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2012年06月13日(水) アイデアルなペニスあるいはセックス

 「……やっぱり、そこ?いつもは隠れてるとこ。こうやって見られてるだけで気持ちいい? それとも、見られてどうなっちゃってるか言われてるのが、気持ちいい?」
 湯船の向かい側から、彼がじっと見続ている。あたしの指先と、それが触っているもの。

 「……見てて、わかるの?」
 最初は、いつも触られているのはどんな風だったか思い出しながらしていた。
 でも、そんなに大きくないでっぱりの中でも、ただびりっとするだけのところと気持ちいいところがある。
 訊かれた通り、クリトリスの先端から、普段なら皮の下に潜り込んでる、おちんちんみたいな雁首があるところ。そこが一番、気持ちいい。多分、さっきもそこをこすりつけるように、自分で腰を動かしてた。

 「舐めてたときよりおっきくなってる。入り口の下に小さい舌みたいなのがあるんだけど、そこにしずくがたまってて。でね、もうなかみが開いちゃって、さわってるとこ真っ赤で、入り口が全部見えちゃって……。自分で気持ちいいとこを慶子の指がいじってるでしょ。そうすると、入り口だけ動いて、そこからまた透明なのがとろって流れてきて……。ほら、おしりの方にこぼれちゃいそうになってる。」
 猥褻な声で状況説明されて、自分が耳まで真っ赤になってるのが分かる。それがただの言葉嬲りじゃないことを確かめたくて、指を止めないまま覗き込んだ。

 本当に、小陰唇は全体に赤みがさしてふくらんでぱっくり開いていた。クリトリスも充血して尖って剥き出しで、入り口の下側に、何かを受け止めるためみたいな小さな舌が出てる。
 そして、そこにお湯とは違う、もう小さな真珠の粒くらいはあるしずくが張りつめていた。指を当てると、それはぷちゅっと音を立てて絡み付く。濡れていたのは、しずくの部分だけじゃなかった。もう、小陰唇のふちまで濡れていて、粘液は気泡を取り込んで、白っぽく光ってる。
 「……あ。すご、びしょびしょ。」
とろとろの液体をまつわりつかせた指を、またクリトリスにあてがう。こねまわすと、くち、くち、くち、と、さっきよりも大きな音が出て、入り口のせつない「ひくん」がもっと大きくなる。
 「うん、クリトリスにいっぱい塗り付けて……。ぐちゅぐちゅにして触ると気持ちいいよね。ちんちんもそうだもん。……ね、またおっきくなっちゃった。やらしくなってるとこ、指で開かなくても全部丸見え。」
 そんなことを言われながらずっと見られながら、もうちょっと激しくしたらいっちゃいそうになりながら、はじめて自慰をしている。「自分で触ってみて」と促されて。
 感覚にのめりこむと、目を閉じてしまう。そのほうがもっと集中できそうで。
 それでも、彼の視線が真っ直ぐな熱になって絡み付いてくる。
 うん、見られてるだけで、たぶん、気持ちいい。でも、よくわかってる自分の状態を彼が視線だけじゃなく言葉でなぞっていくのが、もっと気持ちいい。

 彼の顔が、こちらに近付く。浴槽の縁にあげた太ももにそっと手が掛けられる。それだけで、またぞくっとしてしまう。
 「ね、おちんちん、入れて。ねぇ、いりぐち、せつない……。おちんちんはいってないとせつないの。ね……。」
 喘ぎながらひくひくさせながら、うわごとみたいにねだった。
 ああ、そうか、自分でもこういうこと言うと、また気持ちよくなっちゃうのか。
 彼は動かない。目を開いてあちらの表情をうかがうと、あたしの足の間を真っ直ぐ見ていた彼が、ゆっくり目線だけ合わせてきた。そして、やわらかく目を細めて、また視線をもとに戻した。
 「入れながらいじってるときみたいに、ずっと垂らしっぱなし……。」
 そのときだって今だって、あたしだけのせいじゃないもの。でも言葉が出ない。
 背中に当たってるタイルの壁が冷たい。でも、それはどうでもいい。
 自分のきゅうっと動くところが、いつも彼の指や舌でぎりぎりまで持って行かれているときよりもせつない。
 もっとすごい気持ちいいを知ってる。もっと、もっと。

