馬鹿という職業 |
らもさんの本で、「馬鹿」を仕事にしているコント(だったかな)の話を読んだ。 一人の男が屋根の上で難しい哲学書を読んでいる。 すると、そこに村の女たちが通りがかって、男は慌てて本を隠し、屋根の上で 「わーいわーい」 とか言いながら馬鹿みたいに飛び跳ねたりして、屋根から転げ落ちたりしてしまう。 村の女たちは 「もう、あの人ってば馬鹿なんだからー。」 とか言いながら、クスクス笑って去って行く。 村の人間がいなくなると、彼はため息を吐きながら起き上がり、また屋根に上がって難しい哲学書を読みながら、村人を待つ。 彼の職業は、村に必ず一人はいる「馬鹿」。 馬鹿になって、村人を和ませたり、優越感を持たせたりする、辛いお仕事である。
私は彼のように「本当は頭がいい」訳ではないけれど、ダーリンといると、時々この「馬鹿」の話を思い出す。 私はつい、ダーリンの前でかわいこぶってしまう。 もちろん、ダーリンは私が本当にそんなに可愛いキャラだなんて信じちゃいないだろうけど。 私がそれをやりすぎたのが原因なのか、それとも私はそういう人間であると思い込みたい彼のファンタジー故なのか、時々、ダーリンに「馬鹿」を期待されてるなぁと思う瞬間がある。 例えば、私の鼻は、ダーリンに触られると、何かしらの言葉を発するようにできている、という取り決めが出来てしまっている。 私は時々それを忘れて、ダーリンに鼻を触られても、ボンヤリしたまま彼の意図に気づかなかったりしてしまうのだけど、私が気づくまで、ダーリンはキラキラした目でニコニコしながら私の「馬鹿」を期待して待っている。 そこで私は思い出して叫ぶのだ。できるだけ馬鹿っぽく、できるだけ無意味な言葉を。 すると、彼は満面の笑みを浮かべて、満足げに 「かわいい奴め。」 という。 彼が仕事で疲れて大変な時には、彼の指をそっと自分の鼻に乗せて、自分でその「馬鹿スイッチ」を発動させたりして、彼を和ませる。 彼はいつも、何も持たない、何もできない私に 「リカがそばにいてくれるだけで、俺は癒されるんや。」 という。 馬鹿な私を見ることで、彼が癒されるなら、私はずっと彼のそばにいて、馬鹿のプロフェッショナルになって、この「馬鹿という職業」を全うしたいと思う。
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2005年05月12日(木)
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