カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 半泣きの海辺

っと、サボり魔です。風邪でした。嘘です。風邪は、一日だけです。下のは、読み流して下さい。

=半泣きの海辺=

夏休みに入る一ヶ月前に「バーベキュー行こう」ってことになって、まだ全然早いのに、日程とか、全部決めてしまった。九時に公園前のバス停ね、と。ああ、夏休み過ぎたら、受験勉強しないとな、って。へらへら笑いながら、それぞれに家に帰っていった。
明後日くらいになって、なんでか分からないけど、「あいつって生意気だよね」って言われだして、バーベキューの提案者が、嫌われていった。理由もないし、前からの友達は、別に生意気だなんて思っていなかったんだけど、何もできなくて、どんどん離れて行ってしまって、夏休みに入ったときには、そいつは完全に嫌われ者、はずれもの、にされてしまっていた。なんでだろ?
でも、バーベキューの日になって、みんな覚えてて、1人だけ欠けてたけど、ほとんどみんな集まって。へらへら笑いながら、「ごめん」と言った。
そいつは、半分笑って、半分泣いて、海に走っていって。転けてしまった。でも、なんか、もう遊べないんだな、と思ったら、寂しくなって、みんな半泣きになっていた。

2002年04月27日(土)



 ムササビの降る、丘

=ムササビの降る、丘=

地平線の遠くの方から星くずが回転しながらやって来て、スポンジケーキのような丘を直角に上昇して上っていった。

=笑えない人達=

笑いってなんですか? と、未来から来たロボット人が、通勤してるサラリーマンに聞いていた。僕らは、笑いっていうのが分からないのです。誰か教えて下さい、と言っている、ロボット人を横目に全ての人が、無関心に避けて通っていた。

=範囲指定された生活=

同じ所をグルグル回り、同じものを見て生きている。機械音がウィーンとなっていて、耳障りだけど、それでも生きている。楽しみも、何もないけれど、生きている。
小さなドーナツ型の宇宙船ないで、生きている僕らがいた。



2002年04月21日(日)



 顎がはずれるほど笑い

ああ、サボり癖がついてしまったのです。まずいです。まずいです。あと、ネタの方が切れかかっているのです。まずいです。まずいです。

=顎がはずれるほど笑い=

面白くない話に合わせて無理して笑ったら、顎がはずれた。痛くはないのだが、常に顎の筋肉が引き伸ばされていて辛かった。それに加えて、教室中のみんなが笑い始めるものだから、悲しくなって、それでも、顎は戻らなくて、泣きそうになってしまった。保健室に行って、一通り先生に笑われると、整骨院に行くことになった。
しばらくして、顎が治って、学校に戻ると、みんなが僕の顔を見て笑う。何故か、もう無理して笑う必要ながない気がした。



2002年04月20日(土)



 無関心な、白い道

=無関心な、白い道=

すべてが石灰化していて、乾いていて、生気が無くて、無関心だった。砕かれた骨が極限まで踏み固められて、白く滑らかな道になっている。
人類が始まって、死んだものたちは皆この道を通ってどこかへ向かおうとしていたのだ。死んでしまって、骸骨になってしまった自分でも、この先に待っている何かに行くのだ、と。
多分、この道はどこにも続いていないのだ。最後まで歩いていくと、道が唐突に終わっていて、そこに前の人の力尽きた骨があるのだ。無機質に、無関心に、石灰化しいて、乾き、生気の無い骨。
悪態でも、ため息でも、なんでもついて、僕らはその骨を踏み砕くのだ。少しでも、白い道を先に延ばすために。
そして、踏み固めてしまってから、そこに倒れる。自分が、次の人に踏み砕かれ、踏み固められ、白い道となって行くために。

=鳥かごの中の世界=

あの時僕は、鳥かごの中の君っ笑ったが、僕は紐につながれていた。悲しさよりも、不条理さに対する怒りが湧いてきて、紐に歯を立ててみたが、切れなかった。自分の状況に気付いて、君の姿を思い出して、どうしていつも不安そうな顔をしてるのかが分かった気がした。


2002年04月17日(水)



 もしかしたら。かもしれない。

=もしかしたらかも。しれない。=

フルーツ。フルート。仮装。大して意味ない文字が書き並べられている。机のはじっこに。まさに支離滅裂。でも、もしかしたら、何か意味があるのかもしれない。もしかしたら、だけど。

=煉化細胞=

体から滲み出る汗が、ねばねばしていると思っていたら、実は自分が溶けていた。溶けて、洋服から滲み出ているのだった。3センチくらいの厚さで、僕の体は洋服の外へ滲み出て、外気に冷やされ、また形作っている。
それをみて、気分が悪くなった。変な違和感を感じている。感覚としての、拒絶反応。むずむず、細胞が破裂している。



2002年04月16日(火)



 でこぼこした月の道

=でこぼこした月の道=

アマガエルを踏みつけてしまいそうになったので、一応謝った。
「ついておいで」と、真夜中に誘われて、僕は裸足のまま外に出た。
少しぬめりけを持ったアマガエルの皮膚が、でこぼこした月を映し出している。
アマガエルが、少し遠くまで言って、こっちを振り向いて何かを言った。
何か、すごく大事な何かを。でも僕は、聞き取れなかった。

