小学校の校庭で、餅搗き大会が行なわれた。
町内のオッサンの会に所属している僕も搗き手として駆り出された。嫁はPTAの撮影係だかなんだかで、広報誌に載せるため、お父さん達がんばってますよー的な写真に撮らなければいけないらしいのだが、
「私、フリマやるから手が回らない!あなた撮っておいて」
と頼まれた。餅搗き大会と並行してフリマをやりたい人はやってもいい、ということになっていて、何故か息子・タク(9才)が
「ボク、フリマやりたい」
と言い出したんである。お店屋さんごっこのノリなのだろうか。そんな気紛れに付き合ってられっか、と思ったら
「お金を稼ぐ大変さを身を以って体験させてやる」
意外と嫁がノリノリになってしまったのだ。
「売るものなんてあるのかね」
と首を傾げたが、狭いウチの中を調べると、昔タクが使ってた仮面ライダーのベルトだの武器だの、おもちゃを中心に結構あった。あとは嫁母が一方的に送りつけたものの、娘・R(11才)やタクが嫌って一度も着ていない服とか。
「あなたのも何か売れるようなものはないの?」
「うーん…ないよ」
返事に間があったのは、奥深く隠しているアレとかソレとかは、しかるべきところではコッソリ売れるだろうけど、ちょっとご近所イベントのフリマでは売れないなあ…とか考えていたからである。
さて、大変さを身を以って体験させてやる、と言っていた嫁であったが、結局一番大変なのは嫁自身であった。売り物を用意して、いくらで売るか考えて、釣り銭その他細かいものを用意して…とタクとか
「このポケモンカードも売れるかな~」
とか自分のおもちゃをいじってるだけで何にもやってないじゃんと眺めていたら
「あなたヒマだったら値札になるもの買ってきて」
とパシらされてしまった。買ってきた後は売る物の相場をヤフオクなどで調べていたが、手伝ったのはそれぐらいで、嫁が夜なべしてせっせと準備しているにもかかわらず子供達とがーがー寝てしまった。
翌朝、餅搗き要員は朝早くから駆り出されるため、出掛けるついでにダンボールに詰まった売り物を学校まで持って行ってやることにした。
「あと写真もよろしくね!」
嫁に撮影することの念を押された。
「ああそうか。デジカメ持って行かないとな」
「出来るだけイケメンのオヤジ撮ってね!AさんとかBさんとか!あなたとかCさんとかDさんみたいなただのオヤジかの絵はいいから!」
「うぜえ!」
餅より先にお前を搗いたろか。
餅搗き大会が始まったので、近所のオヤジたちと餅を搗きまくる。恥ずかしいことにちょっとやっただけでもう腕が上がらなくなり体力の限界、気力もなくなったので働いているフリだけにすることにした。
そういえば写真だ、と思い出して一応イケメンオヤジを3人ぐらい集めて撮った後、僕らオヤジ仲間から「ハカセ」「くまモン」「ジャイアン」と呼ばれているオヤジ濃度が高いどっから見ても完璧なオヤジ3人の写真も撮った。こっちを最初に嫁に渡してぎゃふんと言わせてやる。
やがて近隣の人達がやって来て、お餅をもらうための長蛇の列が出来、賑わってきた。
「うわわ、大丈夫か!」
と声が聞こえたので振り向くと、子供達の学校の先生が女の子におんぶされているではないか。女の子は軽々とおぶっていて僕の目の前で先生を降ろした。
「すごいね君。何年生?」
「3年生」
と笑って去って行った。おんぶされた先生はよく知っている先生だ。
「いやー教え子に慕われてますねー」
と冷やかすと
「いえ、うちの学校の子じゃないです…」
「えええっ」
ていうことは見ず知らずの大人をおんぶしてたわけ?…と驚いていたら
「あの…」
「わお」
いつの間にか僕の後ろにその子がいた。そして
「おんぶさせてくれませんか?」
「えー!」
どんだけおんぶ好きなんだ!ちょっと気味が悪くなった僕は
「あ、ごめんね、おじさん、ちょっと忙しいからね…」
すすすーっと離れて行ったのだがその子は他のオッサンにも「おんぶさせてくれませんか?」と声を掛けていた。妖怪逆おんぶおばけなのか…。
おおそうじゃ、フリマの様子はどうだろう。嫁と子供達はフリマから離れられないので、餅を人数分持って行ってやることにした。きなこ餅にあんこ餅、そしていそべ餅。オヤジたちが搗いた餅をお母さんがたがおいしく仕上げてくれていた。
で、見に行くとわりと断続的にお客さんがやって来てくれて、Rとタクもおっかなびっくり
「いらっしゃいませー」
などと言っている。嫁は僕を見つけると
「ごめん!ちょっと忘れ物したからちょっとだけいて!すぐ戻って来る!」
と家に戻ってしまい、しょうがないので店番することに。
「これは100円ですか?」
R用だった未使用の服を取り上げたご婦人が聞いてきた。
「はい、100円ですね」
「50円になりません?」
「いやー、ははは」
フリマ慣れしてる客が多いことよ。
嫁が戻って来たので再び餅搗きの手伝いに戻ると、なんとさっきの逆おんぶおばけっ子がガスガス餅を搗いているではないか!僕のように疲れてサボってるオヤジが増え、人手が足りなくなっていたので救世主となっていた。すごいパワーである。餅搗きだけに、気は優しくて、きなこもち。なんちて。吉田沙保里に弟子入りしたらいいんじゃないか。将来は金メダルを獲ってアルソックのCMに出演だ!
