一度だけの人生に
ひろ



 なんとも・・・

同じ病気の人が
前向きに歩み出すと、嬉しいけど
寂しくなると言う変な感じになります。

すごく卑しい気持ちだけど
なんか自分だけ同じ所をグルグル回っているような
気になって悔しくなります。


連休が明ければ
また学校。気が晴れるから
学校があった方がいい・・・。
人に会えるから学校があった方がいい

2002年04月29日(月)



 take back everything 

怖いのはみんな同じ・・・。

もう大学生活の残りが見えてきました。
ここら辺で現実の生活の方にもっと
力を注がなくてはなりません。

と言うよりも注ぎたいのです。
このままでは本当に後々
大学生活は「何もなかった」と回想しそうな
勢いなのです。

ネットの中での交流
それは確かにたくさんあった・・・。
それはとても大切だけれど、
でもやはり自分の中でメインの
位置付けとなっている生活は
当然現実の大学生活なわけで・・・・。
それはみんなも同じだと思う。


それだからこれから
どう変わるんだ??と言われれば
急にどうこうと変えるつもりもないのだけれど
でもこれから少づつ、きっと本当に
少しづつだと思うけどネットの世界から
離れて行こうと思う。

この日記とかホームページとかを
今すぐ削除しようとかそう言う極端なことは
しないけれど、維持に必要な最小限度くらいに
パソコンに向かう時間を減らそうと思っている。

別にこんなパソコン断ちみたいなことは
必要ないんだけど、ネットがひとつの現実逃避の
方法になっていることは自分の中で否めないから
意識的に注意するようにした。

まぁ今でも前に比べたら十分
パソコンに向かう時間は減ってるし、
いちいちこんなこと言わなくても自然と
減る方向へは進んでいるんだけどね。


ただこの日記と
今までお世話になった人達との関係は
どんな形でもいいから続けていきたいと
思っています。


2002年04月28日(日)



 nothingness

あぁマジで辛い・・・。

部屋にこもってると
どうにかなりそうだから
外にでてみたけど、やっぱり行くところと言えば
学校しかない・・・。
彼女のいない男友達はけっこういるんだけど
なんかイヤって言うのはぜいたくか?

この歳になると昼間っから男友達の
家を尋ねていってもなんかお互いに
ブルーになるもので・・・。

今年で22歳です。
それなりに親父化してます。
ヒゲ濃くなったり
階段辛かったり、
運動すると数分で息が切れたり・・・。


恋愛って・・・
今の俺は本当に出来るのかなって思う。
駆け引き(?)みたいなので
すでにかなり疲弊している感じです。

圧倒的に自分に自信がないのだから
何をしても自分で自分が気に入らない。
何を言っても駄目なような気がする。
ダメって言うのは付き合うとか合わないとか
そう言う意味でのダメって言うことよりも
それも含めた全般的な広い意味で、
何もかも駄目なような気がする。

でも完璧に自分に絶望しているなら
最初っから悩んだりとかしないわけだから
どっかまだそれでも
傲慢なところがあるかもしれない。

気分に乗り切れない感じ・・・

かなり思いこみの激しい方だから
一度「〜かも」って思い始めると
「きっとそうなんだ」って言う思いから
抜け出せなくなる。

あと一度「もうダメだ」って
思い始めると、自分から「完璧にダメ」に
したくなる・・・。

「希望」って言葉は正直言って
あんまり好きじゃない。
希望のおかげで何度も傷ついたり、
落ち込んだりした。
だからそうとう「希望」には
用心深くなっているんだけど、
それでもそれに食いつく自分・・・。

もっと気楽に
もっと素直に
もっと頑張らなきゃなぁ

あんまり深く物事を考えない人間になりたい

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2001年4月2日の場所に
「I’ve never been in love, have you?」を
書きました。興味ある人は読んで下さい。
ただしそれほどおもしろいものではありません。



2002年04月27日(土)



 three consecutive holidays 

あぁ3連休〜
本当にウザイ・・・とか思うのは
学生の傲慢だってのは分かっているけど
実際学校があった方が良いのだから仕方がない。
と言うよりも何か「やること」が
あるって言うのが良い。

こんな風なことは今まで何回も言ってきたから
俺がどんなにつまらない人間かは
簡単に推察することが出来ると思う。
自分でも思うんだ・・
なんてつまらない男だろうって・・・。

一人で過ごす時間って言うのが
どうしても億劫って堪らない。
退屈って言うのもあるけど
それ以上に無性に寂しくなったりする。
課題や授業に追われていれば、
それもいくらか紛れて良いのだけれども
本当に自由な時間って言うのは寂しいもの。

