凶暴なやつ

 お正月休みも終わり、きょうから平常どおりの生活にもどった。休みのあいだもにょらは、ふだん起きる時間になると枕元にすわって様子をうかがっていたらしい。しかしわたしが起きる気配がないので、また寝なおす。そうするうちに、もう早起きする必要がなくなったと判断したらしく、きょうは起こしてくれなかった。

 にょらにお正月だの新年だのがわかるはずもない。相変わらずのんきなものだ。そんなにょらの恐るべきパワーを発見したのは、ちょうど1ヵ月前のことだった。
 
 その日、血液検査を受けることになっていたにょらは、病院の待合室ではおとなしくしていたのに、診察室に入ったとたん豹変したのだ。

 2種類の検査をするため、いつもより多めに血液を採ることになっていた。いつもは助手の人に押さえられてじっとしていたのに、この日は助手の人の手をふりほどこうともがき、うなり、とても注射針をさせる状態ではなかった。そこでエリザベスカラーとバスタオルの登場となった。ところが首にカラーをつけられ、体をタオルでぐるぐる巻きにされてもなお、にょらのパワーは衰えない。大声でわめきながら大暴れ。バスタオルがはずれ、強力な猫キックが飛び出す。何度やりなおしてもだめだ。そのうち興奮のあまり、血管までどっかいってしまって見当たらなくなる始末。ただ見ているのが申し訳なくて、つい手を出してしまったわたしの指先には牙が食い込んだ。

 かたときもじっとしていなかったはずなのに、さすが先生だ。いつのまにか血液を採取していた。しかし量が不十分だったため、2種類の検査のうちホルモン検査は断念。いつもの検査だけになった。

 それにしても、にょらがここまで凶暴になるとは思わなかった。正直いってそれまでは、あまりにおりこうさんなので診察料をまけてもらってもいいぐらいだと思っていたのだが、今となっては割増料金を払いたいぐらいだ。以前、診察中は顔の前に手を出さないようにいわれていたにもかかわらず出してしまったわたしが噛まれたのはしかたがないが、助手の人にもけがをさせてしまったかもしれないのだ。それが本当に申し訳ない。それなのにわたしの手の傷ばかり心配してくださった。

 恐縮して何度もあやまるわたしに、「それだけ元気になった証拠だから」と笑う先生。当然、検査の結果も良好だった。

 また1ヵ月後に検査が待っている。頭が痛い……。



2003年01月06日(月)
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