恋文
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朝は 湿った土のような匂いがした 雨の予感のような
階段を降りて アンテナを伸ばして ダイヤルする
あなたの声を聞いて また 一日の約束が終わった
少しだけ いつもより女っぽく装ってみる
なんだか 自分を見失いそうだから
どっちが自分なんだろう
ひょっとしたら電話があるかもしれないと 歩いてみた いつもの道を 携帯を握り締めて
駅で電車が来るまで 待っていた
薄明かりの中で 雪に覆われていた 道や 田畑や 森や
親しいような気持ちで見ている
ながい長い 車のテールランプがつながる 雪の中を連なる
それも、懐かしいような気持ちで見ている
わたしがいたかもしれない そこに きっと
あなたもいたかもしれない 一緒に
ずいぶん前に額にキスをしてもらってから もう、ずっと触れられていない
思い出したくないかもしれない
思い出したら あまりにも確かな感触で よみがえるだろう
そんなの やだ
あなたの匂い あなたの感触 あなたの、あなたであること
わたしの匂い わたしの感触 わたしが、わたしであること
あなたと、わたしが 触れあうこと
あなたと、わたしが あなたでもなく わたしでもなく ただ ひとつのわたしたちであるとき
風が髪を通り過ぎて わたしは 今のわたしを あなたに見せられないのが悲しい
あのときよりもずっと わたしは女らしくなったよ きっと
もう一度、会いたいよ
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