トラキチの新着レビュー...トラキチ

 

 

『さみしさの周波数』 乙一 角川スニーカー文庫 - 2002年12月31日(火)

角川スニーカー文庫だから切ない話を期待したのだが、少し肩透かしを食らったという印象は拭えない。

全体的なまとまりという点においては、筆力を以前より高めてるのでしょうが、従来の独自の乙一ワールドが陰を潜めてるような感がした。

全4編からなるが、それぞれの話の着眼点はどれもがいいと思うのですが・・・
しかしながら「手を握る泥棒の物語」は秀逸。(本人もあとがきで語っています)話の内容がユーモアをまじえたミステリー仕立てとなっており、最後にあっといわせてくれてなおかつ読後感もいい。高いセンスを感じ取る事が出来ます。

残り3編はいずれも切ないのだが、どれもがエンディングが物足りないような気がした。
特に最後の「失はれた物語」なんかはいい話なだけに残念・・・

やけに“あとがき”が面白く感じられたのは私だけじゃないはずです。

評価 7点。


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『翼はいつまでも』 川上健一 集英社 - 2002年12月30日(月)

坪田譲治文学賞受賞の本作は、今年重松さんが『流星ワゴン』で1位に選ばれた2001年の本の雑誌社の年間ベスト1に輝いてます。
誰が読んでも良かったと思える本 だと率直に思いました。

舞台は1960年代、ビートルズが売れ出した頃。青森県に住む神山という名の野球を愛する中学生の胸キュンな物語と言ったらいいのでしょうか・・・

第1章は野球部での出来事を中心に、主人公がビートルズの歌を通して勇気を与えられていく姿を瑞々しく描いています。田口・中川両先生のキャラがとっても物語を盛り上げています。

第2章は前章で、少し(?)成長した主人公が、夏休みに十和田湖にひとりでキャンプに出かけ、同級生の女の子に初恋をします。そして別れ・・・

そして終章は30年後の同期会での出来事となってますが、ここでのスピーカーから聞こえてくる斉藤の言葉には胸を打ちました。又、中川先生のボールにまつわる話はこの物語を集約してるような気がします。

簡単に言うと上記のように恋愛(というか初恋)中心に語られてるだけですが、友情・親子愛・家庭環境・別れ・大人(先生)の本音と建前など、現代にも通じるいろんな問題を提起しれくれていて、それぞれを心地よく受け入れることが出来ます。

読者を純真無垢な気持ちにしてくれる恰好の作品と言えるでしょう。
特に、“人と人との強い絆”を強く描いてるなあと感心しました。

未読の方、是非手に取って下さい。きっと中学生時代にタイムスリップして、“何かに一生懸命になる”ことを思い出させてくれるはずです。
心が暖まって本を閉じることが出来るでしょう。私は他の川上さんの作品も無性に読みたくなりました。

最後に一番好きなフレーズを引用します。斉藤多恵の言葉です。
『人を好きになるって最高にすてきなこと。男の人はね、女の人を好きになったら堂々といってほしいな。』


評価9点。 オススメ


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《コラテラルダメージ》 ビデオ - 2002年12月28日(土)

評価7点。 (2001・米・108分)

やはり迫力不足は否めなかった。
往年の人間離れしたスカッーとするアクションシーンはほとんどなく、1対1でもやられるという等身大の役を演じている。時代は変わったものだと痛感。
シュワルツェネッガーがこの役回りだったら他の人の方が良かったのではという気がした。

ロスに住む消防士のゴーディー(シュワ)。ある日、コロンビアのテロリスト“ウルフ”による爆弾テロで最愛の妻と子を亡くす。しかしながらCIAもFBIも犯人を追おうとしない。ゴーディーは生身の身体で単身で立ち向って行くのであった・・・

ストーリー的にはとってもいいと思う。後半、思わぬところで思わぬオチがあって驚かされた。
社会派的な要素も強く、テロ事件で公開が延期されたのもうなずける内容であった。
ちなみにシュワちゃんは一発も銃を撃たなかったような気がします(笑)
娯楽作品としてみたらまあまあの映画かなあというのが正直な感想です。


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《スパイダーマン》 ビデオ - 2002年12月27日(金)

評価8点。(2002・米・121分)

なかなか楽しめる娯楽映画だ。予想よりアクションシーンは少ないが、青春恋愛映画として見ても面白い。主人公が伯父・伯母を想う優しいキャラの為に最後ちょっと切ない気分になった。

