トラキチの新着レビュー...トラキチ

 

 

『都市伝説セピア』 朱川湊人 文藝春秋 - 2004年01月31日(土)

感想後日書きます。

評価7点。    
2004年11冊目 (新作9冊目)


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『走って、負けて、愛されて ハルウララ物語』 重松清 平凡社 - 2004年01月29日(木)

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かつてバブル経済絶頂の頃、“オグリキャップ”という馬が地方競馬から中央競馬に進出して一世を風靡したことは記憶に新しい。
時代が変わり不況真っ只中の近年、全国一経営難に陥っているといわれている高知競馬において負け続けている馬、“ハルウララ”が救世主としてクローズアップされたのである。

まるで今の時代を反映したようなノンフィクションである。
読者はいやおうなしに不況に喘ぐ、自分自身を“ハルウララ”号に投影する。
ハルウララ号は読者にまるで“夢をあきらめないで! 私も頑張ってるから!”と教えてくれる。
ハルウララ号は決して走らされてるのじゃない。
読者の願いを込めて走っているのである。
それだけ読者の願いも切ない。
そう、ほとんどの人がバブルの頃よりも一所懸命に生きているのであるから・・・

本書は昨年末ちょうど99連敗から100連敗に差し掛かる頃に執筆された。
競馬場に取り巻くいろんな人々(調教師・厩務員・ファンの方々・実況アナウンサー・新聞記者・競馬組合の方など)に重松さんが取材をして、持ち前の暖かい眼差しで綴った言葉の数々が心地よく受け入れられる。

正直、ハルウララ号を走らせることに関しては賛否両論あってもおかしくないと思うが、ここではあえて触れたくない。
それよりも私たちが一番忘れてる大事なものを想い起こさせてくれた点は純粋な気持ちで感謝したいと思う。

本文は、重松さんの文章とハルウララ号の写真と約半分づつで構成されている。
見事なマッチングだと思う。

『ハルウララは今日も負けた。だけど、今日も一所懸命に走ったから、明日がある。ハッピーエンドとは、幸せな「結末」だけを意味するものではないんだ。明日は幸せになれるかもしれないという「希望」をたたえた、ひとまずのピリオド。それをぼくはハッピーエンドと呼ぶ。』

重松さんのハルウララ号への声援が、我々読者への声援でもあると信じて本を閉じれたら、“少し未来に希望が見えた”と言えるんじゃないだろうかと思う。
読者にとって何よりの大きな収穫である。

評価8点。    
2004年10冊目 (新作8冊目)


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『誰か』 宮部みゆき 実業之日本社 - 2004年01月28日(水)

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帯に“事件は小さいけれど、悩みは深い。”とある。読者にとっては“宮部さんだから作品評価をするにあたって悩みはきっと深い”のであろう。

久々の現代物で期待して読んだのですが、残念ながら決して読後感のいい作品ではなかった。
やはり、かなりの社会派作品でなければ時代小説の方が、今の彼女には合っているのだろうか?
どうしても“ありきたり”というレベルの作品で落ち着きそうですね本作は・・・

最近読んだ羽田圭介さんの『黒冷水』は男性兄弟の確執を描いていたが、本作は逆バージョンである。
ただ大人の女性同志なので(年齢が高い)、あんまり共感出来なかったのも確かかな。

女性読者が読まれたら宮部さんの『夢にも思わない』と同じようなタイプの教訓を与えられるのかもしれません。

主人公の“逆玉”の三郎が初めは少し情けないような気もしたが、菜穂子と知り合ったいきさつなんかを知るにつれて、意志の強さが感じられた点は評価したく思う。
あと、愛娘の桃子ちゃんが癒してくれる存在だったのは助かった気がした。

ラストあたりの展開はちょっと意外で面白いと言えば面白いのだが、心暖まるものが少なかったような気がする。
でも人間の心情は描き切ってる点も見逃せないかな。

作品全体としては適度なユーモアをまじえた、読みやすい文章は過去のどの宮部作品と比べても負けないであろう。
特に美空ひばりや“金妻”の歌などはとっても印象深い。

事件は小さいが、加害者側の気持ちもまじえて描いてる点はさすがである。



ここからが本音です(笑)
ちょっと姉の聡美が気の毒すぎてスッキリとした気分で本を閉じれなかったのが残念だ。

彼女は裏の主人公とも言えそうで、きっと三郎より彼女の方の印象度の方が強いであろう点は、どうしてもこの作品をいつもの宮部さんの“ハートウォーミング溢れる作風”からかけ離している証拠ともなっている。

