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創作活動家さんに50の質問。 | 2005年05月29日(日)
創作活動家さんに50の質問 [ 配布元 ]

01.お名前をどうぞ。
瑞月です。読みはミツキ。

02.年齢はいくつですか?
あと少しで飲酒出来ます。

03.血液型は?
献血好きなB型です。

04.出身地は?
生まれたのは彩の国。育ったのはいちごの国。どちらにしろ東の人間です。

05.身長は?
どうあがいてもぎりぎり160cmに届かないのが悔やまれます。

06.差し支えなければ、体重も…
察して下さい。

07.視力は?
眼鏡がないと生活が出来ません。

08.右利きですか?左利きですか?
時計のベルトを右腕に付けられない左利きです。

09.自分を一言で表すと?
わがまま。

10.人からどんな人だと言われますか?
どうやらツッコミ役あたりに認識されているようです。

11.牛乳は好きですか?
ココアにしてよく飲みます。

12.靴はきちんと並べる方ですか?
外では並べますが自宅の玄関ではいい加減。

13.今一番のお気に入りは何ですか?
この前買った髪留め。

14.100人で鬼ごっこをしたら、何番目に捕まりそうですか?
2番目。とろいです。

15.どんな帽子が好きですか?
自分に似合う帽子(切実)。

16.何色が好きですか?
目に痛い原色以外はどれも好きです。

17.戦争ってどう思います?
絶滅希望。

18.一番好きな国は?
日本。何だかんだと問題はありますが母国だし。

19.キレイなお姉さんとかっこいいお兄さん。どちらが好きですか?
どちらも選べないのでどちらも下さい。

20.ピアスはしていますか?
怖くて無理です。

21.自分にとって安心出来る人は?
でかいねこのぬいぐるみ(ていうかひとじゃない)。

22.自分にとって油断の出来ない人は?
見知らぬひと。

23.好みのタイプは?
2次元ならいっぱいありますが3次元の自分の好みは把握しかねています。

24.肩こってませんか?
凝ってます。

25.質問を半分終えた感想は?
結構ぶっちゃけました。

26.まだまだ行きますよ。いいですか?
何処へ?

27.好きな音楽は?
クラシックもポップスもゲームミュージックも同人音楽もイケる口です(大音量ヘビメタロックはちょっと勘弁して下さい)。

28.道を歩いていたら、いきなり怒鳴られてしまいました。どうする?
逃げます。

29.将来は何をしていそう?
何とか職を見つけられているといいなァと思います。

30.明日はどっち?
あっちに。

31.寝る時はどんな格好ですか?
今の季節から秋までは甚平とか夏用パジャマ。冬場はパジャマに半纏。

32.犬派?猫派?ネズミ派?
猫派です。

33.明日は晴れますかね?
夕日が綺麗なら晴れそうな気分がしませんか。

34.義務って何ですか?
責任。

35.あなたにとって今って何?
無駄に出来ないのについ無駄にしてしまうもの。

36.大人と子供の境界線ってどこ?
大人になりたいと思ううちは子供。

37.どんな匂いが好き?
非人工的な匂い。樹とか雨とか石鹸とか紅茶の匂い。美味しい料理の匂い。

38.人にやられて一番嫌な事って?
又貸しと意図的な無視。

39.脇は弱いですか?
足の裏は致命的です。

40.夕べどんな夢を見ましたか?
多分スペクタクルに荒唐無稽な夢。

41.人生って何色?
夢色。

42.山と海、どっちが好きですか?
山。地面があることは重要です。

43.神様っている?
日本には八百万いらっしゃいますよ。

44.今、一番欲しい物は?
時間と意欲と金(俗物的ですいません)。

45.今、何問目の質問か分かります?
何処から数えてですか?

