2度目の躁病の姉へは絶望感でいっぱいだった。 とにかく一緒にいたくなかった。 早くこの家から離れて欲しかった。
なのに、何故かなかなか入院しない。
母に聞いた。 「なんであの人を入院させへんの? 早く入院させて!早くどっかやって!」
母は、答えた。 「○○病院(姉と母が心の病になると通う、前回姉が入院した病院)が空いてへんねん。 空くまで待って。」
「そこじゃなくても他に病院あるやんか! 別のとこでもいいから、とにかく早く入院させて!」
「●●病院(別の病院の名前)は一回入院したら2度と出られへんとかいう話やし(真偽は定かではない、 ただの噂だと思うけど)、暫く待って。」
「それでいい、2度と帰ってこんでいい、だから早く入院させて!」
「なに言うねん、あんた、家族やんか。 家族が労ったらなどうすんねん。」
「家族やからってなに!? 家族やったら我慢せなあかんの? あんな人を我慢して受け入れたらなあかんの?」
2度目の躁病の姉はやっぱりおかしくて。 下着姿で家中を歩き回って、 「日本が勝った、日本が勝った、何であんたらは喜ばへんの?日本が勝った!!」 訳の分からないことを言いながら万歳を繰り返していた。 下着姿の姉に、祖母が服を着なさいと言うと、 「はよ着せてや!そんなん言うんやったらはよ着せてや!!」 と怒鳴り返して。 祖母がいざ服を着せようとすると徐に抵抗したり。
嫌、嫌、嫌。 もう、嫌。
「私はあの人が家族なんが最高の不幸やと思ってるもん!!」
感情を留められないままに声を上げた。
母は、呆れと苦笑いとが混じった表情をした。 これ以上はもういいといった風情でそっぽを向いた。
泣けてきた。
泣きながら言った。
「お願いやから入院させて!」
母は「今は無理」の一点張り。
気持ちが荒れて荒れてどうしようもなくなった。 頭の中はぐちゃぐちゃでどうしようもなくなった。
手近にあった皿を割った。 手近にあった本を撒き散らした。
それでも母は、火曜日には空くからそれまで待ってといって譲らなかった。
今は、木曜日。 あと5日も我慢しろって?
無理、です。
…いや、ただの正気の演出だったのかもしれない。
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