=眠り=

ワニがカエルにこういった。「僕は爬虫類。君は両生類。分かるかい?」「わかるとも。でも、それがどうしたと言うんだい?」やれやれ、と言う風にワニが、かぶりを振って答える。「だから、両生類の君よりも、爬虫類の僕の方が進化しているんだって」カエルが、一瞬悲しそうな顔をして、呟いた。「かわらないよ。きっと」
冬が来て、辺りは眠る。両生類も、爬虫類も、みんな全て。

2002年04月15日(月)



 蒼さ、に、ワニは、眠る

=蒼さ、に、ワニは、眠る=

青いワニが大きな口を開けていて、その中をのぞき込むと、真っ暗な宇宙が広がっている。
ワニは神秘的で、青く澄んだ湖の中を独り泳いでいる。そして、湖を泳ぎ回っている「星」を捕食して生きている。様々な色に淡く光る「星」が群をなして湖の中を泳いでいる。でも、ワニはいない。他に、いない。
何年も、何年も、すごく長い、長い、時間をワニは生きている。今までにビックバーンが数回起こって、その残り滓を吐き出してきた。
いつだったか、溺れかけた牡鹿を助け出したワニは、今も湖の中で生きている。

=雲の大雪原=

赤い風船がピエロの手から離れていった。空へゆっくりと、風に揺られながら上って行く。上がって、上がって、上がって。雲を越える。雲の平原を見下ろした。白く。ふわふわと。
風船は破裂した。ぱちんと、唐突に。

2002年04月14日(日)



 繰り返すのは日常?

=繰り返すのは日常?=

ある日太陽が西から昇ってきた。朝になり、人が起きる。人々は気付かない。いつも通りに一日を過ごす。
繰り返す日常。また今日も、いつもと同じ。それは違う。君が気付かないだけ。

=軋む音=

全てのモノたちが、全生命を使って啼いている。昼間には決して気付かれることのない音。夜になり、作られた音が止むと、どこからか聞こえてくる。
キーンと、響く、高い音。

=ココが荒野だという証=

サボテンが生えている。生えているというよりも、ただそこに立っていた。枯れた荒野、平地、少し強めの風。
やはり、サボテンは立っている。



2002年04月13日(土)



 凍えるさざ波

=凍えるさざ波=

知らない間に、誰も見ていない間に、夜の間に、冷たい夜の間に、それは降り積もる。音もなく、形もなく降り積もる。
それは積もって、震えてる。寒さに凍える、さざ波のように。

=ミドリの光と=

風が少し木の枝を揺らした。何故か僕は、何かが木の上から落ちてきそうな気がして、その下まで行き、上を見上げた。
何もない。ただ、朝の涼やかな日光が、緑の葉を透かして僕を照らしているだけ。

=碧白色=

限りなく澄み切って、限りなく冷え切った空気。青白い月光が、雲に鳥の影を照らし出す。
「僕一人の世界だ」鳥は呟いた。涙が少し伝い、落ちていった。落ちて行く途中で、氷になった。

2002年04月12日(金)



 霞、もしくは、眩み

=霞、もしくは、眩み=

夕方から明け方にかけて、目の前が霞んでる。
昼間の間は、笑いと、涙と、人々に目が眩んでる。
夜は再び全てが霞む。どこだ? どこだ? どこだ? 何が?

=その向こうに何かあるの=

扉だけがそこにある。草原の真ん中に扉だけが、ぽつんとある。扉の向こう側には草原が続いている。
道に迷った旅人は、吸い寄せられ、取っ手に手をかけ、ドアを開く。その向こうには草原。何も変わらない。当たり前。
でも、彼は幻滅する。

=保身的ナ事実ノコト=

ある女の子に告白されたときは、
「僕も君のことは好きだけど、ここで友達じゃなくなってしまうと、気まずくなったりするかもしれないから、ごめんね。でも、友達ではいてくれな」
と答えるし、彼女からふられたときは、
「君が完全に嫌いになっていないのだったら、友達として仲良くして欲しいんだ。駄目かな?」
と尋ねる。

2002年04月11日(木)



 浮遊隕石

=浮遊隕石=

会話が終わって笑いを止めてみると、グレープフルーツジュースに浮かぶ氷のような僕がいた。綺麗な柑橘系の色の液体に、固体で一つ。接しているはずなのに、不安定に浮かんでる。
少しずつ辺りの笑い声が遠退いていって、ノイズに変わって、また同じスピードで戻ってくる。
口を開いて、笑みを作る。日常。

=ガラスの萎縮=

ガラスに張ったガラスの生育した結晶が、太陽の光に見つかって溶かされていく。まるでそんな様子で、彼の才能を含めた全てが、萎んで行き、消えてしまった。


2002年04月10日(水)