どこにでもいる平凡な高校生(トビー・マグワイヤ)がある日、蜘蛛に噛まれることによって超能力を身に付け、スパーダーマンとなって悪を退治していきます。
ニューヨークのビルの谷間を飛んでいくシーンはスピード感もあって爽快ですが、もっとアクションシーンを見たかったような気もしました。

ヒロイン役のキルスティン・ダンストが少し物足りなかったような(FANの方ごめんなさい)気がしましたがストーリー的には満足しました。
ゴブリン役のウィレム・デフォーの熱演も目につきました。

逆さ向きになってスパーダーマンとMJがキスをするシーンが一番印象的です。


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『冬の標』 乙川優三郎 中央公論新社 - 2002年12月26日(木)

評価9点。感想は後日書きます。 オススメ!


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『トワイライト』 重松清 文藝春秋 - 2002年12月25日(水)

重松さんの最新刊です。なんと今年(2003年)は6冊出ました(文庫オリジナル含む)

またまた現代の家族が持つ典型的な問題(ドメスティック・バイオレンスやリストラ)を上手く提起してくれていていつも驚かされます。
今回は日本の時代の流れ(人口減少による小学校の閉鎖等)を子供が大人に成長する変化と上手く照らし合わせて描いてます。

読まれる方の年齢によっても捉え方が違ってくるようにも思えますが、果たして万博等の時代背景を体験していない20歳台前半ぐらいの若者が、この小説を読んで共感を覚える事が出来るであろうかという危惧感も、いささか感じましたがどうでしょうか。
きっと、重松さんの作品を好きな若者は“人生の教科書”みたいな感覚で読んでいるのでしょうね・・・

それぞれの主要登場人物を昔のあだ名(のび太やジャイアン)と現在のギャップによって各人の変貌振りがより際立ってわかるように工夫がなされているが、特にジャイアンこと徹也は重松さんの大人の男性としては最低(といっていいでしょう)のキャラとして描かれています。

ラストにて、ふたたびタイムカプセルに埋める絵に手をつないで2人(名前は読んでのお楽しみという事で・・)が描かれてるシーンは熱くなるというよりもむしろ微笑ましく、読者の気持ちを重松さんが十分に予測してくれたような気がしました。
いつもながら登場人物すべての生き方を肯定してくれてるので安心して読めます。
あと千晶と愛美がとっても可哀想だけど冷静であるように感じ取れたことも付け加えておきたいです。
ただ、全体的に見て『流星ワゴン』みたいにインパクトが強い小説じゃないことも確かです。これは両方読まれた方は、そう思われるケースが多いような気がします。少し歯切れが悪いかなあという印象も少ししました。
どちらかといえば、じわ〜とあとでもう1度読み返したくなるような小説だと思います。

余談ですが、もし10年後、20年後にあけるタイムカプセルがあれば、私は是非重松さんの小説を入れたく思い本を閉じました。でもそれまでに読み返したくなるでしょうね(^O^)

評価 8点


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『ロミオとロミオは永遠に』 恩田陸 早川書房 - 2002年12月21日(土)

評価9点。感想は後日書きます。 オススメ!



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『さんだらぼっち』 宇江佐真理 文藝春秋 - 2002年12月15日(日)

宇江佐真理さんの看板シリーズである、髪結いシリーズの第4弾です。
前回で家を焼かれた深川芸者のお文は、伊三次と一緒に長屋で住み始めます。
始めは上手く長屋暮らしをしていたお文ですが・・・

いつもにも増して情感たっぷりに描いています。今回は伊三次よりお文の方が主役といっていいような内容となってます。
以前は捕物要素と恋愛要素の比率が4:6ぐらいだったのですが、今は2:8ぐらいじゃないかなあと思います。それだけ2人の恋の行方が気になって読まれてる方も多いのでしょう。

全5編からなりますが、最初の「鬼の通る道」から熱くさせられます。
伊三次の上司の同心不破の頑固さがクローズアップされた一編ですが、息子の龍之介には泣かされます。

圧巻は表題作「さんだらぼっち」から「時雨てよ」までの3編です。
子供がテーマとされていて、話の繋げ方が本当に上手いのひと言です。お文の長所短所それぞれが凝縮されていて、彼女が感情を露わにするシーンの連続で読者が一喜一憂すること間違いありません。
途中で起こるある事件により、お文が家を出ることになりますが、そのあと伊三次がお文に対して理解を示していく過程が鮮やかです。いつもよりじれったくない2人の会話が楽しめます。