 コンドームつけてないけど、もういっそ自分から入れちゃおうか。そんなことも思ったけど、指先以外動かせない。そも絶対に、彼がさせない。
 見られてたい、このどうしようもなくせつなくなってる自分ぜんぶ。でも、やっぱり欲しい。
 「いつもそんなに、気持ちよくてしょうがない顔してたっけ……?」
 喘いでるところに、彼の声が被ってくる。だって、ここのところずっと、いちばん気持ちいいときはうしろからしてるから。それは。
 「すごく、ちんちん入れたい…。おまんこが動くの見てると、ちんちん締められてるみたいに頭の中が痺れてて、もうこのまんま、慶子がクリトリスいじってるまま、中からちんちんでこすって、いかせたくてしょうがないの。指だけでも入れたくてしょうがなくて、気持ちいいとこだけ舐めて、いかせちゃいたい……。今入れたら、ふたりともすぐいっちゃいそ……。」
 彼の言葉だけで、おちんちんが入ってきたときの感触が生々しく戻ってくる。そして、指で触れられる感触もそれを挿れられる感触も、舐め上げられる快感も、全部、いっぺんに。
 空いているあたしの左手を彼の手がとった。
 「入れながら触ってるほうが気持ちいいでしょ……。 自分で、いれて?」
 「……おちんちんが、いい。ジェドのがいいの、……指でいいから、ねぇ。」
 「そんな声出したら、最後まで見ないで入れたくなっちゃうでしょ……。ね、見せてて。」

 取られたあたしの手は、右手がせわしなくクリトリスをこすってるすぐ下にあてがわれた。
 観念してというより、もうそうするしかなくて、立てた中指をおまんこの中心にあてる。
 ちゅぷん、と、あっけなくそれは沈んでいって、途端に自分の中の動きにに包まれる。
 「おまんこの中、あったかくてとろとろでしょ……?」
 「こうなってると、入れてるときジェドも、気持ちいい……?」
 「うん。すごく気持ちいい……。入れてる指、気持ちよくない? 入ってくとぴくんって締まって、ちんちんが全部入る前にいっちゃいそうになるけど我慢して、そっと、できるだけそっと動いてるとひくひくがもっと早くなって、中の気持ちいいとここすったら止まらなくなって、最後、ぎゅんって締まりながら、可愛い声で、いっちゃう、いく、って言うまで我慢してるの、気持ちいい……。もう、頭の中もちんちんも爆発しちゃいそうになって、慶子がいっちゃってびくっ、ってしてるときに出すのが、一番好き……。」
 ジェドの言葉が、触ってるのと同じかそれ以上に頭の中をかきまわす。
 挿れた自分の指に、そのひくひくが伝わる。言われた通り、飲み込んでる部分だけじゃなくて自分の指も気持ちいいのが、悔しい。
 自分で締め付けてる指の感触が、今言われた彼のちんちんの感じ方に重なる。頭の芯が、クリトリスやおちんちんみたいに勃起してしまったように、ずきずきしてる。

 「あ、やだ、もぉ、ひくひくがとまんなくない……。とめらんない。ねぇ、おねがい、ねぇ……。」
 彼の顔は最初よりずっと近付いてきていて、もう息がかかりそうなくらいのところでそこを見ている。つながってる時と同じくらい、とろんとしたうるんだ目で。たぶん、今の自分とおんなじ目。
 「もう、おりてこられないとこまでいっちゃった? いっちゃわなかったら、おかしくなっちゃうとこまで、のぼりつめちゃった? ……見せてて。慶子のおまんこが一番気持ちよくなるとこ、ぜんぶ……。」
 ねち、ぷちゅ、くちゅ、ぷちゅ。濡れた音が立つのと指の動きがどんどん早まるのがもう止められなくて、クリトリスは限界まで硬いのに塗り付けたものでとろとろで、おまんこの中はずっときつく指を締め付けっぱなしなのに、やわらかくてぐずぐずに濡れてる。
 「……もぉ、おりらんない。欲しいの。……ねぇ、びくって、中が、あ……、びくびくって……。」
 また目が開けていられなくなる。喘いでいてもいなくても、うわごとみたいになにかいやらしいことを口にしてもいなくても、何が欲しいのかも分からないけど口がぱくぱくして、頭の中がくらくらして膨れていて、しばらく、声も出なくなる。
「や、あ、やだ、いっちゃう、いっちゃう、……いっちゃう、いくうぅ!」
 やっと出た声は、さいごのさいごで。
 バックでしてるときと同じくらい張りつめていたのに、すごく物足りなかったような、でも、いつも以上に頭の中がぐちゃぐちゃになったような、不思議なオーガズムが、来た。

