lucky seventh
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憎むな。 お前は憎まなくていいんだ。
あいつはそう言って力なく目を閉じた。 その顔からは生気は消え失せていて、いつもと違っていた。
【君をわすれよう。】
「何いってんだよ?」
声を出す。 震えていて、かっこわるい声。 それを聞いて、目をほんの少し見開いて、(これは驚いた時のあいつの癖だ)あいつは笑った。
「だーから、そのまんな意味だよ」
笑ったまま言った。 あいつの綺麗で大きい猫のような目には、晴れ渡る空が映っている。 ここはビルの屋上。広がる景色。それは一面のあお。 そんな中でなおもぽつりぽつりとあいつは続ける。 力なくコンクリートに横になるその姿は、 それはこの景色とは不釣り合いな、ひどく哀しい現実だった。
「お前はさ、花で言ったら私的にひまわりなんだよな。 だからさ、まっすぐに生きろよ。 、、、、、もし、この先なにがあってもだぜ」
ビシッと指をさしてそう言うあいつの顔色は、悪い。 日に日に衰えていく身体は細く、この暑い日ざしの中で あいつの姿だけが、まるで季節外れの枯れ木のようで、眩暈がした。 あいつは死んじまうんだ。 イヤでもそう考えてしまう。
「ひまわり?おいおい、男にそれはないだろ?」
だから、知らないふりをして笑う。 笑っていれば、笑えれば、まだ幸せだと思えるから。 例え現実が幸せじゃなくとも、笑い続けるてやる。
それは愚かな抵抗。
「いやな顔だぜ、 俺がいなくなったらそんな顔すんじゃねぇぞ」
そして、あいつはそれに気付いてしまったから、 眉間を指差して苦笑いする。 それはまるで、仕方がないな奴だたぜ。と言っているようで、 苦笑いのあいつの顔はとても穏やかだった。 そして、気付いてしまう。 あいつはいずれ消えてしまうと、だから応える笑顔が苦くなる。 あいつとは違う苦さをともなった、苦い笑い。 笑い続ける。
「そんなこと言うな」
顔がゆがんだ。 泣きそうになる。
「冗談でもそんなこと言うな!!」
・人は生まれながらにして死に向かって生きている。・ 始めて会ったビルの屋上であいつは言った。 広がるあおのあおの中で、あいつは何かを発見した子供のように嬉しそうに、 すべてを知りつくした老人のように哀しそうに、あいつは言った。 このまま景色に溶けてしまうんじゃないか。 そんな笑い方をする奴だった。
「冗談じゃないのはお前がいちばんよく知ってるだろ。 目を背けるんじゃねぇ、もうすぐこの命は消えるんだぜ。 それは冗談でもなんでもない事実、 だからさ、辛かったら、、、、、、」
忘れちまえ
「いなくなったことの奴のことなんか、 生きてる奴が引き摺るんモンじゃねぇんだ。 死んだ奴は生きてる奴らに忘れ去られても生きて、いや、死んでいけるから」
だからさ、忘れちまえよ、、、、、
死に向かって生きるあいつは誰よりも、 力強くて、
「だから、お前は忘れて生きろ」
生きているようで、死んでいるような奴だった。 生きながらすべてを簡単にあきらめているような奴だった。 けれど、死に向かいながら生きていた。
あいつのすべてを奪う何かが憎かった。 けれどあいつはそれをも否定して、なおも生きろと言った。 そんな心を持つな。 お前は綺麗なままでいろ。
まっすぐに生きろよ。
だからわすれよう。 あいつの望みを叶えるために、 わすれて、わすれて いまを生き続けよう。
それがあいつにしてやれる唯一のことだった。
ナナナ
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