恋文
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まだ明るい夕刻の通りには 誰の姿もない
照り返しが窓に光り 壁には影が差している
どこからか 誰かの声が聞こえる
薄く開いた窓の隙間から もう暮れてゆく空なのに まだ眩しい
猫は、きっと 草を踏んで歩いているんだろう
猫になって この町を歩いてみようかしら
心を雨に濡らしてみよう 渇いているなら
きっと雨に紛れてしまうだろう 泣いているなら
かわいそうなわたしは 雨に流してしまおう
しばらく雨の中にいよう まだ、わたしが戻ってこないなら
今夜、風が吹いている 森の木々を揺らし 街の通りを横切り 川を渡り
わたしの身体を突き抜けて
寝返りのたびに 重く湿っているわたし
手をやる首筋に 纏いつく髪に
胸をすべり お腹の上にのせた手に
もう 朝が近い
ずっと忘れている 静かに ひそかに 受ける愛撫
自分の指を そっと 肌にすべらせてみる
穏やかな昼下がりに わたしは世界から隔たっている
風はいつものように過ぎて 葉擦れの音も 揺れる影も あたりまえのように感じるのに
人々はいつものように会話をしていて 誰もかわらないのに
声が震えてしまう あぁ、細い声でわたしはうなづく こうして生きていくために わたしはありったけの勇気がいるんだ こんな些細な瞬間に
誰もが気にも留めてないだろう ただの日常のこと
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