46.後もう少しです。もし自伝の本を出すとしたらどんなタイトルをつけますか?
のらくら人生。

47.自分の生きて来た道は波瀾万丈でしたか?
平凡です。しあわせです。

48.今までで一番苦しかった事は?
謎の腹痛に襲われたとき。意味不明に痛かった。

49.一番幸せだと感じられる瞬間は?
ふとしたとき。

50.それでは、最後の質問です。その幸せな瞬間に思わず出てしまう言葉をどうぞ。
しあわせだなぁ。
一幕。 | 2005年05月28日(土)
「種族が違うって哀しいわね」
つまらなさそうに呟かれたその一言には苦笑が返ってきた。
猫のように擦り寄ってきた彼女を抱き留めて彼は囁く。
「きみはそれでも生きていけるだろう?」
「後を追うことはしないから安心して頂戴」
「うん、そうだね。きみはそういうひとだ。――でも僕は、縛られ続けているきみは見たくないね」
腕の中の身体が一瞬強張る。
僅かに震えた睫毛を上げて、彼女は見せかけだけは余裕に満ちた微笑を浮かべた。多分彼には見抜かれているだろう。虚勢は彼女の意地だった。
「あなたが死んだら、もうあたしを見るなんて無理でしょう」
「そうかな?」
「そうよ」
人間など死んだらそれまでだ。彼女は死後の世界も生まれ変わりも信じない。
「でも当たっているでしょう?」
「しらないわよ、そんなの。もしかしたらあなたが死んだ翌日に違う誰かに一目惚れしてるかも」
彼はその一言に満足そうに微笑んだ。
「それなら安心だ」
「……。ちょっと」
思わず襟元を引っ掴む。
軽く咳き込んだ彼を揺さぶって、彼女はきっとその目を睨みつけた。
凪いだ海に似た穏やかな双眸が彼女を見下ろす。途端に気勢をそがれて彼女は手を放した。
「ねえ、あたしここまで本気になったのあなたが初めてなのよ? それなのにそれって酷くない?」
「何処が?」
彼は不思議そうに瞬いた。
再び襟首を掴んで揺すりたくなる衝動をこらえて、彼女はそっと彼を見上げる。
「あたしのこと好きじゃないの?」
「好きだよ」
「なのに死んだ次の日に新しい恋人作ってるかも、って言われて何にも思わないっていうかむしろ安心するわけ?」
やきもちを焼くのは自分ばかりだ。
しばらくの沈黙のあと、ことんと彼女の頭に自分の頬を落として、彼は呟いた。
「だってぼくにはどうしようもないからね。きみが泣いているより他の男と幸せになっていてくれた方がずっとましだ」
しん、と痛いほどの沈黙がその場に満ちた。

******

異種族恋愛。
午睡。 | 2005年05月19日(木)
「リリアナ、余はどうすれば良い」
彼女の膝にもたれかかって、男は震える声で呟いた。
櫛のよく通る黒髪を梳きながら彼女は微笑する。
それは母のようであり姉妹のようであり妻のようであり。
惑う男を冷静に見下ろして、彼女は愛しさに目を伏せた。

なんて弱いひと。

「思うままに、陛下」
貴方が誰を想おうと何をしようと。
「最後までお供致します。……私は貴方の味方ですから」
その言葉に、彼は緩慢に顔を上げる。
道に迷った子供のように不安に揺れる目に口付けをひとつ。
肩の力を抜いて、彼は降ってくる唇に身を任せる。


「リリィ」
不意に彼女の愛称が口を突いて出た。
「何でしょう、陛下?」
慈愛に満ちた笑みは何よりも彼を安堵させるが、その瞳は底知れぬ闇の中へと突き落とされるような不気味な光も湛えている。
ゆるりと寝台の上に流れる金髪に指を絡めては離し、彼は溜息を付いた。
「……何でもない」
くすくすと空気のような笑い声が落ちてくる。
疲れたようだとごまかすように零すと、お眠りなさいませ、と心地良く耳に響く声が彼を包んだ。

「お傍におりますわ」
だから何処にも行かないで下さいませね。

それは精神に絡み付き食い込む茨のように。
きりきりと締め付けられるような気がするのは罪悪感を感じている証拠だろうか。
「それは余の台詞だよ、リリィ」
「……いいえ、私の台詞です。私は何処にも参りませんわ」
気怠い時間は眠気を誘う。
柔らかな膝と掌の感触が一層それを助長して、彼は目を閉じた。

