2007年04月15日(日) |
おお振り(大学生アベミハ) |
あの夏を思い出すと、虚勢を張った自分がいて、少し懐かしく涙が零れた―――。
「あれー、あ べ君、何してるの?」
荷物の整理をしていたら、肩にチョコンと顎が乗せられた。 ふわふわとした淡い色をした髪が頬を擽る。
「いらねぇもの、捨てようかと思って」
「いらないもの?」
風呂から上がってきた三橋は、阿部が手にしていたアルバムを手にして、そして眉をコレでもかと八の字に歪めた。
「い いらない の……」
茶に近い赤の革表紙でできたソレは、1年の夏の終りに花井の母親が作ってくれたものだ。 どのページにも気弱そうな眉の三橋と、眉間に皺のある阿部がいる。 楽しそうにしていても、どこか力の入った自分達に、自嘲気味に笑った。
「いらねぇわけないじゃん」
「ホントに?」
「当たり前だろ」
三橋のまだ湿りの残る髪を手のひらでわしゃわしゃ擦ると、安心したようにアルバムを抱き締めた。
「オレも ま だ 持ってる!」
「そりゃ、みんなに作ってくれたヤツだもん」
「そ、み 皆、お揃いだよね」
それが嬉しいと三橋は綻んだ。 怖がらせて、泣かせて、分かったつもりでいて、分かられたつもりでいた、1年の夏の始まり。 触れるのにも、触れられるのにも、いつも緊張していた。
こんな距離が近くなるなんて、想像もしていないころ――それでも、いつも傍にいた。
「三橋」
「うひ?」
「傍にいてくれて、ありがとう」
阿部の言っている意味が分からずに、キョトンと目を丸くする三橋を抱き締める。
あの夏、こうやって肩を寄せることすら怖かった。
それを思い出し、また瞼の中が熱くなった。
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S-textの存在忘れるところだった。 少しだけ要望が多かった、大学生アベミハをチョコリ。 と、いっても、発掘されたものですが(笑) コレは、阿部とミハが同棲する初日の夜のお話。 引越しを済ませて埃落とした直後、ミハが上がってくるのを待っている間に……みたいな。 説明不足なので、書きなおしたいのですが、今、あんまり時間がないので、コチラにUPしてみました。 希望があれば、リベンジします。
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