病院通い・その5

 きょうは体重測定に行った。家でもいちおうはかってはいるのだが、人間用の普通の体重計なので、0.2キロごとしかはかれない。にょらの微妙な体重変化には対応していないのだ。

 病院ではかると、前回とまったく同じ。体重の減少ももとりあえずストップしたらしい。健康状態も良好。これで帰れるはずだった。当初の予定では。

 ところが先生は、甲状腺と副腎皮質のホルモン分泌異常が起こっている可能性があるので血液検査をしてみたいとおっしゃった。食欲減退の原因がほかにみあたらないことと、前回の検査でやや気になる値があったことで、もしかしたらということになったらしい。もしこの検査で異常がみつかれば、対処の方法もある。今は薬でなんとか食欲はあがってきているが、やめるとまたもどってしまう恐れがあるため、原因をつきとめる必要があるだろうということだ。

 わたしは少し悩んだが、検査をお願いすることにした。体重測定だけだからといって連れてこられたにょらには、とんだ災難だ。しかし前回の採血のときよりずっとおとなしくしていた。えらいえらい。

 今回の検査は外注のため、結果が出るまで数日から1週間ほどかかるらしい。それまで投薬もいったん中止。

 最近しょっちゅう病院に連れていかれるので、にょらはわたしに抱き上げられると病院か薬かどちらかだと思って死にそうな声を出すようになってしまった。早くにょらの信用を取り戻したいゾ。



2002年08月22日(木)



 棒作戦

 薬の飲ませかたも完璧になり、順調にいっていたはずなのに、ま
た一度だけ失敗してしまった。それ以来、にょらの抵抗がはじまっ
た。

 にょらは、ソファのすみにすわらされると薬だとわかるようだ。
周囲を固められているため暴れることもできないので、上から逃げ
る作戦を思いついたらしく、後足で立ちあがり、わたしの手をすり
ぬけようとする。しかしわたしにすかさず取り押さえられる。逃げ
られないと悟ったにょらが次にとる作戦とは……。

 後足で立った状態のまま、棒のように身を硬くする作戦だ。棒に
なったにょらは、すわらせようとしてもびくともしないのだ。猫が
ここまで硬くなるとは知らなかった。しかし棒のまま薬を飲ませる
にはかなりの技術を必要とするので、大笑いしながらも苦労してす
わらせる。すると今度は歯をくいしばり、あけようとしない。なか
なか頑固なヤツである。

 それでもなんとかしてじょうずに飲ませると、にょらは何事もな
かったかのように優雅に去っていく。

 にょらのおかげで、薬を飲ませるのがますます楽しくなった。



2002年08月18日(日)



 病院通い・その4

 歯石取りが無事終了。きょうは下の歯なので動く恐れがあるということで、AHT(Animal Health Technician 動物看護士)のかたが保定してくださっていた。にょらは前足をきちんとそろえ、とてもおとなしい。両ききの先生は器具を右手、左手と持ち替え、なかなかあざやかな手さばきだ。ところが時間がたつにつれ、にょらは文句をいうようになった。口を押さえられているため、出るのはうなり声だが、それにしても低〜いものすごい声だ。
「ちょっとばかしおとなしくしてたらいい気になって〜。やめぇ〜い。離せ〜。いいかげんにしろ〜〜〜〜〜」という感じか。

 とにかく、歯がきれいになってよかったよかった。
「もう一生歯石取る必要はないでしょう。15年間でこの程度だったからね」と先生。(せんせ、そこで「あとどうせ2〜3年しか生きないしな」とか思いませんでした? まだ10年は生きてもらうつもりなんですからね〜♪)

 問題の食欲のほうは、前回処方していただいた薬のおかげか、少し食べるようにはなった。ほったらかし作戦はまだ使えそうにないが、日に何度か運んでやると、けっこう食べる。それでも1日の給与量の4割ほどだが。そしてきょうもあと8日分の薬とビタミン剤をいただいた。

 ビタミン剤はやや大きめなので、はじめのうちは何度か失敗した。口をこじあけてのどの奥に薬を落とすのだが、落としどころをまちがえるとたいへんだ。すぐにペッと吐き出せたときはいいが、どこかにひっかかってなかなか出ないときは、ぶくぶくと泡をふく。相当にがいらしいのだ。暴れたはずみに、歯石が取れて鋭くなった歯で指をざっくりやられることもある。

