現在進行形の時系列にパキッ、パキッと音を立てて割り込んでくる何らかの過去のビジョン。唐突に始まる十数秒のそれは、二度と戻らない人間関係の美しい部分だけを固めてダイジェストで見せてくる。 見せてくれても困る。どうしようもないのだ。2年、3年が経ち、もっと経ってしまった人も多い。いくら何をどうこう言ったって、人間、常時、細胞から記憶から意識から、日々常々、様々な刺激と体験を累積してゆき、お互いに知り合っていたものとはまた別の誰かになっていってしまうのだ。その時の流れを、稀に無視して、突き抜けた付き合いのできる人もいる。ごく稀に。そういう人間だけは今も相変わらずで付き合い続けているが、そうでなくて自然淘汰ないしは消滅を迎えた人たちの、どれほど多いことか。 願わくば復活させたいと思ってならない自分が此処に居る。 ひどく腹立たしい。 この手に繋げられる人数はおよそ5人せいぜいだと感じる。 なのにまたないものねだりをしようとする。 魅力的な人がいた。壮絶に面白い人がいた。とても優しい人がいた。抜群にキレてた人がいた。どこまでも一緒になれる人がいた。すばらしく美しい人がいた。私の欲しいものをどこまでも与えてくれる人がいた。そんな人たちの代わりになれるような人は今もいない。 「唯一無二の人間どもと出会いたい」という十年前の渇望は確かに満たされていた。が、その願いの次にくる現象に対して、立ち向かう術は何も用意していなかった。恵まれすぎた時代の次に来る寒波をしのぐ、さてその後、どうするのか? おぼろげな影を追っていると目がおかしくなって目の前が見えなくなります。影を無視していると実体化して眼前に現れて視界を連れ去ります。その幻の手を取って一緒に行こうとすると奈落の底に叩き落すがごとく、冷たく、現在の時系列に意識が引き戻されます。理性はそこまで甘くはなくて、自分が今此処にしか生きられないし生きていないっていうことを忘れてはいない。 あなたがたにもう一度会ってもおよそ伝えられる言葉や声が見付からない。きっとしらけた時間が冷たく流れて、まるで浪費してかなぐり捨てるような無駄な数時間になる。既に体験済み。お互いにまた失望する。それでも会いたい、かつての私たちに。そして何かを譲り受けたいと願うのだ。浅ましい? いや。貪欲だと言い換えておこう。だってあなたがたの代わりは他にいないのだから。 |
writer*マー | |
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