でもそれがきっと宮部さんの読者にわかって欲しい“良識”なんでしょう。
そういう点では“女性読者向けの作品”とも言えそうです。
“男性選びは慎重に!”ということでしょうか?(笑)

評価7点。    
2004年冊目 (新作7冊目)


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『看守眼』 横山秀夫 新潮社 - 2004年01月27日(火)

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今や、“懸命に生きる人を描かせたらこの人の右に出る人がいない”と言っても過言じゃない横山さんの新刊は、『真相』とよく似たテイストの作品集となっている。
全6編からなる短編集であるが、過去を追憶しつつ今を懸命に生きる主人公たちのせつない想いが読者を強襲する。
ただディープな横山ファンとしたら作品集としてのコンセプトがやや弱いと感じられるかもしれない。

そこでこのレビューでは他の作品との違いに主眼を置いて論じてみたい。

警察小説としてその頂点を極めた感の強い『第三の時効』などと比べると力強さや圧倒的な読後感においては物足りないかもしれない。
ただ、本作では今までの横山作品には影が薄かった感のある、繊細な目配りを読み取ることが出来た。
読者にとって“哀愁的”なものを少しでも感じとることが出来れば、新たな魅力を得たことになるであろう。

警察が舞台の作品は表題作「看守眼」「午前五時の侵入者」の2編しかない。
それも捜査課における“猛烈な出世争い”は描かれてないのである。
特に後者なんかは“ネットハッカー”を題材としていて、ネット愛好者としては興味深く読めることは請け合い。
横山さんとしては新趣向的な作品だといえるであろう。

あと、印象的なのはもうひとつの本職である“新聞記者”を題材とした「静かな家」
この作品はミステリー的な落ちも決まっており、読み応え十分である。

本作で横山さんが描く主人公は、誰もが日常的に起こり得るわずかな“保身”を守る為に葛藤している。

一般的に逆境に陥って追いつめられた時って、どうしても自分の脆弱さに気づくものだが、各主人公は過去を顧みつつも今を懸命に生き、誠実さで跳ね返しているのである。

“人間って弱いものだ。だけど人間って素晴らしい!”と言うことを読み取れた方は少し遅れた横山さんからの“お年玉”を得た事となるであろう。

横山さんにとって“面白かって当たり前だというプレッシャーは並々ならぬものであろう”と思う。
ただ、横山さんの才能の高さで跳ね返せるはずだ。

あなたも6編の人間ドラマに横山さんの“魂の叫び”を感じ取って下さい。

評価8点。    
2004年冊目 (新作6冊目)


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『接近』 古処誠二 新潮社 - 2004年01月24日(土)

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『ルール』、『分岐点』に引き続き戦争をテーマとしたズシリと心に響く作品を今回も提供してくれている。

今回の舞台は太平洋戦争の末期の米軍上陸後の沖縄。自衛隊出身の著者とはいえ、戦後生まれの古処さんが3作続けて戦争のテーマを書くというのは並々ならぬ意欲と熱き想いが伝わってくる。

主人公は11才の少年弥一。前作『分岐点』に引き続き、日本が敗戦に追い込まれていく過程を少年の目を通すことによって、皇国の勝利を信じつつも見も心もズタズタに陥って行く日本人の過程を悲劇的に綴っている。

疎開せずに軍を助けるために手伝いをしている少年の純真な気持ちの変貌が見事に描かれている。
やはり地上戦を国内で唯一味わった沖縄ならではの舞台作りである。

構成的に今回は“メフィスト賞出身作家”の片鱗も見せている。
冒頭に日系2世のサカノが登場し、読み進めていくうちに誰がスパイであるのかミステリータッチで興味深く読める。
題材から想像される一般的な“読みづらい”というイメージはない。
あと、やはり“日系人”に生まれた故に苦しい使命を負わされた人々の胸の内も理解できた。


現実はもっと厳しかったのだろうと言う事を知らしめてくれただけでこの本を読んだ価値があるのだと思う。
登場人物全員誰も責められない。皆が“火の車”状態であったからだ。

彼らの国への“献身”のおかげで現在の私たちがいることを忘れてはならない。

少しは私たちも“愛国心”を持ちたいものである。

評価8点。    
2004年冊目 (新作5冊目)


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『逃避行』 篠田節子 光文社 - 2004年01月23日(金)

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篠田さんの長編を久々に読んだが、正直“少し枚数が足りなかった”ような気がする。
展開がテンポ良くというより急過ぎるために、彼女の得意なじっくり読ませる部分が欠けてたのかもしれません。

題材的にはペット(特に犬)を飼ってるか否かによって、共感度が全然違うはずです。
私自身、ペットを飼ってないので物語にあんまり入り込めず、どうしても冒頭の事件の被害者の方に終始同情してしまったのが残念だった。