******

……えぇと、らぶなのかこれは(激しく疑問)。
雑談に終始。 | 2005年05月14日(土)
ひとしきりアルバンに攻撃を仕掛けことごとくかわされた暮羽は、しばらく物凄く不機嫌そうだったが、くるりとセヴランに向き直った。
「流行りのスカートも可愛かったんだけどねー、色々動くこと考えるとあんまり向いてないっぽかったからさ。あんまり綺麗でひらひらした服もどうかと思ったら結局こんな風になっちゃったわ。もういっそ制服のままでいいかとも思ったんだけどさぁ。とりあえずそれは魔王からお姉ちゃんを取り戻すときの一張羅にしとくわ」
だだだだだ、と口を挟ませない勢いでまくし立てる。どうやら不満をおしゃべりで解消することにしたらしい。
厚手の藍色のワンピースをベルトで止め、すとんとそのまま流れ落ちるスカートの下にズボンを穿いた彼女はまぁこの世界の住人に見えなくもなかった。多分父親が狩人か何かの田舎の娘ならこんな格好だろう。
「茶色の目はともかく、黒い髪はこの国では割と珍しいんですが……南の方には多いと聞きますし、突飛な行動しなければ合格でしょう」
お墨付きを頂いた彼女はにっこり笑う。
ぱちぱち瞬いたふたりの騎士は、口元に手を当てて何か考え込むセヴランと、「嬢さんはかーいいねぇ」と微笑ましげな笑みを浮かべて頭を撫でるアルバンというそれぞれの反応を返した。暮羽は即座にべしりとごつい手を叩き落とす。
「それで、いつ出発するの?」
「神官たちが必死の形相で出立に善き日を占っているのでしばらくお待ち下さい。そうだな……早くて明後日くらいでしょうか」
「……ちょっと遅くなぁい?」
「きちんと準備をしないと途中で更に時間を食いますよ」
そっか、と彼女は素直に頷く。
「じゃ、明日はこの世界の地理と風習を頭に叩き込むことにするわ。幸い言葉は通じてるっぽいからイイわよね。字は多分読めないだろうけど。ありがとう神さま、便利機能付けてくれて……!」
これが普通に外国を訪れたときと同じようにさっぱり違う言語だった日には姉を助けに行くのに数年はかかっていただろうと思う。

「……なんか嬢さん、独りでばたばた計画組み立ててねェか?」
あれしなくちゃ、これしよう、とぶつぶつ独り言を呟く救世主の姿を呆れたように眺めやりながらアルバンが友人に問う。彼も困惑げに頷いた。
「どうも物凄い現実的な方のようで。伝説では数日はごねまくった過去の救世主もいるらしいから、それを考えると話が早く進んで良かったのかそれとも振り回されてどっこいどっこいなのか、判断に苦しむな」
「そりゃいきなり別の世界じゃなあ。俺だったら元の世界に即刻帰せとそこの人間脅すぜ」
「私もだ。冗談じゃない」
ふたりして暮羽を見遣る。