途中、いなみ(不破の妻)も、おみつ(弥八の妻)もおめでたとなりますが本作ではお文までもが終盤おめでたとなります。しかしなかなか簡単には事は運びません。 
最後の最後におみつの言葉によって熱くさせられます。女性の複雑な気持ちを最高に上手く表現しています。参りました。
寂しい終わり方が、連ドラ絶頂期の毎回続きが気になる終わり方を彷彿させられた気がします。あと何回この楽しみを味わえるのでしょう。もっともっと頑張ってほしいです、宇江佐さん!
次回は伊三次がもっと啖呵を切るシーンが読みたいです。贅沢でしょうか(笑)

評価 9点


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『マドンナ』 奥田英朗 講談社 - 2002年12月14日(土)

部下の女の子に恋したり、息子がダンサーになりたいと言い出したり、同じ年の女性が上司となったり・・・

表紙の女性がとっても印象的です。はじめ連作短編集かなあと思って読み始めましたがそうじゃなかった。5編からなる主人公がいずれも中間管理職(課長クラス)のサラリーマンの物語です。
日本のサラリーマン社会を取り巻く種々の問題をリアルにかつユーモラスに描いていてとっても読みやすい小説に仕上がっている。サクサク読めます。

普段、重松さんの少し重い(というか切ない)小説を読みなれてる私としたら、いい気分転換となった。あとは好みの問題だと思う。テーマはそんなに重くないけど、重松さんよりさりげなく書いてる点は万人受けするかなあとも思った。
個人的には「ダンス」が1番好きで、まるで重松さんの小説を読んでるような気がした。

帯にも書いてますが“オフィス小説”となってて、家庭のことにも関わりながら話の重点を会社内に置いている点はサラリーマンの方に“わかる!わかる!”っていう感じで読んでほしいという奥田さんの趣旨なんでしょうと私は受け取ってます。

もちろん、女性の方でも充分に楽しめる内容となっている。旦那さんの気持ちを共感できる一冊かもしれませんね。特に、主人公の妻となる奥様がすべて頼もしい人物として描かれていて、読んでて爽快かもしれませんね。ご主人の大変さがわかるきっかけとなる作品かもしれませんよ(笑)

5編とも主人公の名前が違うが性格的に似ている。会社と家庭に板ばさみになってる主人公の活躍ぶりを存分と楽しめます。ジーンとくる作品ではありませんがストレス解消となる1冊です。

評価8点


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『涙堂 琴女癸酉日記』 宇江佐真理 講談社 - 2002年12月12日(木)

元同心の妻・琴が、八丁堀を離れ、浮世絵師となった次男賀太郎と一緒に日本橋通油町に住み始めるところからの日々を描く連作短編集。

宇江佐さんの小説の感想を書くのは本当にむずかしい。彼女の描く情感溢れる小説は、感想を読んでもらうよりはまず作品を読んで貰いたい。
この作品は宇江佐さんの作品の中ではほのぼのとしたテイストの作品となっている。
琴が少し平凡(?)なキャラの為に物足りなさも前半感じた感は否めない。
しかしながら、最終章の「涙堂」はやはりせつなくていい余韻を残す終わり方となっている。
元夫の死の真相を探っていく捕物帖的要素と、琴の周りの人々の日々の生活を描く市井小説的な要素が混じった作品であるが、少し前者の要素が弱いような気がした。

個人的には、伊十の最初の登場の仕方からして、ラストは全然想像すら出来ませんでした。琴が伊十を看取るシーンは最もこの物語で印象的です。
あと賀太郎の恋模様も、琴の親心もふまえて上手く描き出してる。
はじめは子供の中で出来の悪いように描かれてる賀太郎が、恋をして成長して行く姿が微笑ましく感じられます。
女性が読まれたらきっと“女性としての愛らしさ溢れる”主人公の琴の行き方に共感できるんじゃないかなあと強く思いました。読後感のいい作品です。

評価8点。


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『はずれくじ』 NHKドラマ感想 - 2002年12月11日(水)

主なキャスト
修一(大杉漣) 淳子(りりぃ) 勇輝(市原隼人)

まず、原作との設定の相違点からですが・・・
☆勇輝が原作では中1でドラマでは中2となっている。
☆修一の年齢が原作では40才となってるがドラマでは50才ぐらいとなっている。

正直言って、原作とは内容的にもかけ離れてる印象が強く残りました。
まず、原作ではかなり修一が昔の父親との出来事などを回想してるシーンが多く見られるのだが、ドラマでは宝くじを買っていたぐらいしか言及しておらず、インパクトが弱くなっている。重松さんの得意パターンである、子供を持つ事によって自分が子供時代の父に対する想いを募らせるシーンがほとんど表現できていない気がする。タイトルの「はずれくじ」も宝くじのはずれと子供(息子)に対するはずれをかけてると思うのですが、どちらも弱いような気がしました。

