恋文
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扉の木目は 奇妙な顔だったり 不思議な動物だったりする
ときどき こわい
だんだん みんな隠れてしまう
向こうが見えない 街は
小さな箱庭のようになる
雨に煙った 街はいい
山も曇る
みんな 静かな 佇まい
夢ではない 夢を見ているあいだに
夢とのはざまが ゆっくりとけて
うつつを見ている
風が吹き荒れている
旗のないポールに ロープだけが カンカンと 音を立てる
記憶を 呼び起こすように
でも 今日の風のなかをゆく
午後の病院 光がよどんで 白い 目覚めるまで
山の頂上から 駆け下りた そのまま空中を滑ってゆく 朽ちかけた古城の塔が見えている
砂の上に湧き水が現れて みるみる川になった 真っ直ぐ底まで見渡せる透明な水 すっともぐって行った
海は果てしなく遠浅だった 漁師たちが帰ってくる影が黒い 少し沖まで歩いてみた
ホバリングする飛行機から降りてきた ロボットのような魔術師が わたしのマフラーに赤いリボンをつけたら 編み込みのショールになった それをもう一度触ったら 次にはニットのワンピースになった
貰って帰ったら雑貨店に女友達がいて いくつか化粧品を買ってくれた あとで教えてあげるね、って
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