琥珀色の時
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2007年06月18日(月) 「パズル・パレス」ダン・ブラウン


あの「ダ・ヴィンチ・コード」の作者ダン・ブラウンのデビュー作とのことで、手に取りました。
さすが、最初からぐいぐいと引っ張る力がすごいです。
NSA(国家安全保障局)の暗号解読課主任のスーザンと、その恋人のデイヴィッドの冒険(特にデイヴィッドの方)が交互に描かれて、ちょうどいい所で切り替わるんだな。

すべての暗号を破るスパコンと究極の暗号デジタル・フォースを巡る話は、特にコンピューターに詳しくなくても、(アルゴリズムってな〜に?な人も)大丈夫なサスペンス。

何となく読んでいくと、テロ行為や、違法行為を事前に防ぐことができるのだから少しくらいの検閲はいいかなと思いがち。
で、途中に敵とみられる同僚のヘイル(実は…というのはネタバレ)の『すべてを国家に握られて、いつか国民の利益を考えない政府ができたらどうする〜』の問いかけにハットしました。

『権力者にすべてを握られたら、どうやって反乱を計画する〜』そうですよね。
自由社会といっても、いつ独裁国家になるかは誰にも分からない。
自由でいることのリスクを考えさせられました。

しかし、キーとのなる指輪を探し求めて素人の大学教授(現代言語学)のデイヴィッドの活躍はなかなか楽しめます。

スペイン語、ドイツ語、フランス語に堪能でタフな教授、是非ヴィゴにやってもらいような役回りでした(笑)

最後まで気をもむ暗号解読、さてどうなりますかお楽しみお楽しみ。


2007年01月12日(金) デイヴィッド・マレル「テロリストの誓約」


図書館で見つけた暇つぶし本のつもりが、なかなか面白い。
はじめて読む著者だけれどランボーものを書いているベテランライターでした。
書き出しは中世の異端審問、邪教として弾圧された一派が生き延びて現代でも審問官グループと対立というなかなかな設定。

ヒロインはエレベーターで偶然会った灰色の瞳の青年に一目惚れ。
偶然な出会いが重なり、恋人の関係を匂わすが男はプラトニックラブしかできないと謎な告白。
そうこうする内に男が失踪。
こんな小さな出来事から、段々仕掛けが大きくなるのがとても面白い。

一方、題名にあるテロリストは環境破壊、たとえばタンカーの事故などの責任者を次々殺してしまうというテロで、気分的には正義の味方っぽいとこが救われます。

謎解きとアクション、刑事との恋、スペインの秘境での冒険と見所沢山。

異端審問と異端派との確執に挟まれたヒロインはどう出るか〜

ラストも小気味よくどちらに味方するかを読者に委ねたようなとこが好きですね。


2005年09月21日(水) 島田荘司「ネジ式ザゼツキー」


今度の御手洗潔はスウェーデンのウプサラ大学で脳の研究中。
勿論石岡君は出てこなくて、今回のワトソン役はハインリッヒでした。
彼が連れてきた記憶が一日しか持たない男。
その男の作った童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』を解析して、男の戻りたい場所を見つけだす御手洗の推理がまことに見事でした。

本の構成も横書き、縦書きと工夫されていて、御手洗と記憶のない男との会話は横書き、物語中の童話は縦書きでした。

最初は何度も繰り返される対話(なんと言っても次の日に会ったときには記憶のない男は、御手洗に初めましての会話からはじめるので)にこちらもイライラしそうになりながら読み始めました。

小説の中の童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』がでてきて、あれれれ〜
タンジール蜜柑とかママレード色の空とかいう言葉に、ええっーなんか聞いたことがある??
そのはず大好きなビートルズの「Lucyin the sky with diamonds」じゃないですか!
タンジール→タンジェリンツリー、アンド、ママーレードスカイ♪

それと「指輪物語」のロスロリアン(あのガラドリエル様のエルフの森ね)をイメージしたような樹の上の家が出てくるんです。こちらは帰還といえば浮かぶ「王の帰還」から容易に想像できました。

この『タンジール蜜柑共和国への帰還』の分析がまたよくできていて、記憶のない男は考古学に興味があるってとこがみそ。
アフリカで発見された原人の骨格が「ルーシー」
で、その名は発掘チームが当時、ビートルズの曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」を聴いていたため、名付けられたという。
その故事にのっとり(笑)記憶のない男はビートルズのこの曲を知らないと言うんだけれど、無意識に聞いているはずと御手洗に看破されてます(笑)

