ジョージ北峰の日記
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2006年05月21日(日) |
オーロラの伝説ー続き |
数人の味方がパトラと一緒に、モンスターザメの攻撃に加わろうとしていました。しかし先ほどの戦闘で、戦場からモンスターザメは皮膚が硬く、弾力があり、槍の攻撃があまり有効でないとの報告が届き始めていました。 司令部では色々作戦が考えられたが、結局モンスターザメの弱点はたった一箇所“眼”だけとの結論に達したようでした。 しかし相手の眼を攻撃するには、どうしても敵の攻撃範囲内に接近しなければならない。その作戦はモンスターザメの機敏な攻撃力から判断すると危険極まりないことでした。 「どうするか?」ハラハラしながら見ていますと、司令部からの作戦が戦場に送信されたのか、それまで攻撃を仕掛けていたラムダ国戦士達が“パッ”とモンスターザメから離れ周囲に広がったのです。と、相手の動きが一瞬止まる、その僅かなラグタイムを見逃さずパトラが上から前方へ飛びだす。それに気付いたモンスターザメが、攻撃のため急な態勢を取ろうとする瞬間、パトラは上方へ反転、逆さ落としの態勢から、すれ違い様矢のように敵の眼を攻撃していました。
最初の一撃でモンスターザメの眼を見事に突き抜いていました。何時ものことながらパトラの反応は素早く、正確で惚れ惚れするものでした。
私は思わず“素晴らしい!”と叫んで拍手を送っていました。司令部の人達も思わず拍手を送っていました。 が、しかしこの方法にも勿論問題がありました。パトラは相手から槍を抜き取ることができず、武器を失ってしまったのです。 しかし片目をやられたモンスターザメは、敵の思わぬ攻撃に驚いたのか、敵の戦士の命令も聞かず退却し始めたーーしかし一方敵戦士はまるで、蜜に群がる蟻のように彼女に対し攻撃をし掛けたのです。 勿論味方戦士も負けずに“そうは、させない”とパトラの周囲に集結、必死に戦っている。パトラの死は、そのままラムダ国の敗戦を意味したからです。 しかしパトラも素早く剣を引き抜くと、自らを防御する一方、味方を立て直し、戦況を攻勢に転じようとしていた。 と、それまで戦況を見守っていたアレクが「出撃します!」と司令に告げたのです。 私が心配そうにしているのに気付いたのか、アレクは「大丈夫! パトラの動物はサメではなく、われわれが新たに調教してきたシャチだ、動きはサメより数段優れている。これまで秘密兵器として隠してきたが、今回は予想以上の働きだ。サメはシャチを恐れている上、パトラはクレバーだから決してやられることはない!」と断固とした表情で告げるのでした。 なるほど、パトラの動きは機敏で、彼女が参戦してからは、味方戦士の士気も上り秩序だった戦いが出来る様になっていました。 それまで傍若無人に振舞っていたモンスターザメも新しい戦法に戸惑いを見せ初めていました。 それにしても自信満ち、堂々としているアレクの姿が今回ほど頼もしく思えたことはありませんでした。「アレクならパトラを助け、状況を好転してくれるのではーー」と、不安の中にも明るい見通しが立ったからです。 アレクの率いる部隊は、シャチ部隊でした。この部隊は五十頭あまりの小部隊でしたが、その働きは目覚しく、三頭が一体に戦う新しい隊形は想像以上に有効で、瞬く間に敵の陣形を崩し始めました。それまで、パトラを始めラムダ軍部隊は苦戦していましたが、アレクの部隊が敵を蹴散らし、一直線にパトラのほうへ向かって進み始めると、それまで戦っていた敵は、まるで潮が引くかのよう、嘘のように速やかに退却して行ったのです。
2006年05月02日(火) |
オーロラの伝説ーー続き |
モンスターザメと雖も(いえども)背後からの攻撃には如何することもできないはずで、彼らを操る戦士を攻撃するには最適の方法と考えられたのです。しかしーー味方の一群が一斉攻撃をかけようとした時、それを予想していたかのように上方から敵の一群が攻撃をしかけるーー それからは敵・味方が入り乱れて格闘戦が始まりました。 味方のサメには数本の白い縞模様が頭部と尾部にあり、それが目印となって、戦況、即ち敵・味方どちらが追い、どちらが追われているのか画面上も良く判別できました。 敵に追われる味方、逆に敵を追う味方の戦士たちは三次元空間をフルに使って戦っている。いつの間にかモンスターザメの一群も隊形を立て直し傍若無人に振舞っている。 それにしても、実際の戦争の最中とは言えサメが馬のように戦士の指示通り懸命に戦う姿は、戦況とは関係なく(おそらくサメであるが故と思うのですが)感動を呼び起こすのでした。 一方戦況は、手に汗を握るほど緊迫した状況で、本当は美しい南国特有の紺碧の海だというのに、海は血で真っ赤に染まり白い珊瑚礁も熱帯魚の群も目に入らない凄まじい混戦状況が続いていました。 モンスターザメの出現があって、味方の戦士たちの奮戦にもかかわらず、戦況は味方に不利な状況へ徐々に展開しつつあるのでした。 その時! 遠くで、すばやく泳ぐ一頭のサメを三頭のサメが追尾する様子が画面に飛び込んできたのです。 そのサメの戦振りは鮮やかで、後ろからの攻撃を反転、素早くかわしたかと思うと横からの敵を撃退、他の2頭の前後からの攻撃に対しては、さらに複雑に反転・上昇・攻撃を駆ける。見てる間に、三頭の敵を撃退、敵戦士が沈んでいく姿が見えました。 まるで少年の頃に映画でよく見た、戦闘機同士の空戦を見ているような錯覚に陥ったほどでした。 戦いは遠く、その戦士が敵なのか、味方なのか最初は分かりませんでした。 その戦士が操るサメは決して大型ではありませんでしたが(後ほどサメでないことが分かりました)、敏速で複雑な動きができるようでした。 しかし横で戦況を見ていたアレクが「アッ、王女!」と叫びました。 なんと、味方の戦況が不利と判断したのか、パトラが戦線に加わっていたのです。 一瞬、私の全身が火のように熱くなるのを覚えました。 まさかこんな危険な戦場に王女パトラが誰に相談することもなく出撃しているとは!「どうして?」 私は驚いたと言うより、あまりに無謀さにあきれましたが、しかし一方訳の分からぬ感動で、周囲の景色がかすんで見えた程でした。 パトラの日ごろの言動だけでなく、今回の行動ほど、彼女の王女としての責任感と強い心意気を感じたことはありませんでした。 しかし「何故この危険な戦場に、今この状況で王女が出撃したのか?パトラが死ねばどうなるのか?分かっているのか!」 私にはこの国の戦争のあり方や王の果たす役割がよく分かりませんでした。 彼女の無謀とさえ思える今回の行動に、私は、怒りがこみ上げてきたと言ったほうが正しかったかもしれません。アレクも立ち上がっていました。 しかし味方もパトラの参戦に勇気づけられたのか隊形の建て直しを図り始めていました。
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