さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年12月20日(土) にゃん氏物語 葵06

光にゃん氏訳 源氏物語 葵06

今日も車が隙間なく出ていた 馬場殿の付近で見たいが場所がない
上達部たちがこの辺は多くて面倒なところだな と源氏は言って
車を移動することもなく止めることなく ためらっていると
それなりの女車で派手に袖口をこぼれ出し扇を差し出した
源氏の共人を招き呼ぶ者がいる
ここに止めませんか こちらの場所を譲りましょう そう挨拶した
どんな風流女のすることだろう そう思いながら その場所は実際
よい場所であったから 源氏は車を並べて止めた

どうやって こんなよい場所を取れたのか羨ましく思います
源氏が言うと 品のいい扇の端を折って それに書いてよこす

はかなしや人のかざせるあふひ故神のしるしの今日を待ちける
むなしいです他の人と同車しているとは 神のご利益のある今日の
出会いを待っていましたのに 葵を飾る神域のような所ですもの

源氏は筆跡が源典侍のものだと思い出す
どこまで若く風流ぶるのだろうと憎らしく思い 源氏は皮肉に

かざしける心ぞ仇に思ほゆる八十氏人になべてあふひを
風流ぶって飾り言葉のあなたの心こそ当てにならなくて儚いです
多くの氏族の人 全て誰でも出会うのですから

そう書くと 恥ずかしい思いをさせられた女から歌が来た

くやしくも飾しけるかな名のみして人だのめなる草葉ばかりを
残念です 葵に出会うのを当てにしていたのに
人を当てにさせておいて 私は草葉にすぎないのでしょうか

今日は源氏が女性と同車している
御簾さえ上げないのを妬ましく思う人が多い
先日の御禊の日 源氏は様子が端麗で立派だったのに
今日はくつろいでくだけた様子である 誰だろうか
一緒に並んで乗っている人は並々の女でないだろうと皆想像する

源典侍なら歌争いに名乗られても問題にならないだろうと思うと
源氏は物足りなく感じるが やはり源氏の愛人が同車していると
自然と遠慮して 返事や冗談を言い出せない


2003年12月17日(水) にゃん氏物語 葵05

光にゃん氏訳 源氏物語 葵05

翌日の加茂祭りの日に左大臣家の人たちは見物に出ない
源氏に御禊の日の車の場所争いを全て詳しく報告した者がいた
御息所を気の毒に思うし 葵夫人を情けないと思う
重々しい貴婦人としての資格を持つ方が 何事にも情愛に欠けて
無愛想な強い性格から 自分自身はそれほど憎いと思ってなかったが
愛情の目で他を見る事を知らない女主人の性格にあわせて
付き添う下々のものが御息所を侮辱したのだろう

見識のある奥ゆかしく上品な貴女である御息所はどんなに嫌な思いを
させられただろう そう気の毒に思い すぐにお見舞いに訪問するが
斎宮がまだ元の邸にいるからと神事の遠慮を口実に気安く会わない
源氏はもっともな事だと思うが自分自身までも恨めしくも思う
今の御息所の気持ちは分かるが どうしてお互いよそよそしくして
素直な心を伝えられないのだろうと嘆息する

祭りの日に源氏は左大臣家に行かずに二条の院にいた
そして祭見物に街に出る気になっていた
西の対に行き 惟光に車の用意を命じてある
女房たちも出かけますか と言い 美しく装う姫君を笑顔で見てる
あなたは どうぞいらっしゃい 私と一緒に見物しましょうね
いつもより美しく見えた髪をかき撫でて
髪先を長い間 切り揃えなかったね 今日はお日柄が良いだろう
源氏はこう言い 陰陽師を呼んでよい時間を調べさせている間
女房たちから先に出発するとよい と言った

源氏は童女たちの 綺麗な装いを見る
少女らしくかわいく切り揃えてある
髪の裾が紋織の表の派手な袴にかかっている様子は目を惹く

女王さん あなたの髪は私が切ろう と源氏は言ったものの
とてもたくさんあるのだね 大人になったらどれほど長くなるだろう
と切るのに困っていた
長い髪の人でも前髪は少し短めなのだが揃いすぎも風情が無い
こんなことを言いながら源氏の仕事は終わり 「千尋」と
髪そぎの祝い言葉を言う 少納言は勿体ないお言葉に感激した

はかりなき千尋の底の海松房の生ひ行く末はわれのみぞ見ん
測りようも無いきわめて長い海底の海藻の房のように
伸びて行く将来は 私だけが見守りましょう

源氏がこう言うと姫君は

千尋ともいかでか知らん定めなく満ち干る潮ののどけからぬに
きわめて深い愛情を誓われてもどうやって分かるだろうか
安定なく満ち干く潮のように 落ち着く事のない貴方ですもの

そう紙に書いていた
慣れた貴女らしくしても初々しく美しい人に源氏は満足に思う


2003年12月16日(火) にゃん氏物語 葵04

光にゃん氏訳 源氏物語 葵04

そんなふうに思って涙がこぼれる 同車する女房たちに見られるのも
恥ずかしいが いつもより一層綺麗な源氏の馬上姿を見なかったらと
そう思う心もあったのである
行列に参加の人々は身分相応に美しく着飾って高官は高官らしく
格別なものがあるが 源氏に比べると誰もが圧倒された

大将の臨時の随身は殿上にも勤める近衛の尉がするのは稀であり
特別の行幸などだけにあることであるが
今日は蔵人を兼ねる右近衛の尉が源氏に従う
その他の随身も容姿が良い者ばかり 源氏が世間から大事に扱われて
いるのが分かる この人になびかぬ草木もないほどであった

壷装束などという髪の上から上着をつけた身分の高い女房たちや
尼さんなども群集の中で倒れ掛かるようにしながら見物している
いつもなら世捨て人がどうしてとみっともなく思われるのだが
今日は仕方が無い事だ 源氏を見ようとしているのだから

髪を背中に入れ着物をふくらませた身分の低い下女たちが手を合わせ
額に当てながら源氏を拝み仰ぎ見る
容姿の悪い下男たちも自分の顔を考えずに喜び嬉しそうな顔でいる
源氏の関心も惹かないレベルの地方官の娘も精一杯飾り立てた車で
きどったように見物している
こんないろいろな見物で一条大路は賑わっている
源氏の情人たちは恋人の素晴らしさを認識して 人数にも入らない
自分の価値に反省し嘆き 思いを募らせられた

式部卿の宮は桟敷で見物していた
本当に眩しいほど綺麗になっていく人である あの美には神が心を
惹かれていく気がする 宮は不吉な予感さえ覚えた
宮の朝顔の姫君は数年来忘れずにお手紙をよこし愛を求めてくる
源氏には誠実さを感じている
普通の男でもこんな深い愛情を持っていれば多少のことがあっても
好意を持つ ましてや これほどの美貌なのにと感激する
けれども結婚のためにそれ以上近づき逢う事を遠慮する
宮の若い女房たちは聞き飽きるまで源氏をほめた


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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