ようやくもち米もなくなって、お手伝いは終わった。餅をもらいに来た人たちもたらふく食ったようでぞろぞろと帰り始めている。フリマもそろそろ締めだろう…と撤収の手伝いでもしてやるか、と見に行ったら
「すごいよ!売れたよ!」
タクのおもちゃを中心になんと4,000円ぐらいの売上になったという。すげー。売れたのはオモチャ中心で、洋服などは全て未使用でブランド物もあったのに全く売れなかったそうだ。
「ここじゃ試着も出来ないしね。買おうという気分にならないのかもしれない…」
などと分析してみたが本当かどうかは分からん。ともかく嫁も苦労した甲斐があったと喜んでいてよかったね、と。
最後に一句詠みまーっす。
餅搗きは きなこ餅より お金持ち
なんちて。
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■演技でもない。
2014年12月02日(火)
小学校の学芸会を観てきた。
学年ごとに演劇を一本ずつ、どの子供達もいい表情で演技をしていて、この学校はいい学校なんだなあと思う。僕が一押ししている音楽の美人先生が全学年の劇を通してピアノ伴奏しているのもポイントが高い。
目立つことが大嫌いな娘・R(11才)は限りなくモブに近い「街の人」の役、お調子者の息子・タク(9才)は主役の「孫悟空」(ドラゴンボールではない)、と、それぞれが性格に合った役をこなしていた。
RはRなりにカワイイ演技をしていたし、タクも緊張せず元気でニコニコ大暴れしていたのでよく出来ていたと思う。
嫁に聞いたところによると、Rの役はモブとはいえ名前や年齢などを自分で設定し、その通り演じていたのだという。ちなみにRが自分で設定した自分の役柄は
「カティアという名の35歳の女性」
なんだそうだ。どうりでババくさ…じゃなかった、ひときわ地味ーな服を着ていると思った。aikoとか聴いてそうな独身アラフォー女性…みたいな感じで。Rの将来そんな感じになるのだろうか。
一方タクは前回の「桃太郎」に続き主役を張った。学芸会の前にいろいろ聞いたところによると、タクはタクなりに悩みがあった。というのも「孫悟空」役を希望する子はたくさんいたので、先生がオーディションを行ない、一番演技がうまかったタクを選んだのだそうだ。
しかしそれに納得いかない子がいたらしくて、
「その子に『どうして君が孫悟空なんだ』って言われるんだよー。なんかボクやだなー」
チクチク言われることがイヤなんだと、珍しく悩みを語っていたのである。
「一番上手だった君を先生が選んだんだから、悪く思うことはないよ。堂々と演技すればいい」
と励ますのだけれども
「ボクが孫悟空になってから、ボクをライバルみたいに見てるんだよね」
「ほー。その子は手ごわいのか?」
「サッカーやってるからスポーツ出来るし、背が高いし、カッコいいし」
「勉強はどうだ?」
「うーん、ボクよりできるよ。たぶん」
「勝ち目ないじゃん!」
「だからライバルにされてもなあ~」
まるでガラスの仮面のような様相である。演技力以外なんのとりえもない北島マヤと才色兼備のスーパーお嬢様・姫川亜弓のライバル関係みたいな。そういった舞台裏の緊張感も含めての学芸会なのだろう。
そんなことを考えながら嫁はビデオ撮影、僕はデジカメでの撮影をそれぞれ行い、学芸会が終わってウチに帰ってからRとタクに見せて見せてとせがまれた。
じゃあ見せてやるよ、とデジカメの画像を見せてやったところ
「あ、○○先生(音楽の美人先生)じゃん。パパ撮ったの?」
とRとタクが呆れ顔に。しまったー!隠し撮りしてたのバレター!
パパはねえ。タクが如意棒持って伸ばす演技してる時に鼻の下は伸ばしてたんだー。
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