【9】海底の時計

 烏の鳴声を聞きました。
「時が来た」
 海底に沈んでいる時計が再び動き始めたのです。

 私達は同じことの繰り返しから解放されて、再び意味のある時を重ねるのです。
 存在意義、使命、それらを支える特徴は、この時を迎えるためのちょっとした、そして重大なカラクリだったのでしょう。

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 積木へ。

 積木はまだ怒っているのでしょうか?人は誰しも過ちをおかします。許しあっていきたいものです。

 貴女はとてもかたくなですが、私達に順番などと言うものが味方したことがあったでしょうか?仲直りする前に結婚していたのが腑に落ちないのかもしれませんが、肝心な仲直りはしたのです。それは生きている特権でしょう?死人とはそうは行きません。

 彼は私に謝っていました。そして、貴女を傷つけた無知を克服しました。(私はお役に立てたでしょうか?)それでも許せない理由はなんでしょう?
 貴女の怒りの対象は彼ではないことに、バグの食べ残し(悪夢)で気付いているはずです。小鳩は烏に似て気まぐれなので、私から伝言。気付くまで悪夢は続くようですよ。

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 小鳥へ。

 あまり人の真似をしなくていいです。それから悪戯するのも程々に?

 積木とはまるで性質が正反対のように感じられます。数年前の岐路では積木に気合負けしたようですが、あの時、彼女にまるっきり欠けていた部分を貴女は持っていると思います。
 彼女は貴女の柔軟性を見習う必要性があります。逆にしかり。貴女は彼女の誠実さを見習いましょう。

 悪戯や気まぐれは度を越さないように。私達は不安定なのですから。そして私達には貴女が必要です。自分も大切にして下さい。

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 意味のない子達(O先生の呼び名を借ります)を知る子達へ。

 まだ意味のない夜が怖いですか?私も怖いです。
 けれど他の窓を覗いて見ましょう。暖かい灯がともり、談笑の耐えない家族があります。恋人達がいます。そこには忘れられ、虐げられた存在の影などありません。
 もし、そのような影があれば、私達は彼等を迎え入れることができるのです。邪魔する人はもういません。

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 意味のない子達へ。

 私はMちゃんがしてくれたように、ずっとずっと語りかけます。海彦がしてくれたように、ずっとずっと見守ります。
 私には貴方達の声を聞いたことも、見たこともありませんが、そこに居ることには重々気付いているのです。
 敷居をまたいで入ってきなさい。私が許します。誰かが「またぐな」と命令したら、私が説得します。積木が戦います。私達は貴方達と一緒に暖をとりたいのです。

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 本当に意味を成す時間が増えそうですが、依然疾患は治りません。これからも不自由は続くと思います。しかし、生きることに不自由は付き物。そう気にすることもないでしょう。

 分裂していても、同じ光に、風に、暖に、涼に、情に包まれましょう。これからも一緒に危機に挑みましょう。これ以上望むことなどないでしょう。人間としてこの上ない幸せです。

 さて、私は何をしましょうか?もうしばらくの間は休ませてもらいます。年老いているせいか、これから新しいことをしようと言う意欲がわいてきません。むしろ静かに時の流れを感じていたいのです。

 若い子達へ、時間は大切に。私の時間を最大限譲ります。ありがとうございました。

 家、とてもきれいに片付いていますね。光ちゃんに良くしてあげて下さい。では。
2005年11月01日(火)

寝言日記 / 杏