2018年07月19日(木) |
鏡リュウジ『占いはなぜ当たるのですか?』★★★☆☆ |
鏡リュウジ『占いはなぜ当たるのですか』
占い師と懐疑主義者の両輪で占星術研究家の道を歩む筆者。 この本のめざすところは、現代占星術の位置を誠実に紹介すること。 星座占いの本でもなく、占星術の教科書でもなく、科学的な批判の本でもなく、占星術の布教の本でもない、と。
「占星術家の書く本のほとんどには、こういう都合の悪い話がでてこない。占星術の科学的研究に対して、フェアでないのは、何も科学者側ばかりではないのである。」(p102)
ドラマティックな敗北の例。アメリカの占星学団体が行った調査。
「自殺と星の動きには、何かの関連性があるはずで、それは、ホロスコープの中に洗われるに違いないーー。調査は、この仮説を検証するためにおこなわれた。」(p102)
「調査チームは一九六九年から七三年の間にニューヨーク市の自殺者二二五〇人のデータをまず収集。そのうちで出生生年月日、時刻までのデータが得られたのは、三一一人であった。さらに、これらの標本と同じ年に生まれた、自殺をしていない人々のデータが対照群として集められる。」(p102-103)
「さて、これだけの徹底的な分析を加えた結果、どんな『自殺傾向』を示すデータが現れたであろうか。ホロスコープにどんな特徴があれば、その人物は自殺を警戒しなければならないのだろうか。 結果は……何もない、皆無、であった。」(p104)
こういう、科学的な視点を忘れない姿勢は、信頼感をあげます。
三章 学生時代の疑問から、ユング心理学と結び付け、結果、心理占星学の専門家になった。
四章 「聞く耳をもって、オープンな態度で星占いを読んで、そしてそれに接していったときに、それが思わぬ洞察を与えてくれることもあるのだ。」(p246)
洞察。
あくまで、その人自身が思い至るかどうかが大事。 答えは、常に、その人の中にある。
「星とあなたとのつながりの感覚の回復、それこそが占星術の大きな意義だろう。」(p246)
自分を生きる。 自分を大事にする。 自分で生きた、と思える。
そんな人生にするために、役立つ一つのツールとして、占いはあるのかなあ、と思います。 科学的にどうなの?という疑問に応えてくれる一冊でした。
鏡リュウジ『占いはなぜ当たるのですか』
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