「そうですか、おめでとうございます」
「ありがとうございます。何ヶ月ですか?」
あたしとあいつを夫婦と思ったんだろう。
夫婦で妊婦検診に来ていると思ったんだろう。
違います・・・
婦人科の検診なんです。
無排卵で。
なんて、言えるはずもなく。
「今、3ヶ月です」
なんて、嘘をついてしまった。
あいつを見たら、あたしを見て、ちょっと笑った。
その笑い方が、困ったような感じとか、嫌な感じじゃなくて。
自然に。
微笑んだって言う感じだった。
「じゃー、大事にしないといけませんね」
「はい・・・」
「元気な赤ちゃんが生まれますように」
おばあさんが、笑顔で言ってくれる。
そして、あたしのお腹をさすってくれた。
あたしは、泣きそうになって。
会釈だけした。
なんで、泣きそうになったんだろう?
嘘ついたから?
子供なんかいないから?
子供なんか出来ないから?
夫婦と見られた事が嬉しかったから?
今もよく分からない。
検診の結果、やっぱり無排卵状態は続いていて、注射をされた。
明日は、副作用を耐えながら、仕事かぁ。
あたしを送っていくとき、あいつが言った。
「さっきの。あのおばあさんとの会話。あれが、本当になったら、いいね」
わかんない。
本当になったらいいのか、悪いのか。
だって、あたしはもう妊娠なんか出来ない気がする。
何で、そう思うの?って聞かれたら分からないけど。
罰、なのかも知れない。
いろいろなもの、人の心を。
壊したり、傷つけたりした、代償なのかもしれない。
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