 シナビタきのコ

=シナビタきのコ=

「でも君は結局頑張ろうなんて思わないんだろう?」
自分で「しまった」と思うよりも早く、彼はシュンと萎びてしまった。
「ああ、そうかも」
トーンダウンした声に、細められ、潤んだ瞳。顔は下を向いて、影ができてる。
張りぼての鎧をつけたハリネズミ。繊細で、無邪気で、おしゃべりで、臆病で、弱い。
喋ってないと、押し潰されてしまうんだ。

=何かを待ってる=

霧が晴れた後、目の前に暖かい街が広がっているのを無意識裏に願ってて、壊れきった廃墟の街を目にしたとき、淡い期待は裏切られる。
例えそれが、自分で壊した現実であっても。

=終曲時間=

彼女が音も、波さえも立てずに沈んでいく。等身大のマネキンがゆっくり沈んでいくように、もがかず、息を吐かず、表情を変えない。彼女の顔は、次第に碧味がかかってきて、いつの間にか消えている。
何もない湖面のどこに視線を置けばいいのか、迷っている。



2002年04月09日(火)



 畦道、トンボ又はカエル、夜。

=畦道、トンボ又はカエル、夜。=

目の隅でちらちら動くモノがいて、辺りを見回すと、トンボがいた。一匹を目で追いかけていると、そのうち数が増えてきて、いつの間にかトンボに囲まれていた。前からいたのか、今になって増えてきたのか。
カエルが鳴いた。そしたら急に夜になった。前から夜だったのか、今になって急に夜になったのか。
ふと気付くと、家にいた。

=紅茶の揺らめく=

紅茶をいれて、砂糖を入れて、ミルクを入れようとのぞき込んだら、綺麗な色に揺らめいているのを見てしまった。ほんの少し時間が止まって、また動き出した。ミルクは入れずに、紅茶を飲んだ。

=タールが回る=

放課後に煙草を吸って僕は、俺になる。マイルドセブンの一本目で、僕は俺になり始め、二本目を吸い終わるとちゃんとした俺になる。そして、最後の煙を吐き出し、もう一息ため息を付く。タールが、頭の血管を収縮させてることを考えながら、俺は一歩目を踏み出すんだ。



2002年04月08日(月)



 寒冷夜

=寒冷夜=

花火が夜空に消え行くように、やがてココも暗くなる。深い深い濃紺の夜。
星が高いところで寒そうに瞬いているのを見つけて、僕は白い息を吐いた。星まで届かず途中で落ちてきた。

=ガラス瓶の海=

小さな海がガラス瓶の中に入っていて、手にとって振ってみると嵐になった。あまりに小さな海だから私は偽物だと思っていたのだけど、それは本物の生きた海だった。
沈没した船。深海魚。海底火山。カニ。すべては波の中に漂っていた。



2002年04月07日(日)



 避雷針の音

=避雷針の音=

避雷針はかくかく奇妙に曲がって、地面から生えている。林みたいに避雷針がぽつぽつ立っている。地面の下には避雷針がずっと先まで伸びている。もしかしたら、地球の真ん中まで延びているのかもしれないし、すぐそこまでしかないのかもしれない。
周りの避雷針に雷が落ちる。光って、同時に爆発音。ぱちぱち音が残って、電気はどこか知らないところまで走ってゆく。避雷針が伸びているところまで一気に走ってゆく。走り抜けてゆく振動が、避雷針を震わせる。そして、音が鳴る。金属を曲げて元に戻したような音。

=ココは=

ピエロが言った。「ココは君の来る場所じゃない」僕は聞く。「なんで?」ピエロは眉をしかめていった。少しハの字型の眉。
「ココには夢が無いからさ」
本当は意味がわからなかったけど、分かったような気もしたので頷いたら、僕は眼がさめた。夢には夢がないんだ。

2002年04月06日(土)



 濃霧の林

=濃霧の林=

夢だ。多分。僕は独り、パジャマで歩く。それも、濃霧の林を裸足で。しめった落ち葉の感触が足の裏に。そして、時々、枝を踏む。
でも、きっと、夢だ。

2002年04月05日(金)



 カエルと、ナマコと、水銀と

=カエルと、ナマコと、水銀と=

肺の風船の中にカエルがいて、鳩尾のあたりに青いナマコがいる。カエルが肺を内側から蹴ると、僕は笑う。ナマコの方は、2足歩行するナマコらしいが、足がないので、嘘だったのろう。胃には水銀。もっともらしく重くして、少しでも僕に中身をいれる。ただの張りぼて。そんな存在。でも大事。

=柿春カラス。=

熟れた柿を見上げてると、年老いたカラスがやってきて「これは柿じゃないよ」と言って飛び去っていった。一見柿にしか見えない。でも、違うのかもしれない。とりあえず確認することはできない。高い枝になっているから。でも、そもそも、春に実っているのだから、柿じゃないのだろう。



支離滅裂なことを書き連ねると思う。もしかしたら「文芸日記」の意味を取り違えてるかもしれない。インスピレーションというか、頭に浮かんできた風景を書くことにする。

2002年04月04日(木)
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