原作では会社における部下のクレーム対応なんかのシーンも盛り込まれていて、自分が入社したころの時代背景と比べてる場面もあるが、ドラマでは会社の新婚(?)の女性と一緒に飲むシーンに変わっていて少し興ざめしました。

勇輝がつまはじきにされる場面も原作ではコンビニへの使い走りみたいな感じで描かれてますが、ドラマでは女の子に対する思い(というか接近)にて描写されてましたが、これもどうかなあとは思いました。足を折るシーンも少し中途半端というか、重松さんの描きたい事からかけ離れてるような気がしました。

ラストのりりぃがギターを弾き語るシーンは印象には残りましたが・・・


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『イン・ザ・プール』 奥田英朗 文藝春秋 - 2002年12月10日(火)

5編からなる連作短編集です。
読んでいてとっても楽しい小説というのがあるが、まさしくそういう小説だ。本の装丁もキレイ。
まるで戸梶圭太さんの小説を読んでいるような気分にさせられるが、個人的には奥田さんの方がキッチリ書かれているような気がする。

誰も伊良部先生のようになりたくない。しかしとっても魅力的な人物だ。各話の被害妄想に陥ったり、心身に変調をきたした登場人物が、はじめは伊良部先生を馬鹿にしているが、やがて彼を頼りにしていく過程がたっぷり楽しめる作品である。
はじめは変人に見えた伊良部先生だが、知らず知らずの内に、最後には登場人物の方が変人であるということがわかる。そこが奥田マジックだ。
奥田さんはいろんなジャンルの作品を書いていって確実に筆力を高めていっているように思える。とっても現代的な題材の小説を書けると思うし、次はどんな内容の作品だろうかと期待を持てる実力派作家である。

結構、人間の奥に潜む部分を上手くかつさりげなくえぐり出している。帯に“爆笑小説”と書いてるが、そう言った読み方も出来るし、逆に深く考え込んで読むことも可能でいずれにしても読者次第です。
私は前者7割、後者3割で読みました。内容自体は社会派的な要素も含まれてることは付け加えておきたく思う。

逆に本作品は、直木賞にノミネートされた作品でありそれも頷けるが、他の作品で是非受賞して貰いたいとも正直思う。
サラッと気楽に読むのには最適の1冊であると言えそうです。男性だったら看護婦のまゆみちゃんに注射してほしいと思う筈ですよ(笑)
1番印象に残った作品は「フレンズ」です。

評価8点。


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『セッちゃん』 NHKドラマ感想 - 2002年12月09日(月)

主なキャスト 
高木雄介(役所広司) 和美(森下愛子) 加奈子(谷口紗耶香)

原作に忠実な内容だと思う。(読み返しました。)違う点は原作では雄介は会社員という設定だが、ドラマではフィギュアショップ勤務となっている。
あとドラマでは結構、フィギュアショップでの事も詳しく描写されてる(客や仕事場の仲間)。

原作では担任の先生に会いに行くシーンもあるがドラマではなかったような気がする。加奈子も原作では中学生だが、ドラマでは明らかにされてない(?)ような感じだった(高校生かもしれない)あと原作では生徒会長に当選するがドラマではあったかなあ?

身代わり雛をドラマではフィギュア店員の女性が持ってきてくれるが、原作では雄介が民芸品店に立ち寄る設定となっている。
最後に川に流すシーンも原作では車でドライブですがドラマではサイクリングとなっている。

重松さんの代表的な短編といえる本作は、とにかく原作が素晴らしいので内容をわかってる上でドラマを見るのは辛いものがあった。
少しほのぼのと描きすぎてるような気もしたが、映像となれば仕方ないのかなあ?
演技派の役所さんも熱演してるが、もう少しマイナーな役者さんの方がリアリティがあったと思う。
ラストシーンはドラマでも感動的でした。



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『猫と魚、あたしと恋』 柴田よしき イースト・プレス - 2002年12月08日(日)

猫は水が嫌いなのに、どうして魚が好きなんでしょう?
女の子は辛いこと、苦しいこと、めんどくさいことなんかみんな嫌いなはずなのに、なぜ、いつも恋を追いかけているのでしょう?
辛くなく、苦しくなくて、面倒でもない恋なんてどこにも転がっていないって、みんな知っているのに。


まず本の冒頭から引用させていただきました。女性心理を本当に上手く捉えたキャッチコピーだと思います。さすが、プロ!

