ひとりごと

 にょらがお星さまになってもう2週間。いや、まだ2週間といったほうがいいかな。まだ2週間しかたっていないのに、もう新しい子猫たちを迎えてしまった。にょらが逢わせてくれた子たちとはいえ、なんか後ろめたい気もする。

 ちびらを見ながら「にょらもこのぐらいからやり直しができればなあ」とぼんやり考えたり、元気にがつがつ食べる姿を見ては「にょらもこうして食べてくれればよかったのに」と思ったりする。突然、声をあげて泣いてしまうこともある。買い物をしているときなど、なんの前触れもなく涙が出てくることもある。

 にょらの腎臓はとっくに限界を超えていたので、あの日尿量が減ったことを聞いていても同じことだったと先生にいわれた。自分を責めてはいけない、にょらの苦しみを背負うのではなく、虹の橋で幸せに暮らせるよう祈ってあげるのがいいといってくださった方もいた。にょらはもう苦しまなくていいし、今は幸せに暮らしていると思う。それでも後悔は消えない。ずっと昔にさかのぼって自分を責めてしまう。それに、どうせ苦しむんだったら強制給餌も点滴もせずに、好きにさせてやればよかったかな、とも思った。でもそうしていたとしても、やっぱり後悔しただろうな。どうすればいちばんよかったのか、たぶん一生かかっても答えが出ないと思う。

 どうしてあの日、あんなに急に逝ってしまったのかな。チョコレートなんか一生食べなくてもよかった。旅行だって二度と行けなくてもよかった。にょらがいてくれるだけでよかったのに。看病は大変だったけど、いやだとかめんどうだとか、一度も思ったことなかったよ。きっとにょらは疲れちゃったんだね。ほんとはもう少しがんばるつもりだったかもしれないけど、病院でちびらを見つけて「あ、ちょうどよかった。あとはあんたたちに任せたから、よろしくね」って感じだったのかも。

 ちびらは確かにかわいいし、すでに大切な存在になっている。でもにょらがいちばんだよ。またいつかきっと逢おうね。それまで忘れずに待っててね。



2003年11月09日(日)



 新しい家族

 きのう、子猫が2匹うちにやってきた。

 にょらが亡くなったばかりなのに、もう?! と驚かれることだろう。わたしも驚いた。わたしはにょらがいなくなったら絶対ペットロスになるだろうと前から思っていたのだ。にょらが亡くなる前日も、病院で待合室にある雑誌のペットロスの記事を読んでいた(そのときはまだまだ先のことだと思っていたけど)。

 子猫との出会いは、にょらが亡くなった日。病院でにょらに付き添っているとき、奥の入院室のガラス越しに2匹の子猫と何度も何度も目が合った。病院のホームページの里親募集のところに写真が出ていたので、すぐにその子たちだとわかった。男の子と女の子が1匹ずつ。特に女の子のほうとよく目が合ったのだけど、その子はニコニコニコニコしながらわたしを見てくれていたのだ。そのときなぜか運命的なものを感じ、「うちの子にしなければ」と強く思った。

 にょらの身代わりとしてではなく、ちゃんと別の子として育てよう。そう決心し、にょらが亡くなった翌日にメールで先生にそのことを告げた。ペットロスにならなければいいけどとスタッフみんなで心配していたので、いいことだと思うとのお返事をいただいた。

 もしかしたらにょらもそれを心配してくれたのかもしれない。それで子猫と引き合わせてくれたのかもしれない。今はそんな気がする。

 あんなに辛いことやいやなことばかりされ、最期はあんなに苦しんだのに、全部忘れたようなすがすがしい幸せそうな顔をして旅立ち、さらにわたしのことまで心配してくれていたなんて……。にょらってほんとにすごいよ。やさしすぎる。

 はじめは女の子だけもらうつもりだったのだけど、きのう病院に迎えにいって2匹を見せていただいたら、1匹だけ残していくなんてできないと思った。きょうだいで仲がいいし、どちらもかわいい。しばらく2匹と遊んだあと、「どちらも連れて帰ります」といった。

 家に着くと、まずにょらのお骨に挨拶させた。2匹ともじっとにょらを見ていた。トイレだけはきれいに洗ったけど、にょらが使っていたブランケットなどは洗っていない。おもちゃなども全部子猫たちに使ってもらう。にょらのにおいを知っておいてもらいたかったのだ。子猫たちはあちこちくんくんしながら家の中を探検していたけど、にょらが使っていたものでも警戒することはなかった。それどころか、親しみを感じたようでさえあった。

 子猫たちは元気だしおりこうさんだ。トイレもすぐ覚えたし、呼べば走ってくる。名前は「こた(こたろう)」と「みかん」。とりあえずつけた名前だけど、たぶん決定。9月10日ごろの生まれでまだ小さい。にょらがきたときはもっと大きかったし、2匹飼うのもはじめて。ちょっと不安もあるけど、にょらが引き合わせてくれた子たちだからがんばれる。今度こそ上手に育てるね。にょらのことは絶対忘れないし、過去にしたりしない。子猫たちもにょらの存在に気づいてると思うよ。だからずっとそばにいて見守っていてね。

 にょらの病気が悪くなってからはあやまることしかできなかったけど、今ならいえるよ。

「ありがとう」 



2003年11月01日(土)
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