相変わらずの強引なこじつけもあるけれど、なかなか知的な蘊蓄(脳に関することを主に)もあり、面白かった。
ネジ式というのがどういう事なのかは本を読んでのお楽しみ。

ま、ビートルズに縁がなかったら、こんなに面白く読まなかったかもね。
ちょうどこんなニュースもあったんでなおのこと
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音楽誌『Q Magazine』が行なった最優秀ブリティッシュ・ソングを決める投票で、ビートルズの「A Day In The Life」が1位に選ばれた。名作『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』収録のこの曲を、同誌は「ブリティッシュであることは何かを示した究極の楽曲」と評している。
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つまりは『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』がいかに大傑作かということかな。


2005年08月12日(金) トマス・ハリス「ハンニバル」


原作はもっと怖かった!「ハンニバル」でした。

「羊たちの沈黙」に続いてのFBI捜査員クラリスが颯爽と登場…なんだけれど、最初の麻薬がらみの事件の顛末が彼女にとても不利に動いて、なんか仕事に対する情熱に水を差されてました。
その麻薬女ボスを銃殺した件に関する調査会でもクラリスの態度はホント立派なんだけれど、それがかえってダメ男どもを刺激するのか、軽く閉門蟄居の様子。

しかしいろんな経由から、レクター博士の再調査を専任して、ますます快調にしっかり仕事してます。
レクター博士の嗜好を調査、ワインや食品や車などレクター博士が米国に戻ったらきっと入手するものへのチェック体制、細かい分析などなど読みでのある捜査方法が描かれていきます。

もう一方は、大富豪のメイスン。若い頃の無軌道生活にレクター博士との接点があり、錯乱のうちに自分自身を自傷(後ではもっとすごいレクター博士の語る真実あり)レクター博士に偏執狂的な復讐を狙ってます。
この人のエピソードでオソロシイのは、子供をいじめて泣かせてその涙で作るカクテル、常軌を逸してます。

この復讐の道具にかり出されたのが「豚」
メイスンの家業も食肉業で、相当あくどいこともやって大きくなった事業らしく、このあたりの深い書き込みで、豚肉食べたくなくなりそう→美味しいんだけどさ。
人食いとなるべく調教(?)されるある種の豚ってのが、とても怖いんだけれど、映画でもすごかったな。

レクター博士の逃亡先フィレンツェでの重厚な語り口も、歴史に残る先祖を持つ刑事との一件もいっさい手抜きのない筆力でぐいぐいと読ませます。
もう細かすぎるくらいの登場人物を映画はよくまとめたなぁと思いますが、本はこの位でなきゃつまらない。

さて、米国に戻っていよいよメイスン、クラリス、レクターの三つどもえ戦。
映画にはなかった(と思う)メイスンの妹(レズビアンで、遺産相続のためにはメイスンの直系が欲しい)と映画でさすがに目を覆ってしまったクラリスの天敵クレンドラーの生きながらの脳みそソテーシーンなど、衝撃なクライマックスは濃い濃い。

映画とは違うラストに驚きもありましたが、レクター博士の過去であるナチスの残党に妹を食われてしまった悲劇にも言及があり、なぜクラリスに執着するのかなど謎解き部分もたくさんありましたね。

しかし本当に濃い作品で、お腹いっぱい、豚はちょい遠慮するよ(笑)な読み物でした。


2005年06月27日(月) トマス・ハリス「レッドドラゴン」

ついに読んでしまったよ、レクター博士。
映画版「羊たちの沈黙」「ハンニバル」を見たせい、特に最近見たのは「ハンニバル」
こわいよぅリドリー監督、あそこまで描くとは!!
飛行機に乗ったときは隣のおじさんに気をつけようと心から思った(笑)

最後の一作、映画版「レッドドラゴン」を見る前に原作を読まずにいられるかと、アタック。
これってあまりレクター博士の出番はないけれど、不気味さはこちらが先入観を持っているので一段とupです。

元FBIアカデミー教官のグレアムの観察力のすごさはミステリーとして当たり前だけれど、一歩一歩解答を見つけるのは、読んでいて気持ちがいい。
さらに彼の人柄、とくに奥さんとの会話がとてもセクシーで(でもほのぼのしている)こんな気の利いた電話してみたいぞ(笑)

犯人はもう判っているのだが、その犯人の育ち方がとても異様で、家族のありようがとても怖い。
こんな育ち方をしたら、みんな犯罪人てことはないけれど、社会悪が罪人を作るのは間違いなさそう。

ラストは一転するようになっているけれど、それが残りページの厚さで判ってしまったのは苦笑。
犯人とらえるのも命がけって、警察もFBIも大変だ。

今度は「ハンニバル」原作に挑戦。
映画「レッドドラゴン」も楽しみだね。
その前に「赤き竜」の絵を探そう…


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