真っ白い飛行機に荷物と人を詰め込んで、塩と死の世界に飛び立ってゆく。この空港は待ちに待った人々をあの世に送るための機関。 見送りのない不思議な光景、皆がとてもクールに静かに歩を進めて乗り込んでゆく。 「世界の果てへ」というとても陳腐なことを言う奴は誰もいない。 死界の境界線を越えても機体が壊れたり消滅しないように特別なコーティングが為されている。 そこに黙って、死客者のふりをして乗り込んでみる。 生者の反応を感知され、特別査察飛行部隊が雪崩れ込んで来る。 高度何万メートルあるか分からないというのに迅速で、すぐに私を割り当てる。 私は「ここには一時的に、世界の果てを探りにきただけ」と答える。 「ここに立ち入った以上は帰るも帰らないもない、帰れないのだ、 生まれてくる胎児が己をどうこうできないのと同じでな!」と叫ばれる。 私は「ここから出るよ、見終わったら私は出て行く」と答える。 「ならば今ここで、お前を死者にしてやろう!」と檄が飛ぶ。 私の胸や肝臓を貫いたかに見えた白く光る剣はそれでも私の命を奪えなかった。当然だ。私はこっちの世界に体を置いてきて意識の中で白い死のフライトに便乗したに過ぎない。 驚かれても困る、どうせなら世界の果ての拘置所に連行して下さい、どんなに果てにあるのかもっと見てみたい。私は答える。 持ち帰れるものはないぞ、と最初に案内者から説明は受けていた。夢と同じで、意識の確たるところに記憶を留めるものでもなく、ましてや手にした撮影機材で写し取れるはずもない。物理的には立ち入れない領域なのだ。観測方法、記述方法も根本的に変えてしまわなければならない。それを敢えて、現世でのやり方に固執した。時間が無かったのだ。 蓮が咲いたり仏陀が待ってたりするような生易しい世界ではない。ただ白く、虚空の中に、開け放された壮大な廃墟が立つ。高度な文明が滅びた跡のようだ。白く輝く空は絹の上質な繊維を光にあてたかのようにキラキラと輝いたり、くすんだりする。虚ろでならない。 誰かを探しにきたのでも、誰かに呼ばれたのでもない。ただ「世界の果て」という言葉に向かって愚直に突き進んでみたかっただけなのだ。 次はどんな夢を見るのか・・・。 |
writer*マー | |
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