「どうせあの親父たちじゃきっと一週間くらいかかるわよね。うん、だったらその間に誰かに重要な単語の幾つかは教えてもらお。英語に近い言語だとラクなんだけどなぁ。あと荷造りよね……あ、ねぇ優男」
何故だか呼び方が戻っている。
がっくりと項垂れた金髪の青年の向こうで熊がまたげらげらと笑い転げた。
「……セヴランですよ。なんですかもう……」
「私ひとりで行くわけじゃないんでしょ?」
「そうですよ。あなたひとりを放っておくわけにもいかないじゃないですか」
色んな意味でな、と笑い声に混じってアルバンの囁きがセヴランの耳に届く。
なのでとりあえず足を踏んでおいた。鉄が仕込んであるから多分普通のものよりも痛いだろう。
「誰が一緒なの?」
「とりあえず私は確定です。あとはアル――」
「俺新婚だから」
「理由にならん」
暮羽に続きを話そうと顔を向けたセヴランだが、視線の先に彼女はいなかった。
あれ、と思うと同時に隣できゃあ、と歓声が上がる。
「うっそアンタ奥さんいるのっ!?」
「おーよ美人だぜー?」
「うわー、アルバンみたいな男でも結婚できるんだ、意外」
む、と眉にしわが寄せられる。
「何気に失礼だなお前さん」
「うんごめん失言ね。でもさぁ、女の子に引かれない?」
「んにゃ、そりゃもうよりどりみどごふぁッ」
後頭部にセヴランの手刀が見事に命中し、アルバンが頭を抱えてうずくまる。
「話がそれすぎだ」
「……。アンタも意外と乱暴だったのね」
「人間いくつもの顔を持っているものですよ。まぁアルバンには国の守備を任せないといけませんので元から連れて行く余裕はないのですが。これでも近衛隊の副隊長ですよ、この男」
「ふーん。凄いのかどうか分かんないからいいわ。じゃ、あたしとアンタってこと?」
「おそらくは。あまり大人数で行っても向こうに気付かれますからね」
「……何か暗殺しに行くみたいね」
「あんなものと正面から一騎打ちしたら私たちは敵いませんから。卑怯と呼ばれようが何だろうが目的を遂げられればいいんですよ」
爽やかな笑顔と共に言い切られ、暮羽は未だに丸くなったままのアルバンの耳元に囁く。
「セヴランってさ、何気に腹黒い?」
「おお、嬢さんもようやっと気付いたな、えらいえらい」
「……何をお話なさってるんです?」
麗しい微笑は相変わらずだが、額に青筋が見える。
暮羽も負けずに可愛らしく小首を傾げて笑って言い返した。
「ひとは見かけと第一印象によらないのね、という話をしただけよ。で、あたし今日何処で寝れば良いの?」
既にとっぷりと夜は更けている。
懐中時計を確認し、彼は溜息を吐いた。いつもなら自分の部屋で日記を書いている時間だ。いつの間に。

******

プロットを切ってすらいない某異世界召喚モノ更に続き。
後半になるにつれ気が抜けているのがばればれですいません(基本的に何も考えていない)(屋台は本当もう読んで下さってる方置いてけぼりにしてしまってすいませんというか……半ば以上イヤほぼ管理人のメモ帳です……)。

どんどんセヴランが黒く、暮羽が素直というか率直というかになってます。おかしい逆の設定のはずだったのに(ちなみに笑い上戸アルバン氏は影も形もいませんでした当初)(しかも何で奥さんがいる設定に)(最近夫婦が個人的ブームです)(何故)。
小話。 | 2005年05月12日(木)
「――はやくお逃げなさい。今ならまだ間に合うわ」
幼い頃からずっと彼女に従っていた侍女はぎゅっと目を瞑って首を振った。
「いやです。私は姫様に最期まで付いております」
「逃げてちょうだい」
ぱちり、と木の弾ける音が耳の底を掠めていく。
侍女はもう一度首を振った。視線は炎を反射して赤く光る床に落とされている。
「……ねえ、お願いよ。わたしはあなたにまで死んで欲しくないの」
「私は姫様に生きて頂きたいのです」
「……しょうがないひとね」
彼女の方が年下であるというのに、呆れたように零された呟きはまるで姉か母親のように響いた。
朱色の艶やかな着物は彼女の夫の血に染まって赤黒く変色してしまっていた。その手は膝に抱いた男の髪を梳き、もう片手には血に染まってなお美しく輝く小さな小刀が。
侍女はその姿をじっと見つめた。

「姫様、貴女のお帰りをお父上がお待ちです」
「そう。でもわたしの夫はこのひとなのよ」
「――姫様」
「ねえ、お願いよ。逃げてちょうだい。あなたまでここに残る必要はないわ」
夢見るような漆黒の瞳は奇妙な熱を孕んで艶めかしく潤む。
長い睫毛が伏せられ、唇が愛しげに彼の頬に寄せられる。
炎の向こう側で死者を抱く彼女の姿はぞっとするほど美しかった。
「……きっと、向こうでならこのひとはやさしいわ」
「姫様」
「わたしね、大好きなのよ。このひとが」
謡うような言葉は、その姿とは裏腹に酷く幼い響きでもって彼女の耳に届いた。
「お館様は」
「敵と呼ぶ男の娘を娶って、家臣たちに酷く責められて、とても疲れていたわ」
炎が激しさを増して彼女たちを取り巻く。
肌が焦げるような熱に眉をしかめながらも、侍女はその場を動かなかった。
彼女の独白は続く。
「戦況も毎日悪くなっていって、わたしなんかを構っている余裕はないでしょうに、ちゃんと顔を見せに来てくれたのよ」
笑ってはくれなかったけれど。
「わたし、お父様のところへ戻るつもりはないわ」
柔らかく彼岸を見つめていた瞳が、鈍く昏く光る。
「このひとを斬ったのはお父様なんでしょう?」
「……一騎打ちになったと、聞いております。この火もおそらくは」
彼女はぱちりと瞬いた。

