lucky seventh
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2010年03月28日(日) きみを追いかける影。

「きみが好きだよ。」

涙にぬれながら、それでも私はわらった。


「いま、私のまえにいる きみが すきだ」









彼は泣きながら それでも笑い返して うなづいた。















きみを追いかける影。












記憶を失った。

クラスメートであり、私の愛すべき親友である彼は 記憶を失い
目覚めたときに 何も覚えていなかった。




季節は春。
慣れたように通う道を迷うことなく進む。
窓から入ってくる日差しが暖かい。
ベージュのスプリングコートは病院に入ってすぐに脱いだ。
今日の服装はオフホワイトの生地に紫とピンクのアーガイルのニット、
くすんだピンクのプリーツのスカートは春ものらしく薄地で歩くたびにふわりとゆれる。
胸元には彼が親友だったころにくれた王冠のゴールドのネックレス。
今日も完ぺきだ。
彼の反応を楽しみ思いながら、片手にコート、片手には大輪の白い百合の花を抱え、目の前のドアをあけた。

「やぁ」

私がそう言うと

「やぁ」

彼もそう言って笑った。

彼の病室は花だらけだった。
ガーベラ、フリージア、かすみ草、チューリップ、バラ、
分かるだけでもそれだけあるのに、分からない花もそれ以上あるのだから
どれだけ花が好きなのだと溜息をつきたくなった。
まぁ、それでも分かっていて持ってくる自分も自分だが…。





事故にあったと知らせを聞いて駆けつけたのは半年ほど前のこと。
交通事故に巻き込まれ、昏睡状態で生死の境をさ迷い、
一夜明けて目覚めた彼は すべてを忘れていた。

自分のことも
家族のことも
友人ことも

そして、恋人のことも…。


ナナナ

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