主人公の妙子はずっと専業主婦として結婚以来頑張ってきたのだが、更年期を迎えて手術に踏み切る。
どちらかと言えば、夫や娘たちからも冷たくされている。
事件のあとも保健所に預けた方がいいという夫や娘たち・・・
そう言った彼女の環境自体も、愛犬ゴールデンレトリバーの“ポポ”に特別に愛着を感じ“逃避行”を開始する強いモチーフとなってる点も見逃せない。
やはり本作に描かれてる特有の孤独感や寂寥感は女性読者の方が理解しやすいのかもしれません。

そのあたりは女性週刊誌に連載されたものを単行本化された点でも覗えるのだが、篠田さん自身、女性の“保身”について強く問題提議したくて執筆されたのであろう点に留意して読めた読者はおのずと評価が高くなる作品だと思う。

ただ、後半に出てくるんだけど“老年期における田舎ぐらし”についてや物語全体を支配している“マスコミの事件報道のあり方”に対して問題点を投げかけてくれてる点はいい勉強となった。

ラストのまとめ方なんかはさすがだとは思うが、個人的にはもっとスケールの大きな社会派作品を期待したく思う。

評価7点。    
2004年冊目 (新作4冊目)


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『パレード』 吉田修一 幻冬舎 - 2004年01月21日(水)

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吉田修一の作品にはある種独特の“若者の息づかい”が聞こえる。
もはや現代に生きる“若者の代弁者”と言っても過言じゃない。

同じ読者と距離感の近さを持ち味とする作家の石田衣良ほどお洒落ではないが、内面に潜む本音をあぶり出している。
最新作『東京湾景』で恋愛小説という新境地を開いた吉田さんの出世作とも呼べる作品である本作は、山本周五郎賞を受賞された事で記憶に新しい。
内容的には先の見えない青春真っ只中の5人の男女の同居生活を描いた作品である。
5章から構成されていて、1章ごとに登場人物が主役を演じ、いろんな関係を読者に披露しながら展開して行く。
ただ、単なる爽やかな青春物語じゃない

他のどの吉田作品よりも“本作は奥が深い”のである。
性別問わず5人の男女それぞれに共感出来る点は特筆すべき点である。
やはり読者が読んでいて情景が本当にリアルに目に浮かぶ点は吉田さんの力量の確かさだと言えよう。
特にセリフのビビッドさにはいつもながら舌を巻く。

誰もが持っている孤独感・閉塞感・空虚感を見事にラストで具現化されている。
ただ、このラストは読み手によっては不満かもしれない。
きっと評価が分かれるであろう。
率直な読後感としては“怖い”という言葉を敢えて使いたい。それは“現実の厳しさ”を投げかけてくれてる他ならない。
不満がある方はやはり吉田さんの小説は合わないのかもしれない。

5人の男女それぞれの距離感に共感できたあなたは、もはや吉田作品の“虜”である。

評価8点。    
2004年冊目 (旧作・再読作品2冊目)


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詩 “悲しみ” - 2004年01月20日(火)

悲しみ

いつか君と話してたよね
たとえ一緒の人生を送れなくとも
一緒の時代を生きれたと言う喜びを
せめて精一杯噛みしめたいと

だがとっても悲しい夜が来た
そう、思ってもみなかったことが起こる時
人はこんなに寂しくなるのだろうか

あの日ワイングラスを片手に
語り尽くした日が
まるで走馬灯のように・・・
想い出にするのには
あまりにも早すぎて
あまりにも辛すぎる

どうして人生って
楽しいことが少なく
辛いことが多いのだろうか




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『1985年の奇跡』 五十嵐貴久 双葉社 - 2004年01月18日(日)

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五十嵐さんの作品は初読みだが、ホラーから時代小説まで多ジャンルを書き分けれると言う才能を垣間見れた1冊だと言えそうだ。

本作は阪神タイガースが優勝し(昨年の話じゃありません)、日航機が墜落した1985年に遡る。
ちょうどおニャン子倶楽部がデビューして一時代を築いた年。
今で言えば30歳以上の方だったら誰でも知ってる歌手の名前が次々と出てきて、読者のあの頃を想い起こさせてくれる点は懐かしくもありほろずっぱくもあって本作の内容を心地よく盛り上げてる感じかな。

部員がギリギリの9名で勝ったことがない、無名野球高校に転校生が来て、そこから始まる快進撃を描いたものだが、野球の描写よりもその年代でしか味わえない“青春真っ只中”の会話が面白いのである。
転校してくる沢渡はルックスも良く、野球も超一流なんだが・・・
そのあとは読んでのお楽しみかな(笑)