「――これは、わたしがやったのよ」
「……は?」
呆然とする侍女に、嫣然と彼女は微笑みかける。
「このひとを弔う炎よ。どうせ家臣の殆どは寝返ってしまったのでしょう。忠実だった者は先の戦で全て失ったと、嘆いていたわ」
おかわいそうに、と小さな唇が声なく呟いた。
「姫様」
「城下のお父様の軍は慌てているかしら、燃え尽きるのを待つかしら。それともこのひとの首を取りにやってくるかしら」
「姫様」

「このひとに止めを刺したのはわたし。自害できないほどにこのひとは弱っていたから」
無様な最期だけは晒せないと。
震える声で呟いた彼の首を、彼から貰った小刀でもって望むままに掻き切った。

「あとはすべてわたしにお任せ下さいませ」

ですから、黄泉路の入り口でわたしの到着を待っていて下さいませ、と告げたとき、彼はやっと笑ってくれた。
「……」
「このひとの首もわたしの命も、お父様には差し上げないわ」
「姫様、」
呼びかけて次の言葉が見つからずに、侍女はその場に膝を付いた。
「ねえ、早くお逃げなさいな。本当に間に合わなくなってしまうわ」
「……私の夫も、この前の戦で亡くなりました」
この上、姫様を亡くすのは耐えられませぬ。
ぽろりと零れた涙を、姫君はじっと見つめた。
「ねえ、生きている方がしあわせなの?」
「死んで全てが終わりになるよりはずっと、ずっと」
生きて下さいませ、と彼女は叫ぶように呼びかけた。
黒い瞳が心細げな色を乗せて空を彷徨う。
「……でも、やっぱりわたしはこのひとと一緒にいたいの」

ずん、と城が揺れた。
「姫様!」
早くこちらへ、と伸ばした手は眼前に落ちてきた梁に阻まれた。
こちらとあちらを分かつ、猛々しく燃える木の前に、侍女は立ち竦む。
向こう側から彼女を見つめる瞳が、優しく細められた。
「あなたは生きて。そして天寿を全うしたら、わたしに教えてちょうだい」
再び建物が大きく軋む。
次々と落ちてくる梁を避けながら彼女は主人の姿を探す。
「……そのときは、お話申し上げます、から――待っていて下さいませ」

赤い世界に背を向けて、彼女は明け方の空へ向かって駆け出す。


その姿を見送った姫君は、冷たい躯を強く抱いて、きつく目を閉じた。
「夢の中なら、向こうなら、わたしたちは」
笑い合って、幸せで。

「……ささやかな幸せを得て、穏やかに生きていくことはなんてむずかしいのかしら」

ゆるりと身体を起こす。
彼の命を絶った銀色を自分の喉に突き立てる。

「――二度と醒めない夢の中で、お逢いしましょう」
ふたりの聖女。 | 2005年05月09日(月)
「はじめまして」
たおやか、という形容がよく似合う控えめな美貌の持ち主ははにかむように口の端を上げて一礼した。
その隙に神父が隣に立つ剣の聖女の脇を肘でつついた。
「ほら、こういうのを聖女っていうんですよ見習って下さい」
「うっさいわね黙ってなさいよセス。――はじめまして、神剣を預かっているエナヴィアよ」
囁き声に囁きと拳骨を返して、頭を上げたハイデラーデに彼女はにっこりと微笑んだ。
「……えぇと、そちらの方は」
「あぁ。セスよ。ヒラ神父」
「いえ、そうでなくて、頭を抱えていらっしゃるので……頭痛でも?」
「いえ平気です……あぁ、ひとに心配されるなんていつぶりだろう……!」
心配そうに彼の顔を覗き込むハイデラーデの手を取って、セスは感激に目を潤ませる。
すかさず彼の後頭部に再び手刀が打ち込まれた。
「手、離しなさいよ。困ってるでしょ」
「エナさん本当がさつだなぁ……僕此処に残っても良いですかね? っていうかどうか置いて下さいもうヤダこのひと」
ひりひりする頭をさすりながら、まなじりに別の意味で浮かんだ涙を拭ってセスは溜息を付く。
「仲が良さそうでいいですね、大地の御方は」
「コレと仲が良い……?」
鳥肌立つわ、と両腕を抱え込んだエナヴィアをハイデラーデは不思議そうに見やる。
「ちがいましたか?」

