恋文
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そこには 忽然と現れた テントの群れや 遊園地の遊具
収穫を祝う お祭りの灯りが 薄暗がりの空の下に瞬く
わたしは ただ 静かに通り過ぎる
向こうに見える丘は まだ白く雪に蔽われていた
わたしの足元にも まだ、氷になった雪が残っている
風が頬に痛い すれ違う人たちと コートに身を縮めながらも 挨拶をかわすと 互いに微笑みあう
ここにある わたしの日々
凍ってしまって まだ 緑のままの葉も すっかり落ちてしまった
ただただ 空は 青かった
ただ この瞬間に わたしはいなくなってしまうんだ 簡単なこと
なんだ そうだったら 消えたいなんて 考えることないじゃない
いつでも わたしなんて消えてしまえるよ
いつしか雨は雪にかわっていた この街ではじめての 冬を迎えようとしている
まだ緑色の草地も まだ赤や黄色に色づいたままの木立も 薄墨のような夜のはじまりにもまして 白さを増してゆく雪の中に 影のように沈んでゆく
思いに沈む どこまでいっても あの時の雪は もうないのに
暗い停留所でトラムを待つ間に 髪を解いてみる 冷たい風に放して 縺れた一筋一筋を 指で梳る
どこまでも遠くなってしまった 記憶を 手繰る仕草のように
街路は雨に 窓は曇り 姿はみんな ぼやけて にじむ まだ 夜が続いている
それは 今日を包んでいる また 次ぎの夜までの 始まりの景色
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