片翼日記

2002年07月07日(日) ☆200HIT御礼☆


「あっつ・・・」


全身が溶けてしまいそうな暑さ。


暑いのが苦手な僕は、

本当に、溶けてなくなってしまいそうだった。


「もぉ、だめ・・・コンビニ・・・」


一時凌ぎに、少し遠くに見えるコンビニを目指す。


「ねぇ。」


後ろから、小さな女の子の声が聞こえた。


誰かと遊んでるのかな?


そんなことを戯れに考えながら、僕は進む。


「ねぇ、お姉ちゃん。」


Tシャツを引っ張られる感覚を覚えて


振り返る。


小さな女の子が居た。


麦藁帽子をかぶったその女の子は

僕のTシャツをはなそうとしなかった。


「どうしたの?僕になんか、用事?」


久しぶりに、“お姉ちゃん”なんて呼ばれた事に

違和感を感じてみたり。

制服じゃないのにね、なんて思うのだ。


「アイス、買って」


図々しいその子は、コンビニを指し微笑んだ。


「お母さんは?」


「ままは、出かけてる」


「お父さんは?」


「ぱぱは、お仕事」


「一人で此処まで来たの?」


「うぅん」


「誰と来たの?」


「知らない人」


その返答にいささかいや・・・かなりの不安を覚えて、

とりあえず変質者ではない僕が、預かることにした。


どせ、アイスを買う間だけだしね。





「おいし〜ぃ」


コンビニで買ったアイスをコンビニの裏手の公園のベンチで食べる。


僕も女の子に習って、アイスを食べることにした。

バニラ味が、冷たさとともに、心地よく広がる。


ふと、隣を見ると女の子は僕の方を見つめてた。

正確には、僕のアイスの方、だが。


「食べる?」


「うんvあ、お姉ちゃんにもわけてあげるねv」


「ありがとう」


少女が食べていたイチゴのアイスは結構、溶けてしまっていたのだけど、

甘いイチゴの味が、やさしくて、おいしかった。


「「おいしいね」」


お互いに微笑んで、アイスを交換。

喋ることもないまま、ぼぉっと冷たさを味わった。


食べ終わってしまって、暇を持て余し始め、女の子のほうを見れば、

不思議なほど、澄んだ瞳で空を見つめて、静かに、誰も気づかないほど静かに、


独り、ただ、涙を流していた。


僕には、それが自然と流れている涙だって、なぜか伝わってきて。


だから、何も言わずに、僕も空を見上げることにした。




空は綺麗だった。


雲が 少し。


あとは どこまでも どこまでも 青。


とどまることを知らない


一面の 青。




知らないうちに、僕の瞳からも涙は流れていて。


僕と女の子はお互いの涙に気がついて、

微笑みあって、軽くてをつないで、空を見続けた。


女の子の手は汗でしっとり、湿ってて

乾いたつめたい僕の手に比べてずいぶんと、あつかった。


「「空になりたいね」」


二人同時にこぼした言葉に、僕らはまた微笑みあって、

でも、今度は、よいしょと二人で立ち上がった。


ずいぶんと長い時間、空を見ていたらしく、

辺りの風が少し夕方のものになってきてたから。


「もう、帰る?」


僕の問いに、女の子はコクリと頷いて、二人でゆっくりと

僕らが会った場所へ向かっていった。


そこには、女の人が立っていた。


「あら、探していたのよ」


「・・・」


女の子は、黙ったまま僕の手を一度ギュッと握って、

それから女の人の方へ歩いていく。


女の人は、不審者を見るような目で僕を見て、去って行った。


きっと、あの人は病院の人だ。病院のにおいがする。

じゃあ、あの子は入院してるのかな?




ふと、そんなことを考えたりもした。


だけど、見上げた空はやっぱり綺麗で、


小さな女の子と僕が同じ澄んだ涙を流したことや、


同じことを感じられたことが嬉しくって


僕は、空を見上げながら、帰路についた。


2002.07.07


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いやっ、石なげんといてっ(涙



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如月冬夜 [MAIL] [HOMEPAGE]

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