恋文
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2005年03月31日(木) ひかり

こんな 春の日に
翳る

いつか 雲が 
厚くなる

思いもかけず
冷たくなった 手を
重ねて

遠くなり
きっと また
近づく
ひかり


2005年03月30日(水) かすみ

ここには
なにがあるのだろうか

目に
花の色が
かすんでゆく

そこは
行きたいところかも
しれない


2005年03月29日(火)

いつか 溢れている
春の 色

流れこんでくる
こんなにも 多かった
記憶

いくつもの
春を 過ぎてさえ


2005年03月28日(月) さかな

おさかなに なって
およいでいる
あなたを おもった

ひかりは ゆらゆら
とおい そらから
おちてくる

あなたも ゆらゆら
ひかりのように
ゆれている

わたしも ゆめみる
おさかなの ひとり


2005年03月27日(日) 春の夜

夢うつつで
雨の 音
風の 音
を 聞いている

芽吹いたばかりの
枝が 揺れているね

咲きかけたばかりの
花が うつむいているね

こんなに
つらい 春なのに

きっと 
あしたの 朝

光りが
さしているだろう


2005年03月26日(土)

一回とても
同じではなかった
その春ごとに

風のなかに
花のなかに
木のなかに
光のなかに

また思いを
残す


2005年03月25日(金) 離れる

いつかは
そんなに
近かったのに

離れる

こんな
流れの
真っ只中で

遠くに

いつか また
近づくのか

まだ もっと
遠ざかるのか


2005年03月24日(木) おにぎり

ちいさな
まんまる

まぁるく
にぎって

あなたに
あげる

いっしょに
たべよ

たべたら
ふたりで

どこに
ゆこうかな



2005年03月23日(水) 壊れること

物が 壊れるように
人も 壊れる

欠け
ひび割れ
色褪せる

もとの姿すら
思い出せないように
さえも

わたしたちの
ありようが
壊れるものだから

だからこそ
愛しい


2005年03月22日(火) 語りかけ

あなたが
語りかけてくれるなら
耳をすましています

あなたが
口を閉ざしているなら
わたしが語りかけましょう

語り合うわけではない
たよりない
そんなつながりが
あってもいいのじゃないの


2005年03月18日(金) とどかないこと

伝わる前に
消してしまう

いくつもの
失われた
ことば

いつでも
わたしと
一緒に いる


2005年03月17日(木) きもち

とつぜんに
花は ひらく

この日を
待っていたように

ずっと
秘めていたのね

その
きもち


2005年03月16日(水) 春の風

湿った藁の匂い
空は明るい

まっすぐ
歩けない みたい
やんわりと
風が向ってくる

目が しみるから
しばらく
なにも見えないよ

どこに
歩いて いこうかしら


2005年03月15日(火) 知らないひと

見知らない人の
ひとり

知らない
わたし

いつも
隣で囁いている

あなたは
わたし

わたしは
あなた


2005年03月14日(月)

いつか
春の風が吹いている

仰ぐ空が
ただ 青い

どうして
ここにいるのだろう

ただ
風は ゆくばかり


2005年03月13日(日) 呼びかけ

ふいに
思い出してしまうよ

あの夜の
風の冷たさ

重ねた
肌の温もり


2005年03月12日(土)

遠くから
ずっと
聞こえている
風は
雨を連れてくる

夢の中のように
薄暗闇の
そのなかに
眠っていたい

雨の音を
聴きながら


2005年03月11日(金) 見えない

どこにも
いないなぁ
ふりむいても
見えない
わたし


2005年03月10日(木) まゆ

ぐるぐる
かたまって
わたし
繭みたい

まぁ、いいや
こんなの
まるく
なる

わかんない
そんなの

しらない


2005年03月09日(水)

まだ
花の香りも
運んでこない
風は
湿っていて
少し
春に近づく


2005年03月08日(火) 花の名

その名を聞き
ありありと
よみがえる
香り

その春の
訪れを 待つ
ここでは

その花の
わずかな
白さを
雪に 見る

そうして
あなたのいる
その場所を
おもう


2005年03月07日(月) じたばた

行って
もどって
迷いながら

手探りもすれば
ままよ と走る

まだ
終わらない
また
夜がくる


2005年03月06日(日) わたし

わたしのなかの
わたしは
とても
意地っ張りで
拗ねると
手のつけられない
わがまま

しようのない
わたし
でも
それも
わたし

誰もしらない
そのときに
ごめんね
と いう


2005年03月05日(土)

どうして
わたしなのか
わからないから

わたしは
繭に
なるよ


2005年03月04日(金) かおり

もう
失われそうな
最後のかおり

朝から
わたしと
ともにあって

もう
かすかに
残るだけの

思い出の
ような


2005年03月03日(木) 咳き

忘れない と
言った あなたを
忘れる

あなたが 
わたしを
忘れるように

あ のどに
なにか ひっかかって
涙がでた





2005年03月02日(水) 夕方

ぼんやり 大きな
日がかたむいて

雪を残した
木々が 眠りかける

凍ったままの
道を 歩く

足下で 崩れる
音を聞く





2005年03月01日(火)

朝は 
いつもくるのね

おなじ朝は
ないだろう
けれど

この朝を
受けとめようか


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