 大きなため息をついて、まだ余韻でくらくらしながら目を開けた。
 「からだ、冷えちゃったでしょ。ごめんねー。」
 あたしを見上げるジェドは、いつもの目に戻ったように見える。
 「……風邪ひいたら、うつしてやる。すごく意地悪かったよねー、いまのは。」
 あたしはずり落ちるみたいに浴槽に潜って、それから身体の向きを変えた。
 身体の芯がびくんとする間隔が、少しずつ間遠くなっていく。
 「いままでいちばんえっちだったのに。……思い出して何度もオナニーしとこー。」
 背中越しに恨み言を言うあたしを受け止めながら、彼がくすくす笑った。
 「気持ち、よかった?」
 「……うん。たぶん。」
 たぶんどころじゃなかったのに、今更あいまいにごまかしてしまった。
 「……たぶん、じゃあ、あんなふうにいっちゃわないでしょ。お互い、お風呂でしかオナニーできなくなったら、どうしようか。」
 「うちのお風呂だったら風邪ひいちゃうから、無理。」
 「ひとりだけでも、あんなに長く、しちゃう?」
 あたしを膝の上に乗せて、蛇口によいしょと手を伸ばして熱いお湯を出しながら、彼が頬ずりしてきた。
 背中には、ずっと勃起したままの彼のおちんちんが当たってる。
 それを気にしたのが伝わったように、後ろから、彼の唇があたしの耳たぶを挟んだ。重ねて、訊かれた。
 「……長い間したから、疲れちゃった?」
 「わかんない……。」
 なんで、耳たぶや首筋にキスされるのがこんなにぞくぞくするんだろうか。
 彼とセックスする前、キスをした次は、それだった。キスで少し分かって、首筋に唇を這わされた時ものすごく強く来た感覚とその先を、あたしはもう知っている。あれは、感じてた。

 うしろに手を伸ばして、彼のおちんちんをきゅっと握った。ジェドが小さく柔らかいため息をついた。
 「こんなになってるのに。入れないんだもん」
 「でも、さっき、不完全燃焼じゃなかったでしょ? あれはあれっていうか。」
 たしかに、それは。
 あたしの最後の方の「入れて」は言ってるだけのところがあった。そう言ってせつないと訴えてるのが気持ちよかった。そこは、彼はたぶん分かってるだろう。
 かれのおちんちんをつかんでいる逆側から、今度は彼が前に手をのばしてきた。まだ開いたままなのか、また開いちゃったのか。探られるたび粘液はお湯に溶けていくけど、また、次々あふれてる気がする。
 「……入れない方がもっと気持ち良さそうなところが見られるとか、興奮するとか、これ、本当にあった方がいいんだろうかって思うよね。」
 彼がいきなりしらふの声を上げて、あたしも急に正気に戻されて笑ってしまった。
 「あれがゴールってことになってるからじゃないかなぁ。実際、気持ちいいんだし。」
 「シックスナインって、割とどっちかがか、どっちも中途半端にしか気持ちよくなかったりするじゃない? これくらい身長の差があると特に、どっちか無理な姿勢になるし。」
 「あー、だから最近しないんだ。うん、それはやってみて思ってた。」
 「うん、それで、もしかすると入れるのもそういうところがあるかなと思ったりしたのね。気持ちよくないってことはないと思うんだけど……。どう?」
 「あ、それは、あれはあれ。これはこれ、だった。でも、ジェドが言葉攻めできたり自分でいろいろ言ってられるところなら、さっきみたいなのもありかなぁ。」
 「あれはあれ、これはこれって。並列しちゃうんだ。慶子、容赦がないよね…。」
 今度は、彼が後ろでけたけた笑った。


高村 なお

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