『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2015年12月22日(火) 冬のさかり。

うまれた場所とそこをつくったひとをおうちと思うなら
もう、それは取り戻せないとおいところに消えてしまっていて
だから、あの小説の主人公のように

どこにでも居られるかわりに、どこにもなじまない。

…そんなふうにふわふわといきている。
祖父が逝ってしまってからこのふわふわは
また頼りなさをぐっと増した、ように
じぶんでは、感じている。
水をつめたビニル袋のうえに乗ってわらう。

本格的に家を出て、トウキョウに移ってから3年、
たまにこうして「帰ってきて」思うのは
すくなくともぼくは、
この思いのほか小さな部屋でまだ髪の短い小学生だったころから
今とあまりかわらない場所までそだったのだということだ。

15のときに買ってもらったベッドで
小学校の卒業制作だった彫刻の箱や図書館学の教科書や
あのことお揃いで買ったきいろい魚のペンダントがさがる
うす茶色の小花の壁紙の、この部屋で。

まもられていなかったわけじゃ、なく
でも、護ってもらえたのかはわからない
20年のじかん。

……そんな苦労だけじゃなかったはずだよと
いいこともあったはずだよと
曖昧模糊とした視界にさがるカーテンを
きずあとだらけの手で持ち上げて
キノウをあかるくしようとこころみているぼくもいるのに

いつか、だれか
気づいてくれるかな。



転校生「エンド・ロール」をききながら
真火



2015年12月13日(日) 祭り。


年齢も性別もこえたくらいのともだちがくる。
雨の日、このあいだいっしょに買った長靴をはいて。
クリスマスの前の前。

オリジナルレシピのグラタン。
セロリとれんこんが入ってる。

とっておきのベーコンを使ってつくったポトフ。
久しぶりにKが台所で腕をふるった。

ブルーチーズと干しいちぢくの焼きたてパン。
ほかほかの、さくさく。

黒砂糖のとけた珈琲。

湯気とチーズのにおい。
しぜんにたくさんつぎつぎと
笑ったりしゃべったり、ないしょの話をさらっとしたり
また来ますまた来てね、で
はじめからおしまいまで笑顔。

魔法みたいです。

夢、みたいです、べつせかいにいたようです。
たくさんたくさん笑ったあとの



……虚無、が
追いついてぱくりと喰らわれてしまうまえにはやくはやく
ねむりにおちたい。さめないでいいくらいにふかくはやく
内臓も腕も視界もねじられてずたずたに
なるまえに逃げ出さなくちゃ向こうへ。

たぶん麻薬。



三冬月、十三、
私にはきっと聖夜。


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