 しかしここ数日で薬の飲ませかたもだいぶうまくなった。以前はにょらをひざに置いたりしてやっていたのだが、これだと暴れる確率が高い。あるときふと思いついて、ソファのすみなどににょらをすわらせ、わたしがにょらの横にすわってみた。するとにょらは動けなくなり、暴れなくなった。口のあけかたは、以前は右手で下あごを下からつかんでこじあけていたのだが、これだと薬をつまんでいる親指と人差し指の自由がききにくい。そこで中指を下の牙と牙のあいだに置いてあごを押し下げるようにすると、ねらったところに薬を落とせるようになった。にょらは何が起こったのかわからず、きょとんとしている。もう錠剤は完全にマスターしたぞ。

 あとはもっと食べてくれるようになるのを待つばかりだ。




2002年08月13日(火)



 病院通い・その3

 きょうも歯石取り&食欲不振の相談に行った。にょらがいかに食べないかを説明すると、先生もさすがにそこまでとは思っていなかったらしく、ちょっと困った様子になった。体重はまた少し減ったが、どう見ても具合が悪そうには見えないのに、と。

 とりあえず、食欲増進効果のある薬を飲ませてみることにした。点滴で強制的に体内に栄養を送りこむという方法もあるが、目に見えて衰弱しているのならともかく、これだけ元気そうならまだ必要ないだろう。4日間薬を飲ませてみて、それでだめなら考えようということになった。

 きょうの歯石取りでは、にょらは前回よりおとなしくしていた。「伏せ」のかっこうで、文句もいわずじっとしていた。ただ最初から最後まで、しがしがとあごを上下に動かしていて、それが妙におかしかった。わたしが薬を飲ませるときなどに口をこじあけようとするとすごく抵抗するくせに、先生だとどうしてこんなにおとなしくなるのか。ほかにだれかが押さえているわけではなく、先生ひとりでにょらの頭を右手で上からつかみ、指で口のはしをめくり、左手に持った器具で作業をする。にょらもえらいけど先生もすごい。うらやましいような、くやしいような。

 帰ってさっそく薬を飲ませてみた。どのくらいで効果があるのかわからないが、自分で食べにいこうとしないのは変わらない。しかし手にのせて食べさせる方法では、今まで1日1回の成功率だったのが、夜までに3回成功した。少しは効果が出てきたのかも。




2002年08月09日(金)



 病院通い・その2.5 ほったらかし作戦

 にょらにごはんを運んでやったりせずほうっておくことを先生に約束したので、実行してみた。

 ほんとうに食べなかった。いくらなんでもお腹がすけば自分で食べにいくだろうという思惑だったのだが、にょらのほうが一枚うわてだった。ただの1粒も食べなかったのだ。負けた。(気づかないうちに食べてるかもしれないでしょ、と思っているあなた、甘いです〜。器に入れたカリカリの状態をおぼえているので、ちょっとでもつついていればすぐわかるんです。ふりかけているかつおぶしも動いてないんですから。)

 ほったらかし作戦第1日目はそのような結果に終わり、第2日目も作戦続行の予定が、午後断念した。先生は、猫はぜったいに食べずに死ぬことはない(病気などで食べられない場合は別として)、必ず自分から食べにいくはずだとおっしゃったが、やはりここまで強情になられると心配にもなってくるものだ。ついに根負けして手に10粒ほどのせ、かつおぶしをちょろっとトッピングしてにょらのところへ持っていった。

「またきた」
 そういういや〜な顔をし、逃げ腰になるにょらをなんとかとどまらせ、手にのせたカリカリを見せてみた。案の定、顔をそむける。そこでトッピングのかつおぶしを鼻の前でひらひらさせてみた。ぺろっとなめようとするその瞬間、すばやくカリカリに混ぜこむ。すると、食べた。1粒。そして、ついでという感じで全部食べてしまった。なんだ、やればできるじゃん。もしかしたら食べたくても体が受けつけなくなっているのかと思ったが、食べることはできるようだ。だったらなぜ食べないんだよ〜ぅ。

 このやりかたで何度かトライしてみたが、1日1回ぐらいしか成功しない。つまり1日10粒程度しか食べないのだ。それなのになぜか元気。前回いただいたビタミン剤のおかげでなんとか体力を保っているとしても、このままでいいわけがない。2回目の歯石取りの日を早めることにしよう。




2002年08月08日(木)