まぁただ単に趣味がないのが
いけないのだけれど・・・。

なんとかかんとか
楽しいことを紡いで生きていこうとしている。
でも実際はそんなのは無理なわけだから
そんな風に頑張って生きていても、
罪はないよね。
他の人から見たらウザイだけかもしれないけどさ。

俺みたいなやつは
些細なことをするのにもやたら勇気を
必要としているもので、
その勇気も当然コスト・リスクの計算に
入っているわけだからたちが悪い・・・。
結局出来ることは少ない。
と言うよりもやることは少ない・・か・・・。

深く、難しく考えると
本当に何もかもわけが分からなくなって
ただ面倒くさくなったりして
そんな結果に落ち込む。
結局は全部独りよがりで何にもならないって
そんな結果。

でも一人相撲は一人相撲で、めっちゃ疲れる。


時は流れる



(何が言いたかったのやら)


2002年04月26日(金)



 too self-conscious 

なんとも言えない毎日。

一日一コマは逆に
学校にくる気がなくなるから
悪いってことがわかりました。

バイト・・・。
お金が欲しくないわけじゃないけど
お金を持っていたとしても
使い道がない。せいぜい酒かタバコか・・・。
そんなところしか使い道がない。
ファッションには生来まったく興味がない。
ゆえにもしかしたら自分はダサイ格好を
しているのかもしれないが、
それもわからないくらいに興味がない。
もし彼女ができたらバイト始めるだろうけど
それもできる予定はなし。

人のためにお金使うのは好きだったりする。

自分がするオシャレと
言えば髪の色を変えるくらいだ。
髪の色を変えるのはけっこう好き。
なんとなくだけれど新しい何かが
始まるような気分になれる。

ボーダーの男と付き合っていたと言う
女の子が今日の授業で俺の前で話をしていた。
聞くと、どうもボーダーの人間は
「まともな人」からは酒びたり&薬漬け(OD)
のラリ憎に見えるらしい。
まぁボーダーって言っても
十人十色ってのはわかっているし、
その「彼」が本当にボーダーかどうか
もわかんないけどね。
「そう言う人って身近にあんまりいないから興味があって」付き合ってたらしい・・・・。

あぁ、この感覚・・・。

大学生は男も女もこんな感性しか
持ち合わせていないのか・・・・・。
つまらない・・・。
卑しい人達・・・

「絆」も
「信頼」も
誤魔化し、茶化して生きていく人達



2002年04月25日(木)



 anxiety

前々からそうなんだけど
どうも最近は生活が不規則なせいで
睡眠不足が続く・・・。
かと思ったら昨日今日は寝過ぎて
授業をさぼってしまった・・・。

あぁ彼女欲しいぃ

あぁ勉強しなきゃ

あぁ部屋掃除しなきゃ

あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

2002年04月24日(水)



 a new girl 

一昨日はコースの新歓でした・・・。

まぁうちのコースは
お酒飲んでもそれほど盛り上がる
感じの人間は集まらないので、
ぼちぼちと小学校のお楽しみ会の延長みたいな
飲み会を演習室でしていたわけで・・・。
そう言う俺も酒を飲んだからと言って
テンションが急に上がったりする方ではないから
そう言う飲み会の方が良かったりもするんだけどね

だらだらと0時頃まで飲んでたわけで・・。
そんでみんなは帰ったけど
俺は幹事だったから最後まで残ってたりして・・。
それからは
一人で最後の追い込みを・・・。
俺は一度飲み出すと、限界まで行かないと
眠れなくなったり気分悪くなったりするからねぇ。

すると演習室に一人の女の子が・・・
哲学コースの新入生で、顔は見たことあるなぁ
って・・。普段なら話し掛けないけど、
酒もけっこう入ってたから声をかけて
しばらく話し込んだ。
(ここまでが前振りです)

しばらく話してたら

♀「先輩ってもてそうですねぇ?」
俺「ええ!全っ然!もてないよぉ」
♀「ええぇそうなのぉすごくもててそうなのにぃ」
俺「ええぇ全然ダメなんだよぉ」
♀「彼女いないんですかぁ」
俺「いないよぉ」
♀「T(うちのコースの♀新入生)も先輩のこと
  すごくかっこいいって言ってましたよぉ」
俺「ええぇ〜!!かっこよくないよぉ」
♀「かっこいいですよぉ」
俺「そんなことないよぉ〜〜」
♀「Tに付き合ってって言われたらどうします?」
俺「ん〜どうしようかなぁ・・・(苦笑)」
♀「ねぇどうします?」

のような会話が・・・。
それから小一時間このような会話が続き・・・
やたら最後の質問の返答を迫られた・・・。
久しぶりの「春の風」に吹かれた気分だったが
こういう会話は大概とても危険・・・。
女の子は特に他意がなくても平気で
こういう会話が出来るもので・・・
その点、男はこういう会話は他意がなければ
できない・・・特に俺はできない(笑

「こいつどういう魂胆だ?」
って警戒
「馬鹿にされてんのかな・・・・?」
ってひねくれ
「とりあえずなんか微妙ぉ〜〜」
ってなった。

でもまぁその子もTさんもかわいい子だから
その時は久しぶりの
春の風に酔いしれてたんだけどねぇ(爆

(↑これがオチかい!!)


