台風 - 2009年10月08日(木) 昔、いつだったか。 ある町のランドマーク的なホテルの高層階に滞在したときのこと。 窓の外には、なだらかな平野がどこまでも続き その広さ分だけ 光がちりばめてた。 縦横にのびる道路は、光の道筋をつくり 規則的な羅列となって 街を形作っていた。 その景色が、なんだかとても愛しくて切なくて 悲しい気持ちになったことを 今でも覚えている。 台風一過。 強い勢力の台風は、私のすむこの街を真夜中に通り過ぎて行ったのだけど 雨が止み、ただただ恐ろしいほどの強い風だけが 吹いていた夜半には 都会の大気の塵や汚れや 絡み付くような湿り気さえ 吹きやって 空には 渦巻くような雲と 澄んだ空気だけが残っていた。 私は今、この街の 地上からとても離れた場所に住み始めた。 その窓から見える光を見ると、ふと、あの時の風景を思い出す。 ここに住み始めて 一番幸せに思ったのは あの日 どんなに掴みたくても 掴めなかった景色を 私は 今 自分のものに してしまえたこと。 大風の吹く この街の灯りは いつもよりも細かく 鋭く 闇に突き刺さっていた。 ...
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