柴田さんの短編は初めて読みましたが、なかなか気軽に楽しめました(内容は気軽じゃないのだけど・・・)サクサク読めることは確かです。
でも上記のコピーみたいな切ない内容の話ばかりじゃありません。
恋愛にまつわる9編からなるそれぞれ独立した短編集だがミステリーっぽい作品もあります。最後にドンデン返し的な内容の文もあってドキッともさせられます。
いや〜、あらためて女性って怖いなあと実感させられました(笑)。
徐々に崩れていく女性像(主人公はすべて女性)が楽しめちゃいます。少し個々の作品に当たり外れがあるような気もしますが、個人的にはプロットを楽しめる「誰かに似た人」と、爽やかなラストの「化粧」が印象に残りました。

女性を描くことがとっても上手い作家さんなので、特にこの作品なんかは女性向だと強く思います。きっとグサリとくる作品も何編かあるんじゃないかと確信しております。

評価7点。


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『コンビニ・ララバイ』 池永陽 集英社 - 2002年12月07日(土)

1人息子を事故で失い、その後妻に先立たれて落ち込んでる、お人好しで商売気のない堀幹郎が経営する『ミユキマート』という名のコンビニを舞台にして、訳ありの店員やお客さんがそれぞれの人生の悩みを解決して行く連作短編集です。

「本の雑誌」2002年上半期ベスト1に選ばれただけの平均レベルの高い作品だと思う。“人と人との暖かな交流”を描いていてとっても読後感がいい。特に各編それぞれの悩みを持った主人公の立場から描かれてるところが素晴らしい。
ドロドロ(?)の人生を送っている各編の主人公が幹郎によって癒されていくところが心地よく感動的だ。
この本を読んで「人生やり直しがきかないから面白い!」ということを教えてくれたような気がするのは私だけじゃないはずです。
帯の“とっても不器用で、素敵なあなたに”という形容もぴったり。


この作者のいい所は人間の欲望や衝動を読者の納得の行く筋書きで描いてくれている点だと思う。切ないけどやるせない感覚はない。
読み終わった後、“人生を積極的に生きようとする勇気を与えてくれる”1冊です。もう少し早く読めばよかったです(笑)

全7編中ベストは「あわせ鏡」、泣けます。

評価9点。オススメ!


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『神様からひと言』 荻原浩 光文社 - 2002年12月06日(金)

短気で喧嘩っ早い性分が災いして大手広告代理店を辞め、中堅食品メーカーに中途入社した佐倉涼平だが、新しい会社でもトラブルを起こしお客様相談室へ異動させられる・・・

広告制作会社勤務歴のある荻原さんは、今回初読みですが自身の経験をいかんなく発揮した作品といえるでしょう。
著作リストは《こちら》

帯の“会社に人質取られてますか?”という言葉にドキッとした方も多いと思いますが、内容はそんなに深刻なものではありません。現代社会に起こりうる事を軽妙洒脱な文章で綴ってます。
コメディータッチながらもサラリーマンにとっては、結構真剣に読まざるをえない作品ですが、日頃のストレスの解消には恰好の1冊と言えそうです。
なんといってもお客様相談室のメンバーのキャラが素晴らしい。特に、上司のギャンブル(競艇)狂の篠崎さん、いい味出してます。篠崎さんを主人公とした小説も読んでみたい気になりますよ。

登場人物を自分の身の回りの人間に置き換えて読むだけでもストレスの解消となる本作は、現実では出来そうもない事を主人公がやってくれるので、その過程を楽しめるだけでも読む価値があるでしょう。

普段、“忍耐強く勤めてる人”に是非読んで貰いたい作品です。又、カップ麺やギャンブル好きな人、心して読んで下さい(^O^)
本書を読めば会社内における自分の位置づけや立場を再認識できるかも・・・

最後にラストの終わり方もよく、“涼平とリンコの幸せを心から祈って本を閉じた”ことを付け加えておきます。

評価 8点


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『さらば深川』 宇江佐真理 文藝春秋 - 2002年12月05日(木)

評価9点。感想は後日書きます。 オススメ!


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『斬られ権佐』 宇江佐真理 集英社 - 2002年12月03日(火)

評価9点。感想は後日書きます。 オススメ!


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『愛と永遠の青い空』 辻仁成 幻冬舎 - 2002年12月01日(日)

評価8点。感想は後日書きます。



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