2002年04月21日(日)



 conduct of life 

人の言うことに黙って従う

なんて言うほど
出来た人間じゃないけど、
「人の言うことに文句言いながらも従う」
ってくらいは意志薄弱な人間です。

大学に入って
自分のことってほとんど友達に
話したことがない。
話せない。
せっかく大学に入ったのに
自分の本心を語ることの出来る
友達が一人もできないまま終わってしまうのは
すっごく寂しいって言うか
悲しい感じがする。

そこの部分を話さないと
本当の意味で友達って
思えないんじゃないかなって思う。
えてして同性って言うのは
こういう話をするとまともに聞いてくれない
ことが多い。
特に大学生は
脳みそがとろけているやつが多いしね。
快楽主義的なやつ。

それに何か
不思議な友達関係しかないような気もする。
とにかくシリアスなことは一切
全く話をしないって
暗黙のルールがあるみたいな・・。
これは俺個人にとってはそれほど
不思議なことじゃない。
でも俺の関係しない友達関係でも
こういうルールがあるみたいなのがとても
不思議に思えた。

俺は自分の今まで
経験してきたことが自分にとって
あまりにショックだったから
人に、それも口に出して言うことに
すごく勇気とパワーを使ってしまう。
だからその反動としてか、その話した相手に
大きすぎるある種の「期待」を持ってしまう。
これは自分の悪い癖だ。

その一人よがりな「期待」で落胆したり、
イライラしたり、相手を憎んだり、
また期待したり・・色んな感情が乱れ飛んで
混乱してしまう。

それでもやっぱり自分の処世術
「人の言うことには従う」
「自分のことでも
人のことでもシリアスなことはごめんだ」
って楽だけど辛いね・・・。

やっぱ限界あるよね


2002年04月19日(金)



 tomato juice 

寝る前にお酒を飲むと眠れなくなるのは
俺だけでしょうか??

前回の日記のタイトルの
ブラッディメアリーって言うのは
カクテルのことで、
最近初めて飲んだんだけど
結構飲みやすくておいしぃ〜。

だから家でも作って飲んだりしてる。

毎日のようにトマトジュースを買っていく
大学生・・・・。
トマトジュースをこんなに飲んだのは
生まれて初めてだ・・・。
でも眠れなくなるぅ〜
でもおいしぃ〜

って・・
たまにはこんな日記もいいでしょ?
そうでしょ?


2002年04月17日(水)



 あぁ

実はこの日記は裏日記だったりする。

ネットと言えど
やっぱり人間関係のご多分にもれずに
いろいろとしがらみ・・・じゃないけど
なんでも素直に書くって
わけにはいかなくなる・・・。

だからこの日記は
あちらの日記にかけないことしか書かないので
更新もちらほら・・・。

ま、いいでしょ?

2002年04月15日(月)



 bloody mary 

しかし・・・
学校始まると学校に来なくなるような・・・
言い方変えると
学校が無いときの方が学校に来てる・・。

就職か〜・・・ハァ・・・。
自分の性格って基本的には
暗いんだけど、そう言う自分って嫌いだから
なんとなく明るく振る舞うように
してる。
けれどやっぱ地は暗いわけだから
どうしても合わない「ノリ」ってやつがある。
今の時期の大学は新歓やら花見やらで
外はかなり賑やかなんだけど
つまりああ言う「ノリ」

どうも楽しいとは思えない。
と言うよりも何が楽しいのか分からない。
別に軽蔑してるわけじゃないけど、
あれも今時の若者の一つの
特徴と考えると、あの雰囲気になじめない
自分はそれだけでなんとなく
滅入るというかなんというか・・・。

あ、爪割れた・・・。
俺の爪は女の子みたいな爪です。
昔から女の子に誉められる時は
たいてい爪のことだったりします。
飲み会の時は良くマニキュアを塗られます。
でも「爪きれいだねぇ」って言われても・・・。


