恋文
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わたしは 旅が苦手なのだ
遠くへ ゆくことよりも 近くにいたい
知らないところに ゆくよりも ずっととどまっていたい
なのに どうして わたしは ここにいるのかしら
もう わたしの居場所が わからなくなってしまうよ
いつか季節が変わってしまう 静かに移ってきたはずなのに それと感じるのは 突然だった
季節ほどに 時間ほどに 人は変わってゆけないのだろう
目覚めたくなかった
夢を 見ていた
わたしが ただの わたしだった
泣きたい気持ちだったのに
そのままでいたかった
そのとき わたしであったように いまも わたしでいよう
もう 戻れないその場所は そのときと同じように 一日は始まり 終り 季節は移るだろう
その時に見ていた花も 頬をかすめた風も 時には身体を湿らせた雨も そのまま残っているだろう
そのときをとどめたまま いまのわたしは やっぱり わたしでいる
影絵のように 木は まっすぐに立って 枝は縦横に広がっていた
空は 仄かに朱く 飛行機雲が 一文字に 延びていった
つかえていたものが すっきりとする
なのに それが なつかしかったりする
腕をぱたり と落すと 何もない
しばらく髪を 撫ぜている 暗闇
何もないので ただ 眼を閉じていた
暗闇すら なかった
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