なにわともあれ、冒頭のおニャン子倶楽部のメンバーの好き嫌いで部員同士が喧嘩をするシーンが爽快だ。
メンバー全員が野球に全然熱中していないと言う点を強調されたと言う点においても巧く導入されている。
あと、特筆すべき点は中川校長の徹底した超管理振りである。
彼の存在がラストにおいて物語をより活性化させてる点は見逃せない。

ジーンとくると言う点では川上健一さんの名作『翼はいつまでも』よりは数段落ちるかもしれないが、心暖まるという点では本作の方が上かも知れない。
“恋愛”と言う観点ではやや弱いが、“友情”という観点ではいつの時代でも通じる部分を描き切ってるような気がした。
いわば“痛快青春小説の決定版”と言えよう。

忘れかけていた青春時代の“夢心地”を味わえただけでもよかったなあと思える作品であります。

評価7点

2004年冊目 (新作3冊目)



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『黒冷水』 羽田圭介 河出書房新社 - 2004年01月12日(月)

本作は史上最年少の17歳で文藝賞を受賞した羽田圭介の受賞作である。
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高校生の兄の留守を見計らって部屋の中をあさる中学生の弟という、内容的には家庭内における男兄弟において思春期にありがちな話なんだが、なかなか説得力もあり最後にミステリー的要素も含まれていて驚かされる面もあって楽しめた。

どちらかと言えば正常な兄・正気と異常な弟・修作とが交互に描かれており、見所はやはり二人の憎悪関係が徐々にヒートアップというかエスカレートして行く点だろうか。
私には男兄弟がいないので、本作のような状況は皆無であり、若干リアリティに欠ける内容であるが男兄弟がいる男性読者が読まれたら、きっと共感出来る部分が多いことだと容易に想像出来た。

どうしても作者が若いという点で、その人生経験の浅さから題材的に限定される為に割引して読んだ点は否めないが、ベテラン作家顔負けの文章の確かさを強く感じた。
筆捌き的には“もはや末恐ろしく”、既に“名人”の域に達していると言っても過言ではないような気がした。

もはや乙一さんもうかうかしていられない。
現段階での最大限の賛辞である。

評価7点。

2004年冊目 (新作2冊目)



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『炎と氷』 新堂冬樹 祥伝社 - 2004年01月10日(土)

とにかく強烈で哀れな小説である。
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本作は“闇金融”を舞台としたアンダーグラウンドの世界をリアルに綴っている。
題名にもなっている“炎”こと世羅(競馬金融経営)と“氷”こと若瀬(風俗嬢専門金融経営)との対象的なふたりが正面を切ってお互い落とし入れる為に知能戦&肉弾戦を展開して行く所は迫力満点。

かつて親友だった二人がある事件をきっかけにお互いを潰し合う過程は読み応え十分なんだが、ちょっと描写が生々しくてキツ過ぎるなあと思うシーンが多々あるのが残念・・・
でも、それがなければ新堂さんの良い点が損なわれるのでしょう(笑)

あと、世羅と若瀬の周りを固める人間のキャラ等は読んでいて面白かったです。
でも著者の作品は当分は読みたくないなあと思ったりしたのは、ちょっと人間の本性をあぶり出しすぎてるのでしょうかね。


読み終えた人には、少なくとも借金の怖さを知る良い指南書となったことには間違いない。
5万円借りて5日間で7万5千円で返済しなくちゃいけないのだから。
年利にしたら怖いですよね・・・
あと、徹底した冷酷無比な回収振りは本当に度肝を抜かれる。
そう言った意味では悲劇に陥る前に読むのもいいかもしれませんね(笑)
とりわけ、若い方が読まれたら良い意味で自制することの大切さを学び取れるでしょう。

総括すると、本作はかなり読み手を選ぶ作品かもしれません。
私的に読後感が“痛快”というよりやはり“やり切れなさ”が残ったというのが正直な印象と言えそうです。

評価6点。

2004年冊目 (新作1冊目)



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第130回直木賞&芥川賞予想 - 2004年01月08日(木)

第130回直木賞&芥川賞の候補作品が発表された。
直木賞候補作はこちら
芥川賞候補作はこちら

今回の直木賞の候補作品は正直言って小ぢんまりした印象が拭えない。
一年前、該当者なしという寂しい結果に終ったが(コラム『出版不況と直木賞』)、候補作自体を比べてみると今回の方がよりスケールが小さくまさしく“本命不在”といってよいのかもしれない。

