そばにいたい あのひとの
そんなふうにことばがこぼれそうになるのを
ためいきでそっと押し戻している
恋しさには
ともすれば憂鬱がにじんでくる
仰向けた身体の
肺でも心臓でもない 脊髄のどこか近くから
うっすらと毒が染み込んでくるのが見え
鏡張りの天井に映るしわの寄ったシーツの上で
かみさまのように不思議そうに 呆然とする僕が見える
あのひとの 日常を
支配したいと左手が云い
できるものかと右手が云う
これが恋かと脳が疼き
そんなはずはないと経験則が否定する
もう
どうでもいいと目を閉じる
どこから朝を捕まえよう
秘めた窓を開けようか
あるいはハトを放とうか
夢を見るのはこどもの役目
語るのは先人の役割
手を 伸ばせば天に届くと
信じるための呪文を探す
凶器を探す
痺れる想いを明日へ繋ぐ
いつか
もう朝がなくなったことを
誰かが教えてくれるかもしれないとまだ
疑っている
それはうつくしい朝を知っているからだ
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