 病院通い・その2

 あんなに喜んで食べたサンプルのカリカリも、2回目からは見向きもしなくなった。ごはんの器を持っているわたしを見ただけで逃げるようになってしまったのだ。先週までは、多くても1日の給与量の6割しか食べなかったが、さらにエスカレートして2割ほどしか食べなくなった。しかし食べていないというのにふつうに元気なのが不思議だ。

 でもこのままだともっともっとやせてしまう。もう一度診ていただきたくて、また病院へ行くことにした。そして前回、歯肉炎をおこしているから歯石を取ったほうがいいといわれたので、それもお願いすることにした。

 熱は平熱、見たところ異常なし。どうやらわたしがごはんをにょらのところまで運んだりして甘やかしすぎて、つけあがらせたようだ。もうほうっておくことにした。

 そして歯石取り。細いはさみの先がカーブしてギザギザになったような器具で歯をがしっとやると、すぐにごろんと歯石のかたまりが取れた。歯の形だ。15年間なにもしなかったわりにはきれいな歯だといわれたが、こんなすごい歯石が取れるとは。麻酔なしで少しずつやるということで、きょうは右の上の歯をやっていただいたのだが、にょらは文句をいいながらもそれほど暴れずおりこうさんだった。あと2回ほど歯石取りに通う予定。 

 余談だが、前回先生に腸をもみほぐしていただいたおかげか、翌日長〜いうんちが出た! 一度目はかなりの難産の末、出たのはふつうの量だったので、先生のハンドパワーも衰えてきたか? と思ったが、その2時間後になんと、15センチ近いのが(ふつうは短いのが3〜4個)便器の中で揺れていた。あのレントゲンに写っていた宿便かも。いやあ、ごりっぱ。ハンドパワー強し。



2002年08月05日(月)



 病院通い・その1

 きょうは血液検査&尿検査の日。最近にょらがごはんをあんまり食べてくれないので、それもご相談しようと思っていた。

 採血を終え結果を待っているときに、先生が出てこられて、
「検査結果がちょっと気になるのでレントゲンを撮らせてください」とおっしゃった。わたしはどういう反応をしていいのかわからず、ぼうぜんとしてしまった。先生はわたしを安心させるためか、
「ちょっと確認のためにね」と笑顔になり、にょらをキャリーごと連れていかれた。待っているあいだ、本に目を落としているものの、少しも進まなかった。

 しばらくして呼ばれて診察室に入ると、大きなレントゲン写真が2枚はってあった。魚みたい〜とふきだしそうになるのをこらえ、まず尿&血液検査の結果をきく。腎臓の数値は正常値にもどっていたが、リンとカリウムの値がかなり低い。暑さと食欲不振による一時的なものなのか、別の原因によるものなのかは今の段階ではわからないらしい。今度は9月末にまた検査だ。

 FeLV(猫白血病)と FIV(猫エイズ)の検査もしていただいたのだが、これはどちらも陰性だった。

 さてレントゲンを撮ってみてわかったことは、腎臓がかなり萎縮していること、先天的に腰椎が1個たりないこと、脊椎に石灰沈着をおこしていること、そして宿便がたまっていることだった。腎臓が萎縮しているのは慢性腎不全の典型だが、それにしても小さすぎ、ぎりぎりのところで機能しているということらしい。腰椎欠損症は猫にはよくあるもので、それによってひどい便秘をおこすこともあるが、にょらの場合、この年齢でこの程度ならいいほうらしい。石灰沈着は、それぞれの脊椎のはしに石灰のかたまりができていて、それが神経を圧迫することでいろんな弊害が出てくる可能性がある。しかし老化によるものでしかたがないようだ。

 心配したが、とりあえずおおごとでなくてよかった。そして先生はいつものように腸をもみほぐしてくださった。

 それよりも問題は、食べないことだ。このところ療法食だけではまったくダメなので、ふつうのカリカリを少し混ぜ、それでも食べなくなったら混ぜる量をふやしていき、ついにかつおぶしをふりかけるようになったが、それもすぐに食べなくなってしまったのだ。自分では食べにいこうとしないので、わたしが運んでやるというのがくせになってしまっている。

 病院でカリカリのサンプルをいくつかいただいて帰ったので、かたっぱしからあけてにょらに見せてみると、その中でひとつだけ喜んで食べるのがあった。検査にそなえて朝食ぬきだったせいもあると思うが、大口あけてすごい勢いで食べたのだ。おお〜、すばらしい。今までこんな食べっぷりは見たことがないぐらいだ。このままちゃんと食べるようになってくれるといいけど……。




2002年08月02日(金)
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