小さい頃に好きだったオハナシは、とうの昔に葬り去られていて。
遅過ぎる恋に、今日も泣いている。
「ねぇ」
「うん?」
「もしものもしもで、僕が明日居なくなったら、どう?」
「どう?」
「うん、どう?」
「さぁ」
「さぁ、か」
「うん、さぁ」
しっかと握っていたはずの欠片は、いつのまにか消えていて。
探すフリをする手は、動いちゃあいない。
「久しぶり」
「うん」
「いい天気だね」
「うん」
「どう?」
「どう?」
「うん、どう?」
「悪くはないのかも」
「悪くは無いの」
「うん、悪くは、ね」
「そう」
「僕の席はまだあったんだ」
「誰も座ってないけどね」
「そっか」
「そう」
「いい天気だね」
「うん」
前と同じ様に汚い黒板が、傷だらけの机が、窓から吹く風が。
オマエはもう居ないのだと、語る。
小さい頃に好きだったオハナシは、とうの昔に葬り去られていて。
遅過ぎる恋に、今日も泣いている。
人の思い出を刻んだ時を、感じずには居られない。
刻一刻と劣化する、そんなセンチメンタルなオハナシ。
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