恋文
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いつからか風がでて 雨の匂いがする
窓の向こうに 枝は揺れ 微かに聞こえてくる
落ちてくる いくすじもの 鈍いきらめき
わたしは そこから隔たって ひとりで座っている
ふとした瞬間に もうひとりのわたしに なっている
つまづいたように たじろいでしまう けれど
わたしは そのわたしが好きなので そのまま なりかわってしまいたい
重い身体は しっとり沈む
自分の匂いがする 胸元を開く
捲れてしまった夜着の 脚が冷たい
朝になる前に もうすこしまどろむ
窓に映ったり 鏡に映ったり わたしは どこにいる
遠ざかって そこにあるなら ずっと そこにいようか
髪を胸にたらして はにかんだようにいる そのまま
汗ばんだ肌に 夜の空気が冷たい 夜着を剥いで 丸まっていると また 肌の合わさったところから しっとりとする
うなじにかかる髪を 手梳いてみる 背中に挟まってしまうので 片寄せてみたりする
寒くなっては 夜着を掛ける
胸から お腹から 脚へ 掌を移してみる まだ汗ばんでいる
いつのまにか 薄暗がりになっている
罌粟は散って 麦畑に花びらを まいていた
乾いた叢で 待宵草は 花を閉じていた
雨をはらんで 空は 暗くなってゆく
風が渡って 鳥たちの声を かき消した
いらないわたしは どこに捨てましょうか
ぷつぷつと切り刻んで 台所の野菜くずと一緒に 捨ててしまおうか
森の中の落ち葉の中に 埋めてしまおうか
早い川に乗せて どこかに流してしまおうか
捨てもできずに どうしよう
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