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『小さき者へ』 重松清 毎日新聞社 - 2002年10月20日(日)

 ☆「海まで」

年に2回、ひとり暮らしの母親のもとへ帰省する主人公だが、息子2人のうち対照的な性格のカズキとミツル。いつも田舎の母親に好かれているミツルと逆に嫌われてるカズキ。今回も案の定・・・
この話はいろんな問題が凝縮されていて考えさせられます。私(主人公)も母もどちらかといえばカズキの性格に似ているような気がして・・・

カズキがラストに母親をかばうシーンは熱くなりました。

それにしても、じょうろを置いた犯人、どちらだったのでしょう?

 ☆「フイッチのイッチ」

ぼくの学校に転校してきた、トモはみんなから仲間はずれにされたが、気が強くて逆境に負けない性格であった。僕とは家庭環境が似ていてうまが合った・・・

なんといっても運動会での両親の面会シーンはハラハラします。

子供の気持ちと親の現実、読んでいて切なくなりました。

あと、トモが紅白帽の件でいじめられてる時に僕が助ける場面がとっても印象的です。こんなイジメ嫌ですねえ。

 ☆「「小さき者へ」

いじめ・暴力で悩む中2の子供を持つ親の苦悩を父親の視点から綴った秀作です。

子供に対する手紙形式で書かれており、自分の同年代の頃を上手く回想しており、親としての気持ちを赤裸々に綴っています。

ビートルズの赤盤・青盤私も聞きました。
はたして子供に通じるのでしょうか?切ない作品です。
重松さん得意のいじめ・リストラの題材を満喫できます。

 ☆「「団旗はためく下に」

重松さんの小説では珍しい、女子高生が主人公となっている。

応援団出身の父親との確執が描かれており、主人公が学校をやめたいのをいかに対処していくかがポイントとなってきます。
親子の愛情が最後のあたりで滲み出てきます。なんという優しいお父さんなんでしょうか・・・

 ☆「「青あざのトナカイ」

脱サラに失敗した、主人公の再生の物語だが、あとで入る“ケーキ屋”の家族の描写がとっても切実で訴えかけられる。

主人公の妻の言動にはとっても共感できました。頑張って立ち直ってもらいたいものです。

 ☆「「三月行進曲」

男の子のいない主人公が、野球チームの監督となって、教え子を甲子園に連れて行く物語なんだが、その過程が子供たちの友情や親の愛情を強く実感出来ます。

子供心、親心、主人公のひた向きな気持ち、いずれも読者に伝わってきてとっても感動的なラストとなってます。

全体的には、『日曜日の夕刊』より内容が濃くてそれぞれ感動的なものとなってるような気がします。1編1編が丹念に改稿されてる印象が強く、どれもが甲乙つけ難い内容だというのは褒め過ぎでしょうか。

読んだあとに“心が豊かになる”本といえそうです。

あえてベスト3を選べば「海まで」、「小さき者へ」、「三月行進曲」かな・・・

評価9点。オススメ


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