あいつが、髪を切った。 就職活動を本格的にするため。 茶髪だった髪も、ちょっと色が落ち着いてた。
あたしは17歳で結婚しているから、もちろん就職活動とかそう言うの分からない。 高校も中退だし。 バイトの面接とかには、髪の毛きったり、色染めたりして臨んだ事ないから。 いろいろ大変なんだなぁって思ってた。
「どんな仕事したいの?」
「特にないですけど・・・これが嫌だなって業種はあるけど・・・」
なんて話を、生理痛でだるい体で聞いてた。
「地元に会社が支店とかでもいいからあるのが理想ですね」
「なんで?」
「地元に帰ろうかなと思ってるから」
「いつ?」
「まぁ、来年の4月に入社して、すぐでもいいし、研修みたいのが終わって、勤務地希望出せるときになってからでもいいし」
入社してすぐ??? ていったら、来年の4月にすぐ???
「そ、そしたら、遠距離になっちゃうね・・・」
「でも、土日とか、休みのときに帰って来るし」
あたしは、三日会わないだけでも、寂しくなってしまうくらいなのに、それが1週間に一度、しかも、仕事が忙しくなったりしたら、毎週だって帰って来れないと思うし。
不安になった。
「そしたら。あたしは我慢出来なくなっちゃうだろうなぁ。寂しさみたいのに」
珍しく、素直に気持ちを言って見た。
あいつは驚いて、でも予想してたかのようにすぐに答えた。
「でもね。俺の人生設計では30までに結婚資金とか貯めなきゃならないんですよ。将来結婚する人に、経済的に不安なままからスタートさせたくないから。そのためには、実家に帰って貯める方が確実なんです。こうして一人暮らしをしてたら貯まらないしね」
ふーん・・・結構まじめに考えているんだなぁ。
でも、寂しいよ。
あたしは、遠距離は出来ない。
だって、いつでも傍にいてくれるって言う安心がなきゃ、怖いもの。
「だから、俺が地元に帰る前までに、ちょっとくらい離れていても平気!って言う信頼関係をつくっておきましょうよ。月に2,3回しか会えなくても、信じているし、大丈夫だもん!って言う気持ちになれるような関係になっていましょうよ」
「んー・・・どうだろう?今、君は、あたしの中で、かなり信用がないからねぇ」
「それで、俺が30歳、りりかさんは35歳。幸せな結婚生活をスタートさせましょうね」
まただ・・・なんで、いつもこういう重い話をさらっと言うんだろう。
無理だってば。
「あのね。君は普通に子供も産んでくれる、初婚の人と結婚しなさい」
「あのね。りりかさんも普通に俺の子供を産んで、結婚しなさい(笑)」
笑い事じゃないよ・・・
「まー。いつか結婚できるときが来て、それでも、今みたいにりりかさんがやだやだ言い張っていたら、無理やりでも既成事実を作っちゃいますけどね」
「は?」
「ゴムに穴開けちゃうから!」
・・・ばか?
女がそう言うことして、結婚するための既成事実を作る話は聞いた事あるけど。。。男がやるか?
「そしたら、あたしも妊娠した事内緒にして、病院に行って、子供産みたくないんで・・・って言うからいいよ」
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