恋文
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風が渡って 木や花の香りがする
その生々しい匂いに 身を委ねてしまいたい
眠るように わたしの身体は流れてゆくだろう
目を閉じて 思い描く 夢にしか見ることのない そのすがた
だけど 夢にみることができるなら と
現実にあらがうように 今も あがいている
きっと それは実を結ばないだろうに
風が運んでくるものは
春を終わろうとしている 木や草や花の香り
誰かがどこかでたてる 遠い物音
わたしが繋がっている この世界の
吐息のように 鼓動のように
鏡をのぞいてみても わたしは いなかった
どこかの世界に紛れこんで どこかにいる わたし
夜が来てしまって こんなに暗くなろうとしているのに わたしは どこにいるのかしら
ずっと遠いところで 泣いているかもしれない
もう夕暮れは夜に変ってゆき 雑踏のなかで その人に出会った わたしたちは ずっとすれ違っていたのだ
もう暗い街の中に 灯りを見つけながら 並んで歩いた
どこでもない街は 夢の中だったから いつか一緒にいたのかもしれない いつか一緒にいるかもしれない
朝になるまでの ひそかな出会いだった
曇り空の森の中は 薄っすらと暗くて 風は冷たかった
それでも鳥たちは やかましいほどに囀っていた
風も緑色に染まるように ただ 一面に若葉がもえていた
わたしは ただ立っていた なんにもない わたしだった
裸になってしまったような 頼りない わたしだった
その子は とてもかわいいので わたしは その子のようになりたかった
でも その子はわたし自身だったので もう その子のようになれなかったの
かなしいわたしは半分の子だったので 半分を抱きしめていた
半分はかなしいので いつも もう半分のわたしを探していた
いつも その子はわたしだったのに かなしいわたしはわからなかったの
わたしが その子だったらよかったのに わたしは かわいい子でありたかった
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