『金閣寺』

この日付、金閣寺の舞台を見に大阪梅田まで行く日、というのが予定表の位置づけだったんだけど、今となっては日本国民全員が忘れられない日となってしまいました。
被災された友人もいるので、他人事ではありません。
頑張れとは言えないのでさらりとしてしまいますが、被災された皆様、今回の震災に関った全ての人々(日本人に限らず)、早く穏やかな日常が戻ってきますようにと祈るばかりです。


その金閣寺なんですが。

いやあ・・・・原作読まれた方はご存知かと思いますが(読みきれなかった方も)あれはまあ、舞台にするとなると正直難しくないですか・・・?
三島の作品はどれも映像化や舞台化ってムズいんじゃないかと私は勝手に思っているのだけど。
しかも金閣寺は、全ての象徴となる金閣寺を舞台上どうするのかっていうのがポイントで。
火事のシーンはどうするのかとか。
結論から言うと割りとあっさりしてました。舞台セットは極力簡潔なもので、場面展開により色んなものに見えるよう工夫がされた空間でした。
竹林のシーンとか、非常に上手く作られていた。
最初の、机を組み立てながらどんどん移動していくところも、組み立てなおすのが役者自身なので邪魔にならないんですよね。

個人的には脚本がちょっと・・・アレかなあ・・・
ナレが多いのもいいんだけど、ちょっと勿体無い気もした。
一幕が高岡君で、二幕が大東君だったよね?多分・・・アレには何か意味があるのかな?二人とも良かったですけど。
あと、金閣寺自身を最初溝口が「あんなみすぼらしいただの建物なのか」と唖然とするシーンは金閣寺の写真を小さくポン、とバックにスライドのように映し出すだけなのに、溝口の中で金閣寺が大きな位置を占めていくにしたがって擬人化したのは面白かったです。
ホーメイ?という音楽の歌手の方だそうで、声がすごい。この世のものならぬもの、と言う感じがよく出ていました。

良かったのは、メイン3人ですね。全員素晴らしかった。
無邪気で明るい鶴川はとても可愛く、でも後半かすかに影を帯びてくるところが分かって中々でした。
大東君大きいので、溝口と仲良くしているシーンだとゴウがまるで子ども・・・
高岡君はそんなに身長なくてもちゃんと大人っぽく見えるのですよね、不思議だ。
高岡君のあの、動き・・・歩き方と言うべきか。あれ初見の方でギョッとしない人はいないと思う。それくらいある意味ヤバイ動きでした。
なんだろう、この人直視していいのかみたいな気にさせる動き。
カーテンコールの時も最初はその歩き方で出てくるので、まだ柏木がそこにいるようで不思議な気がしましたよ。

実は疲れが溜まっていた為、11日の夜の回、私数分意識が飛んだ。
2幕中盤くらい。溝口が寺で師匠と話して、お経がずっと聞こえてくるあたり・・・
12日はそんなこともなかったんだけど。

ありきたりではあるんだけど、最後の溝口の台詞を聞いた時に、やっぱり無理してもこの舞台を見に来てよかったな、と思いました。
やっぱり私はゴウの舞台がすきだし舞台のゴウが好きだなあと。
健ファンなんだけど、舞台のゴウの姿にはどんな場面にも何か鬼気迫る感じがあって理屈抜きで惹きつけられます。困ったな、といつも思う。
この人がいるから私はいつまでたってもVから離れられないんじゃないの、とか思ったり・・・・語弊があるな。誰がいなくなっても勿論ダメだし、即答できるほどに健ファンなんですけどね。

その台詞は、放火後に溝口がゆっくり煙草を吸うんですが(ホントに吸ってますね。煙が揺れてるし)1本の煙草を吸いながら溝口が言う「生きようと思った」という台詞。

金閣寺に放火して初めて溝口に芽生えた、自分自身として生きていこうと思う空虚でかすかな、でも自分の中での確かな手応え。

ほんとーーーにさらっと言うだけなんだけど何とも言えない台詞でした。
2011年03月11日(金)

読書記録

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹
寓話的な表現方法で話が展開します。ノイタミナ枠でアニメになったら面白そう。
でもやったとしても大人のアニメですね。
『少女』湊かなえ
湊さんの得意とする「ぞっとする子ども」達の表現を沢山織り込みつつ、結構ピュアな友情も描かれていて「告白」や「贖罪」よりはすらりと読めました。後味は・・・相変わらず良くないけども。
『猫と魚、あたしと恋』柴田よしき
恋愛ものの短編集。
どれもあまりハッピーエンドではないので、この中にあなたはいましたか?と問いかけられても微妙だったり。
『天国旅行』三浦しをん
心中をテーマにした短編集。長さが決まっているのか少々物足りなかったですがすらすら読めました。「遺言」が一番良かったかな。
印象に残ったのは「炎」です。
『森に眠る魚』角田光代
おっかない話でした。本当におっかない・・・本来、子どもができたらもう一度読むべき本かなあと思います。
5人の女性、全員に好感を持てないのがもうすごい(笑)共感すら出来ないのは、私が母親ではないからでしょう。
このお話は音羽幼女殺人事件をモチーフにしているそうで、最初は誰が加害者で誰が被害者になるのかと思いながら読んでましたが、読み進むうちにどの登場人物が加害者でもおかしくないと思うようになりました。
それを日常に置き換えると何とも恐ろしい訳ですが・・・でも女性、とりわけ母親って状況如何でどうしてもこういった精神的葛藤に囚われて苛まれていくんだろうなと思うだけに読んでてしんどいです。
でも読み応えはあります。角田さんは女性心理を描かせると本当に怖いなあと思う作家の一人です。
『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』誉田哲也
とても面白かったし、すごく好きな作品になりました。
早苗も香織も大好きなキャラクターになりました。
〜エイティーンの中盤、早苗がああいう形でリタイアするのは何か「えっ」って感じでしたが、ラストの香織の台詞でもう全てオッケーな気がしました。素敵な作品です。
〜エイティーンのみ、香織と早苗以外のキャラにもスポットが当たっていて、最初は、もっと早苗と香織二人の話が読みたいが故に蛇足な気もしたのですが最終的には良かったと思います。
特に桐谷と吉岡の話は良かった。
今気がつきましたが、脇役が主役になった小話のすべては、そのキャラが18歳の時の話なんですね。18歳という決断の時をそれぞれのキャラの視点からも描いているのだなあ。色々納得。
タイトルの「武士道エイティーン」は伊達じゃないということで。
2011年03月08日(火)

ニッキ / 松

My追加