琥珀色の時
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2005年08月12日(金) トマス・ハリス「ハンニバル」


原作はもっと怖かった!「ハンニバル」でした。

「羊たちの沈黙」に続いてのFBI捜査員クラリスが颯爽と登場…なんだけれど、最初の麻薬がらみの事件の顛末が彼女にとても不利に動いて、なんか仕事に対する情熱に水を差されてました。
その麻薬女ボスを銃殺した件に関する調査会でもクラリスの態度はホント立派なんだけれど、それがかえってダメ男どもを刺激するのか、軽く閉門蟄居の様子。

しかしいろんな経由から、レクター博士の再調査を専任して、ますます快調にしっかり仕事してます。
レクター博士の嗜好を調査、ワインや食品や車などレクター博士が米国に戻ったらきっと入手するものへのチェック体制、細かい分析などなど読みでのある捜査方法が描かれていきます。

もう一方は、大富豪のメイスン。若い頃の無軌道生活にレクター博士との接点があり、錯乱のうちに自分自身を自傷(後ではもっとすごいレクター博士の語る真実あり)レクター博士に偏執狂的な復讐を狙ってます。
この人のエピソードでオソロシイのは、子供をいじめて泣かせてその涙で作るカクテル、常軌を逸してます。

この復讐の道具にかり出されたのが「豚」
メイスンの家業も食肉業で、相当あくどいこともやって大きくなった事業らしく、このあたりの深い書き込みで、豚肉食べたくなくなりそう→美味しいんだけどさ。
人食いとなるべく調教(?)されるある種の豚ってのが、とても怖いんだけれど、映画でもすごかったな。

レクター博士の逃亡先フィレンツェでの重厚な語り口も、歴史に残る先祖を持つ刑事との一件もいっさい手抜きのない筆力でぐいぐいと読ませます。
もう細かすぎるくらいの登場人物を映画はよくまとめたなぁと思いますが、本はこの位でなきゃつまらない。

さて、米国に戻っていよいよメイスン、クラリス、レクターの三つどもえ戦。
映画にはなかった(と思う)メイスンの妹(レズビアンで、遺産相続のためにはメイスンの直系が欲しい)と映画でさすがに目を覆ってしまったクラリスの天敵クレンドラーの生きながらの脳みそソテーシーンなど、衝撃なクライマックスは濃い濃い。

映画とは違うラストに驚きもありましたが、レクター博士の過去であるナチスの残党に妹を食われてしまった悲劇にも言及があり、なぜクラリスに執着するのかなど謎解き部分もたくさんありましたね。

しかし本当に濃い作品で、お腹いっぱい、豚はちょい遠慮するよ(笑)な読み物でした。


琥珀 |MAIL

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