lucky seventh
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2007年02月21日(水) |
雪女 雪幸:ゆきのしあわせ。 |
氷美
おれの 氷美
「コレで満足か!!!!」
「千佳!!」
「コレで満足かって聞いてんだろ!!!!!」
猛然とくってかかる金色の髪の男、 その男の腕をしがみついて止めようとする少年。
ただ、呆然としてるのは黒髪の男。
「さよなら」
おぼろげな輪郭を纏った少女は空気にそっととけた。 目のまえでとけて消えたのだ。 それは確かに、氷美だった。 もうずっと昔に死んだ、氷美だったのだ。
いまさらになって、男はそのことに気がついた。
「雪芽 ?」
呟いた言葉に、金色の髪の男は顔をゆがめて 男に言った。
「いまさらその名で呼ぶのか?いまさら−−-」
なおも連ねようとした言葉、 けれど、黒髪の男にはその声も届いていないようで 呆然と手を握りしめた。
「嘘だ…」
その言葉に、金色の髪の男の思考は弾けた。
バシ
ドサ
ただ、思いのたけをこめて黒髪の男の顔を 金色の髪の男は叩いた。
「お前がそれを言うのか…?」
叩いた手をグッと握りしめ、 呆然と自分を見る黒髪の男に叫んだ。
「お前が 氷美を二回も殺したんだ!!!!! そして…氷美 雪芽も……」
座り込んだまま自分を見上げてくる男に、 金色の髪の男は笑った。
「これで満足か? お前は氷美を手に入れた。 あの日、あの時お前をかばって死んだはずの氷美をもう一度手に入れて そして、雪芽を 殺したんだ…」
「これで満足か??」
そう言って、男の身体は力が抜けたようにくずれ、すわりこみ 今度こそ声を張り上げ 泣いた。
「帰せ!!!帰してくれ!!俺の雪芽を!!!!!」
帰せ 帰せ 金色の髪の男は床を拳で叩きつけながら 泣き叫ぶ。
「雪芽!!雪芽!!!!!」
その隣に少年は寄り添う。 顔を悲しみに染めて、それでも泣くまいと懸命に耐えて…。
呆然と黒髪の男は金色の髪の男 千佳を見つめた。 脳裏に思い浮かぶのは 男がこの世で一番愛していた女に似た面影をもつ少女。 ずっとずっと もうずっと、忘れていた少女のこと。 ぼんやりした頭で考える。 自分は一体何をしていたんだろう。
愛した女が死んで 心を塞いで その時、自分を慰めてくれた少女
「氷美…」
少女のことを自分はそう 呼んだのだ。 すると、少女はふんわりと笑って 頷いた。 あの日、最愛の女が死んで 大切にして少女を殺し、自分はもう一度手に入れた。 都合よく摩り替えた記憶 死んだ女に代わって、死んだ少女は 死んだ女になっていた…。
「氷美…」 あの日、あの時 ひっそりと、少女は自分をころした。
「雪芽…いいのか?」 「 うん。」 「…俺はお前に幸せなってもらいたいんだ。」 「ありがとう 千佳。 だけどわたし、幸せだよ。」 そして少女は、氷美になった。
ふたりで手をつないで走った。
行き先も決めぬまま、
日の明けない夜の中、
どこまでも、遠く、遠くへと
ふたりで手をつないだまま走り続けた。
まるで世界に存在するのは ふたりだけ
毎朝とおる商店街の道は、シャッターにとざされ 人っ子一人いない。
誰も居ない公園は、ふたりだけの物で
はしゃぐふたりを見ているのは お空に浮かぶまんまるお月様だけ
ボーイッシュな女の子が笑うと 大人しそうな女の子ははにかみながら笑い返す。
「みなづき!!」
「なぁに?なつめ」
ナナナ
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