恋文
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嵐がやってくる
少し わくわくする
雨の匂いが 風にのってくる
いつも いつものように
時が流れればいいのだけれど
風が凪いで 街のざわめきが 聞こえる
虫の声と競い
空の色に 染まりそうな気がする
風の色も
大理石色の空が 静かに 閉じる
一日を やり過ごす
風で ぱたん と 扉が閉じたように
暗くなる
夜の匂いのなかに 眠くなる
目覚めは きっと遠い
雨の匂いを 辿っている
しぶきに 濡れる
街路の金木犀が 咲き始めていた
そろそろ 彼岸花が咲いているだろうか
曇り空の一日に 風が吹く
ただの静かな夜である
カーテンが風で ふくらんだり しぼんだり
音は静かにはいってくる
たやすく 結ぼれる
けれど 解けない
雨の飛沫の カーテンの 向こう側
なんにもないだろう
雨の音を聴いたり 風の音を聴いたり
虫の声がまじって それもいい
みんな 生姜の香りのように
潔く 清々しく なりなさい
どうしたら この時代から逃れることができるかと 考える日々
世界は ねじれ
赴きたい ところは 陽炎のなかのように ゆがんでゆく
知らない人たちのあいだ 足早に歩いてゆく 夕暮れの街
夜 窓を開けておこう
虫も 人も
同じ音のなか
もう空は薄暗い
生暖かい風が 浸食する
ビルの明かりが 滲む
一日なんて すぐ過ぎる
昨日の いやなことも
もう 終わってる
雲が あちこちに 立ち上がっている
みどりの山
その通りから 公園を抜けて
黄昏は 続いている
灯りの ともり始めた街
雨の音 風の音を 聞いている
眠りへの 誘い
あわいの空
筆で刷いたような雲
日が 滲んで沈んでゆく
蛍光灯を映している 窓を隔てても
聞こえてくる 行き交う車の音
夜が過ぎてゆく
山の稜線に 厚い雲
突如として 暗い夕暮れ
虫の音が 秋になる
雨の匂いの 風に乗って
すてきな 水しぶき
雨になる
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