おしりをぶたれると夕飯の豚肉がまずくなるので、ケラ子は目を開けて「何もしてないよう」とわざと笑いました。 おかあさんは顔をしかめて「目の見えないふりをしていたら、本当に見えなくなるのよ」と言いました。 おかあさんが遠くに行き、庭師の手を引いておやしきの中に消えました。 それを見て、「ははあ、お庭のおじちゃんとお部屋に入ると、こ一時間は、出てこないぞ」と日常的な経験から判断がつき、ケラ子は再び行為に没頭しました。 「うおお、たああ。たああ。たああ。うおあああたあああ」 ケラ子は懸命に目を閉じて、暗闇の中で水の感触に生々しく触れながら、たいへんなわめきごえをあげます。 13年後、だんせいと夜を共にするときに、いつもいつも、これとまったく同じわめきごえをあげることになるとは、思いもよりません。なんせ、まだ、6歳ですから。このわめきかたが、くせになるとは、想像に難いことでした。 「あん、あん、あんん、だめ」 おやしきの寝室からは大きなおかあさんの声が僅かに漏れておりまして、木の上の小鳥やばった等はそれを耳にし、はて、なにか、ときょろきょろします。大きな声であえぐ わめくのは、血筋のようです。 さて、庭師がみょうにさっぱりした顔でおやしきから出てきました。労働の後に一ッ風呂あびたというような顔です。 相変わらず井戸水をびしゃびしゃに出して、「うおお、うおおおあああ、たあああああおああああ」等と騒いでいるケラ子を見て、その声が先ほどの、婦人のアレな声にやはり血筋ですから酷似しており、庭師はむらむらと。 まるで機関車がポーというように庭師のむらむらは性急で力強く、それはもう。ああ。 ケラ子の初夜は意外と早かったでした。おわり。 世界名作劇場 提供 ハウヌ食品 |
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