カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



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静かな音もしません。BGMが流れてます。そら流し聴きます。遠くの方に人が立っていて、誰かと話しています。陰になっていてわかりません。あなた。怖い顔をしているようですね。誰か人が、また、入ってきました。挨拶をする。会釈の、人。冷たい指がかじかんで、戻ってきた感覚が、じわり、胸の奥に広がる心地でして、暖かい風が乾燥しているから咳きこむ。目にうすら、涙が浮かぶ。誰も見てはいないことを気付いています。私は陰にいます。どこかの、薄暗いBAR。さらにそこの暗がりの、誰もそこには気づいていない、まっくろしかない。よく見ればそこに息づいているの、ワタシ。眺めるだけで、溜め息をつく。なにに? 君の瞳に乾杯。そのような戯言をいう人種。私には気づかない。私は見てる。面白くないけれど。自分の体が見えません。ゆっくりと目を慣らして、暗いのを我慢して、見つめ続けると、電波を、とらえる、アンテナが、右往左往するように、やがて、ノイズは静まって、見えてくるよう、形作られるよう、輪郭がうすらぼやり溶け込んだ。一瞬ののちには消えてしまうけれど。何が消えるというのでしょう。私の身体? 心? 実在したというあかし? どれも、なにも、ないでしょう。もとより、そこには、ないのにあなたが、画面を通して、こちらを、一瞬だけ見つめるから、私もそこにいるように思えて、暗がりが、甘い香りをはらむ幻覚。またひとり。私の前に人が立っている。伝わってこないから、もしかしたら。やもやすると。君たちこそいないんじゃないの? 喉の奥底で飲み干します。赤い、ワインのように喉を潤して、香りが、ふわり。きっと、すべて、まやかしのようだわ。




2008年01月23日(水)
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