恋文
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髪を 束ねる
うなじに 指が 湿る
風もない
夜の道を 歩くだろう
湿った風に 滲む光
どこにでも あったような
金平糖の とげとげ
舌でなぞる
窓を打つ 雨の音を 聞きながら
せみの声
杉の木は ゆっくり揺れる
変わってゆく 空の色
とんぼが やってくる
風といっしょに 時間が 去ってゆく
声も聞こえなくなるような 雨のなか
街は白く かすんで にじむ 夜の光
カーテンが隔て 窓が隔てる 向こう側の
ここにある ここではない 世界の
息吹を 膨らませている
今日も
遠くの国道から 響いてくる
音に 押されるようにして
浮かぶような 沈むような
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