恋文
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乱暴な気持ちは 澱のように とごるので
足を取られたように 身動きが できないのだった
ぎりぎりと 爪を立て かきむしり
なにもない わたしに なってしまえばいいのに
*とごる 「滞る」の、愛知、三重あたりの方言のようです。 この言葉が自然にでてくるので、いくら離れていても、わたしの生まれ育った場所は、わたしの中にあるんだな、と思いました。
日々の移ろいで 花は咲いていていたんだね
花たちは その時の わたしの気持ちのままに 見えていた
思い出と その花が つながる そのときの
あなたたちは その時のままなんだね
かつて秋を知ったように 金木犀の香りはないけれど
遠くの丘の森が 金色に光る 夕暮れ
わたしのからだをも つつんでいる空気は
あの香りを運んできた おなじ肌触りがする
しばらくの 喧騒が聞こえたあと 少し間をおいてから 部屋をでる
追いつかないように 混じらないように
見えないように 見つからないように
邪魔にならないように
視線の先には わたしだけではない 捉えたかった わたしの影
とうに陽の落ちた 外の木立が わたし自身の 薄い身体のシルエットに 重なって映る
闇を透かして 見ていたい
しばらく暮らしていたのに 知らない町
川の向こう岸に 陽にあたっていた 聖堂の塔が 翳ってゆく
ひとり ひとり この町から 去ってしまう 毎日の 日没のように
わたしも 暗闇に消えてしまう前に 帰ろう
まぁだ わたし ぼんやりと してる わたし
いらない わたし
いらないのなら すててしまおうね
やだな すてないでね
すてようね いらないもん
いやよ すてないで
どうしよう すてないでね
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