恋文
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2006年10月31日(火) 夢ではないのに

なにも聞こえていなかったのだろうか。
遊具は暮れてゆく空に光りながら回転し。
広場には明かりに照らされた小屋が並んでいる。
情景だけが鮮やかに残り。
音だけが記憶のなかから抜け落ちている。


2006年10月30日(月) 夕暮れ

まだ
暮れては
いない
空のしたに


知らない
街角


2006年10月29日(日) 血なのだろうか

赤いリボンで
結ぶ

からだを
巡るのは

どんなにも
血では
ない

倒れてゆく
ような


2006年10月28日(土) 一瞬

その時だけ
など
ないのだけれど

見つめている


2006年10月27日(金) 夕暮れ

街には
たくさんの人たちが
いるのに

とても
静かだ

わたしの
中だけに
耳をすませる


2006年10月26日(木) 立ちつくす

あともどり
したいと
ふりかえり

そこに
果てもなく

いずれ
まっすぐ
ゆくにも
果てしない


2006年10月25日(水) ガラス窓に

茜色を
うすく
溶かした
みたい

遠くの
丘まで
ずっと


2006年10月24日(火)

草むらに
波がわたる


木々が
おおきくゆれる

ここではない
どこかへ
いってしまう


2006年10月23日(月) 夜明け

風の音なのか
雨の音なのか

いつか
聞いていた
記憶を
よみがえらせ

もういちど
眠りのなかへと
もどってゆく


2006年10月22日(日) 見送る

見送ろう
みんな
いってしまったら

わたしも
去ってゆく

だれも
見送らない


2006年10月21日(土) わたし

そうやねぇ
わたしって
なんなんやろ

なんも
わからんうちに
なんとか
なって
ゆくやろ


2006年10月20日(金) 歩道

歩道の
石の並びを
たどる

ひとつおきに
はずれないように

まちがったら
おわっちゃうよ


2006年10月19日(木)

すこし
こわい夢だった
けれど
まだ
目覚めたく
なかったから
夢のなか
ただよって
いよう


2006年10月18日(水)

群青色の空に
下弦の月が
細くて

風も
沁みてくる
ような


2006年10月17日(火) 渡り廊下

建物と建物を繋ぐ渡り廊下は暖かい。
両側がガラスなので温室のようになっている。
足下は道路で、見下ろすとトラムが走り、車が走り、人が歩いている。
通りに並ぶ建物が見え、教会の塔が見え、遠くには山も見える。
ときに、すこし揺れたりするけれど。
背後の扉が閉まり、前に見える扉に向かって歩く。


2006年10月16日(月) 窓辺にて

まだ みどりの
草のうえにも
落ち葉が 
かさなっている

そとは 
みるく色の
もやの中

スチームのとおる
おとが
指先に 
つたわる


2006年10月15日(日) ふわふわ

ひとりで
おもっているだけで
いい

ただよっている


2006年10月14日(土)

朝から
町は
ぼんやり

ふんわり
過ぎてゆく

なんにも

思わなくても
いいなら

いいな


2006年10月13日(金) じたばた

ひとり
じたばた
している

ものごとは
なるように
なってゆくのに
おかしいの

でも
こころが
ざわざわして
やっぱり

じたばた


2006年10月11日(水) なんにもない

なんにもない
一日で いい

わたしも
からっぽに

なってしまったら
いい


2006年10月10日(火) 夕暮れ

遠ざかってゆく

じっと
見送って
いよう








2006年10月06日(金) 距離

いちばん
いい
距離というものが
あるのだろうが

いちばん
いい
とは どんな
ことだろう

いちばん
近づきたくても

いちばん
遠いかも
しれない


2006年10月05日(木)

それは
遠くにゆく
船ではないのに

そのまま
川を下って
行ってしまいそうに

見送った


2006年10月04日(水)

こわい夢に
なんどでも
ひきこまれる

目を
あけても
くらい


2006年10月03日(火) 一日の終わり

ひとしきり
木々が
さわめいていたのが
いつしか
雨音になっていた

見える限り
灰色だった
空が
夜のなかに
とける


2006年10月02日(月) 道すじ

途切れない
ように
こころに
錘をおろして
さぐる
あなたに
たどりつく
道すじ


2006年10月01日(日) 知ること

あなたを
ずっと
知らなかったのだ

ちいいさな
痛みみたいに
知りあい

なんだか
ずっと
知り合ってたみたい

まだ
もっと

知ることが
ある


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