恥ずかしながら、候補作1作も読んでいないのだが、私の予想は◎馳星周さん ○朱川湊人さん ▲京極夏彦さんである。

どうしても主催の文藝春秋の作品が選ばれやすいんじゃないかなあと思う。朱川さんには失礼ですが名前も知りませんでした(苦笑)。
彼の作品を読んでないので断定した発言は避けたいのだが、他の出版社からの作品だと候補に上がってたかどうかは疑問である。
個人的な意見で申し訳ないが、“幻の直木賞作品”と呼ぶにふさわしい横山秀夫さんの『クライマーズ・ハイ』が候補にあがらなかったのも話題性に乏しくて地味な感じを助長した結果だと言えよう。
「出版界のためにも“該当作品なし”は避けてほしい」、と思っていることを選考委員の方も肝に命じて選考して欲しいと思う。


話題性という点では芥川賞である。
今回は20才前後の若い作家が3人ノミネートされている。誰が取っても史上最年少の受賞らしい。
ちょうど一年前に今回もノミネートされている島本理生さんが候補作に上がった点も記憶に新しいが、面白いことに受賞された作品に勝るとも劣らない売れ行きを示した点である。

ただ、私の予想は◎中村航である。
というのも、ここ5回連続「文學界」に掲載された作品が受賞してるのである。
心情的には島本さんに取らせてあげたい気もするがはたしてどうなるでしょうか。

業界低迷を打破する意味合いにおいては、今回の芥川賞の候補作が業界活性化への“起爆剤”となることを心から希望する。

私自身も“純文学を読んでみよう”という気にさせられたことは嬉しい限りである。


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『流星ワゴン』(再読) 重松清 講談社 - 2004年01月03日(土)

約2年ぶりに再読してみた。
親子愛をテーマとした重松さんの代表作と言える作品だ。
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もはやリストラ・不倫・受験等、現代社会に避けて通れない普遍的な題材を書かせたらこの人の右に出る人はいない。
誰もが悩みながら生きて行ってる姿を重松さんは誰よりも把握している。

本作の魅力はズバリ“勇気を与えられる読後感”と“究極の親子愛に接する感動”である。

まず前者から述べたいが、上記を達成する為に重松さんは他の重松作品にはみられない荒唐無稽な設定を用意している。

なんと、リアルな描写がお得意の重松さんの小説にSFファンタジー的要素がふんだんに盛り込まれているのである。
しかしながら読者に夢を持たせてくれそうなファンタジーと思いきや、とんでもない。
重松さんは読者に容赦はしない。
ただ、わずかだけど救い手をさしのべてくれる。
読者はその救いの手に酔いしれる。
本作において永田さんがオデッセイでエスコートしてくれる橋本親子をいいお手本としたのが印象的だ。
読者は現実世界に戻った“少し勇気を与えられた”永田さんに声援を送って本を閉じる。
きっと読者は永田さんよりも大きな勇気を与えられて日常生活に戻って行くのだろう。


次は親子愛について述べたい。
本作の設定は主人公の永田さんが37歳。息子の広樹は12歳。永田さんの親父のチュウさんは63歳(作中では37歳だが)。

本作において重松さんはチュウさんに“理想の父親像”を見出している。
何回も繰り返し読む事によって、読者の成長を覗い知れることが出来る点が重松作品を読む特徴であるが、私も2回目にあたり、初回よりチュウさんの気持ちを深く理解出来たような気がする。
初回に読んだ時は橋本親子の親子愛(この二人血が繋がってないが血が繋がってる親子以上に愛情深いのである)がとっても印象的だったのだが、今回はカズオとチュウさんとの関係が心に残った。
重松さんはカズオとチュウさんの親子愛を“朋輩”という言葉を使って表現している。
3回目に読む時は今回以上に二人の“朋輩”振りを楽しめそうな気がした。

『幼い頃の僕が、そこにいる。父に肩車されているときの僕は、おとなになったいまの僕よりも、ずっと背が高かった。いまの僕には見えないものも見えていたのかもしれない。』


ちょっと挫折感を味わった時や、やるせなさを感じた時に読むといいのでしょうね。
正直、“このレビューを読むより作品を読んでくれ”と声を大にして叫びたい。
重松さんのファンには重松さんの小説と言う強い味方がいると強く認識した1冊です。

評価9点。オススメ作品。    
2004年冊目 (旧作・再読作品1冊目)


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“勇気” - 2004年01月01日(木)

勇気

君の笑顔は
いつのまにか俺に
勇気を与えてくれた
そう君が苦しんでいる時
そっと手をさしのべてあげれる
そんな勇気を
さあ今度は
俺が君に勇気を与える番だ
さあ心を開いて・・・




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