○俺は京都の山奥から夕方帰還した。先日、ここで話したように、俺達は山奥で合宿をしていた。叫び声が上がる。電気処理された肉声が轟く。音響派の男が人の手から拡声器を奪い取って叫ぶ。 『現実は虚構だ』虚構だ、虚構なんだとアキT君が繰り返す。俺は触発され、車が通り過ぎてゆくのに拡声器を振り乱す。 マー;『はい気をつけて、 虚構が通ります、みんな気をつけて。そこのけそこのけ虚構が通る』アキT;『気をつけよう 暗い夜道と 柄谷行人』(※からたに こうじん=哲学などを頑張る学者。著作多数。)アキT;『みんな生きてるって、おかしい、おかしいって』真っ暗な夜の車道。拡声器を口に部員が叫ぶ。 それは続いた。 アキT;『気をつけよう 暗い夜道と吉本隆明、おい、 オイ吉本隆明!おまえ何言ってるか意味わからんねん、ほんまもうおまえボケとんのかーーーー! ワアーーーーーー(息吹叫)』 『ブゥウウオオオオオーーーーーーー(息ノイズ)』『ブゥウウゥゥゥウウーーーーーン”』『プァン プァン プァン プァン プァン(警報)』やべえよ。拡声器っていうより俺達(成人以上)がやべえよ。 男の子だけ凄いよ。人類の可能性が見える気がする。 アキT『メルツバウーーーーーー!!!』ファンがライブ会場で耳栓するっていうノイズ音楽家の名を叫ぶ夜道。俺達は幸せだ。○打ち上げ花火の水平撃ち、逆さ縛り、蹴り倒し。導火線を引き抜いてしまったので俺は隣で別の花火を燃やして火ィ移すのに苦労した。 火花噴射筒型の花火は 横に倒すと危険度が10倍くらいにハネ上がる。ビシュウウビシュビシッシュウッシュショアアアー。可愛い顔した女の子が、倒れた筒の口の真向こうを歩いていて『顔が!焼ける!』と俺は肝を冷やしただよ。○普通どんな体育会系もしくはナンパなクラブ・サークルでも、花火しかも線香花火ともなれば、 男が目ざとく女に寄り添うものだ。そしてさり気無く言うのだ、『xxちゃん、最近どうよ?』『恋愛とか、してる?』みたいなね。ケッ。お前等いっぺん死んで来い。って言うかお前等ウチらといいことしようぜ。死んだらええねん。線香花火がビチパチと甲殻プランクトン手足のような火花を散らしているすぐ傍で、ほの甘い空気を軍靴で踏みつけるように、拡声器は部員の私物だ。JR大阪駅で鳴らすと駅員がすごい目をしていた。うひゃあ。マー;『ハイ、そこの君、ゲノムが下等だ。繰り返す、そこの君はゲノムが下等だ、えー、生きててもしゃあないので生殖を断念しなさい。繰り返す、生殖・交配・挿入の類を諦めなさい』 『なんでお前ら生きてるねん!!全部死んだらええねん』『ブゥゥーーーーーーーーーーーーーー!!!』(拡声器に噴息)もう当事者の俺にも解りません。○先輩のEg氏と色々話す。 Eg氏;「最終的には、機械使わずに手ェでレコード回すのどうやろって考えてた」 マー;『え”え"っ、フルマニュアルですか!』 Eg氏「まあ、電気の無い時代、江戸時代のDJの気持ちになって、ね」 マー;『うわー、江戸だなんて非エレキテルDJ・・・』 Eg氏;「手ェやから、ペース保つのめちゃ難しい」 マー;『殿様お抱えDJやと、電気使えてそう』 Eg氏;「どうやって人間の指で33半回転を保ち続けるのかって、凄く難しい」 ○おれの記憶はそこからEg先輩が広瀬香美を小声で歌ったりしたシーンまで飛んでおり、寸断しているようである。松mt先輩が浪人時代、野球ゲームばっかやりまくってたという話を聴いた。飛ぶなあ記憶。 ○女性とのひっそりとした会話も弾んだ。いいムードが流れる。 マー;『オガwさん、なんでさっきからずっと石積んでるんですか、』 ちょうど一年前にも彼女にそう言った。 去年の今頃、彼女はやさしい顔で、石をタテに積んでいた。しかも結構ひたすらだった。難しい。 今年は、 マー;『オガwさん、なんでさっきからずっと石並べてるんですか、』 オガw嬢「えっ、なんでもないです(小声)」 今年は彼女は石を一列に並べていました。 マー;『将来どんなことしたい?30歳とか』 オガ嬢「いえ、そんな、 もうなにもしたくないです」マー『家で普段何してるん?』 オガ嬢「え、なにもしてないです、 いつも、ねてます。あんまり・・・なにも・・」マー『好きな本とか・・・』 オガ嬢「いえ、べつにないです」 これは何やら凄そうだと俺は うなった。 川の向こうでそびえ立つ巨大な日吉ダムを思いながら、俺は彼女に問い掛けた。 マー『あのさー、家でー、 植物と会話とか、してないの?普段、家におるときとか』オガ嬢「えっ、なんですかそれ、話す、んですか」 マー『いや、出来へんことも、無いらしい』 オガ嬢「ぇえ〜〜、すごぉい〜・・・」 マー『こう、植物を、 愛でる感じで、こう、(なんかの真似)ね、いや、俺も現場を見たことないねんけど、出来るらしい』とりあえず愛してるぜ、植物愛してるプロの方。あなた凄い。もうダメ。俺はあなたにこの日吉ダムを捧げたいと思った。そして吼えた。 『ダムあげるから |
writer*マー | |
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