「違う」
「違います」

見事に重なった言葉に、彼女たちはお互いを厭そうな目で見て沈黙する。
素晴らしく息の合った否定に、ハイデラーデはころころと笑い声を上げた。
「ほら、よろしいじゃありませんの。私のところなんかもう頑固で厳しくって」
「誰がですか」
「ほら来た」
しかめっ面で彼女の背後に立った護衛に、ハイデラーデは僅かに眉宇をひそめる。
「もう少し愛想良くしたらどうなの?」
「愛想良く見えませんか?」
「見えないわ。さっぱり」
「……。それより、そろそろ室内にお戻りになったらいかがですか」
お茶を用意しておりますので、と彼は硬い声で告げ、返事を聞く前に彼女の背を屋内へ向けて押し出した。
「相変わらずひとの話を聞かないのね。――おふたりとも、中へどうぞ。この教会自慢の水を使ったお茶をご馳走致しますわ」

******

ラブ主従モノと思いつつも自分で書くのとひとさまの面白い話を読むのとではえらく違うなぁと思います。ラブの欠片もないキャラばっかりだ。
ちなみにエナヴィアとセスは厳密には主従ではありません(しかし詰めていくほど女王様と下僕のようになるのは何故だろう……)(しかもセスの方が年上のはずなんですが確か)。
悪友。 | 2005年05月05日(木)
本日の実験も上出来な結果を残して終了し、今日はラッキーディだとばかりに喜びながら器具の片付けをしていたポーリャの耳に、どかばたんと乱暴に扉が開かれる音が届いた瞬間、彼は今日という日がアンラッキーディに塗り変わる予感に溜息を吐いた。
「溜息付くと幸せ逃げるよ?」
「テメェのせいだよハル」
「あっそ。それよりさぁ、今日ウチで夕飯食ってけよていうか食え」
恐らくは家で彼の帰宅を待っている細君とその手料理を思い浮かべているだろう、ハーラルは頬の緩みまくった笑顔でポーリャを手招いている。
「ナンデ」
「ちなみにお前が今夜の食事に誘おうとしているリディちゃんは既に俺が誘ったぞははははは」
「……」
「で、どうする?」
にやにやとチェシャ猫のように笑うハーラルの顔をぶん殴りたい衝動を必死に押さえつけながら、不自然この上ない笑顔でポーリャは是と答えた。
その肩をばんばん叩きながら、何が楽しいのか彼はけらけら笑う。
「あーやっぱ面白いわお前。安心しておけ俺のミルシェの料理は世界一だとも」
「のろけ話は要らないっつの。ほら片付けの邪魔だとっとこ出てけ」
軽く蹴り出された足をひょいと身軽に避けながら、ハーラルは軽く首を傾げた。
「別にいいけど、逃げるなよ?」
あほか、とポーリャは毒づいた。
「リディ人質に取られてんのに逃げるわけないだろ」
「別に人質にしてないよ。ポーリャ来ないんなら行かないって言われたからお前連れて拾いに行かないといけないし」
「……」
「別に嘘ついてないからな? 俺は『誘った』だけだし?」
「……。あーもうハイハイ、テメェの世界一の奥さんの料理ちゃんと食ってやるから片付け済むまでは邪魔すんな!」
ハーラルを廊下に追い出し、ばたん、と勢い良く扉を閉める。

片付けを再開しながらふと窓の方に目をやると、にやにや笑う悪友が窓に張り付くようにして彼の一挙一動を眺めていた。
即、カーテンを閉めたのは言うまでもない。

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ハーラルとポーリャ。
長髪お題で自己主張されまくって名前を付けたヤツらです。何だかんだで良い友人。
written by MitukiHome
since 2002.03.30