恋文
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一日じゅう 光にさらされた 草の匂いがする
暗くなるまえ わたしの髪も 枯れ草の匂い
槿の花が 夢のように 咲いている
まだ 繋がって いられる
暗くなって 鳥たちも やがて 眠るだろう
家のなかの あちこちから 時計の音が 聞こえてくる
わたしの 場所
さっきまでの 子供達の声も 聞こえなくなり
風の音も しない
雲が ゆっくり 流れてゆく 空には まだ ひかりが残っている
まっすぐ 道は白く ひかって
まぶしい 空のしたに
夏の花が 揺れている
どこまで 行こうか
ぱたぱた 音を たててみる
風も 聞こえないみたいな 夜
遠いところを 思うと
夢の中と 同じように
昏くて あたたかい
あいだに
覚めている のに
知らない
汗ばんで
どこか 遠くなって
いる
一日のことを 終わってしまう
空から ひかりが失われてゆくと
音も 去ってしまう
ひとしきり 雨が ふってから
ようやく ひかりが もどってきた
凪いだ空 もう 一日が おわる
きみが去った後 ふとんのかたちが 残っているから
そのままに しておこう
こんなに 明るい 空でも
ふと 雲がやってきて 翳る
痛いような ひかりも おだやかに なる
翳っても いい
なんだか 長い時が経ったような 気がする
ほんの わずかづつ 進んでゆく
午後に 川辺に 行ってみる
きのう 雨が降ったのに おだやかな 流れだった
ひとりに かこつけて わびしい という
ひとりで 楽しめば いいだろうに
いつから 楽しめなくなってしまったのか
食事を つくっている ひとりだって
影が 焼きついているように 動かない
まっすぐ 光が やってくる
取り残されているみたいな 気がした
朝には 元気でね と 別れてきたけれど
今度 会うのは ずっと 先のこと
夕日で 向かいの家の壁が 真っ白に ひかって
目に痛い
気づくと ほとほと 雨のおと
もう 今日が 終わる
ぼんやりと ひかりが 消えてゆく
雨は それとは わからないように 降っている
濡れてみてもいい
ゆっくり 歩いてゆこう
突然 暗くなって 真っ白になった
窓に 叩きつけられて しぶきになる
木々が ゆがんでいる
雨音だけしか 聞こえない
さっきまで あんなにたくさんの 人がいたのに
夢のなかのこと
夜明け前 薄暗闇のなかで もう 眠りに 帰れない
変わっていって いつか 終わる
思い悩んでいたことも 終わる
それでも まだ 思い悩むなら
また それも 変わってゆき 終わる
振り返り ふりかえり しながらも
明日を むかえるために
一日を 終える
空が いつか 群青色をしている
眠りから 浮かびあがる
まだ 薄闇の なかで 迷っている
奈落のような 夢のなか
ちいさな 居場所がいい
窓のそと 明るい 雨をみている
みどりが しっとり 濡れている
誰もが 流れてゆく
時間が こぼれ落ちてゆく
日差しが あんまり はっきりとして
物忘れを しているみたい
花びらに ひかりが透ける
灯りのように ひかりが点る
まだ 暮れないうちに
雨が ひんやりと 風を はこんでくる
熱気が 流れ去ったように
わたしのなかの 滞り いっしょに 流れてゆけばいいのに
洩れてくる ひかり全体が くらい青いろになって
もう 眠ろう
風がなくなった
くっきりと映る
たたずむ わたしの影
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