書くことがあるようなないような・・・。



2002年04月14日(日)



 memories

今日から学校が始まりました。
卒業要件単位まであと22単位です。
集中講義も考えればもうほとんど終わったような
ものです。

普通なら肩の荷が下りるところなんでしょうけど
自分の率直な感想としてはなんか
あっけないと言うか、拍子抜けと言うか
寂しい感じです。

この日記も一年以上続いています。
もちろん毎日書いてるわけではないけど・・・。
もうたくさん書いたつもりだったけど
実はまだまだ書くことはある。
なのに書かないのは
自分がそのことを正面から見つめたくない
って気持ちの表れなのかも知れない。

思い出したくないこと。
見たくない部分。
いまだに平気で回想することなんか
とてもできない出来事。

思い返すと自分の自傷行為は
今に始まったことじゃない。
小学、中学の頃から
コンクリートの壁をガンガン殴ったり
風呂の壁をガンガン殴ったりしていた。
親に止めろって言われても言われたすきから
やってたんだから、端から見たらかなり
異常だったろうな・・・。

いろいろあったはずなのに、
楽しいことはほとんど思い出さない。
小学校の担任の俺を軽蔑する目。
その担任に面と向かって「おまえなんか・・・」
って言われたこと。
口をきいてくれる人が誰もいなくなった教室。
みんなの俺を笑う声。
下校時にみんなに石を投げられたこと。
そんなことしか思い出さない。

深夜に外に引きずり出されて
一晩中外で泣いていたこと。
押入の中に何時間も閉じこめられたこと。
風呂場で窒息させられそうになりながら何度も
泣きながら謝ったこと。
父親に「おまえなんか・・・」って言われたこと。

そんなことしか思い出さない



2002年04月11日(木)



 introjection projection 

時が経てば
経つほど、どんどん自分が嫌いになる。

卒業した先輩が残していった言葉は
「大学に入って自分が好きになった」

心理学で「投影」についての
話聞いていたとき自分は
心臓がドキドキして、息が苦しくなって、
今にも叫びだしそうな感じだった。

「お前のことだよ」って
先生に言われるような気がした。

その後は
そう言う自分の思考傾向が
分かったおかげで、
ついそういう風に考えてしまう
自分を諫めることが出来るように
いくらかなったような気でいたけど
結局いくらもできていないことに
気づかされることがほとんどだ。


「楽な方に楽な方にって生きてきたんだろ?」

「頑張ってるつもりになってるんだろ?」


どうだろうね?

わからない


2002年04月08日(月)



 unequal

自分の、自分と他人に対する
思考回路は基本的にひとつの単純な
式でできている。

そう思うことが
特に大学に入ってから
多くなったし、実感でもあると思う。

この日記でも何度も言ってきたことだけど、
つまり、ギブアンドテイク。
必要とし必要とされる。

一方的には与えたくない。
一方的にはもらいたくない。
そうでなければ不安で、落ち着かない。

ずうっと
そう言う関係で生きてきたから、
いまだにそう言う考え方から
抜けることができていない。

「この人は自分に何をしてくれるかな?」
ってことを考える癖が抜けない。
「自分は何を与えればいいのかな?」
ってことを考えている。

俺は人の頼みを、誘いをほとんど断れない。
どんな嫌なことでも頼まれれば
嫌だっていえない。
薄笑いを浮かべながら「いいよ」って
言ってしまう。
そして嫌な思いをしながら、
それをやり遂げる。

なのにたいていの人はそんなに
喜んでくれないんだよね・・・。
そう言うとき悪いのは俺??
それとも相手??

俺は相手の喜ぶ顔見たさに
嫌な顔一つせず、愚痴ひとつ言わず、
やりたくないことをやってるのに
笑顔のひとつももらえない。

だから俺はほとんど人に
頼み事ができない。人を誘うことができない。


俺にとってはあなたで
あなたにとっては俺にならない理由は
いったい何なんだろうって
中学生くらいの時からずっと考えてるけど、

いまだに
俺にとってはあなたで
あなたにとっては俺にはならないんだね。


2002年04月06日(土)



 please don’t leave us 

どんな言葉も畏れ多く、
傲慢で、どれも申し訳ない気持ちを
起こさずに入られない。
でも、それ以上に今、何かを
言わずには入られないんだ。

このまま黙っているわけには
いかないんだ。

あなたのためだろうか?
あなたのためだけを想っているなら
たぶんきっと、僕は何も言えないだろう。
たぶん自分のため。

自分勝手な願いだってわかっていても、
ここでこの願いを伝えないわけにはいかない。

本当に嫌だ。
絶対に嫌だから・・・。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」

「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならば僕のからだなんか百ぺん灼(や)いてもかまわない。」
「うん。僕だってそうだ。」カムパネルラの眼にはきれいな涙(なみだ)がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」ジョバンニが云いました。
「僕わからない。」カムパネルラがぼんやり云いました。
「僕たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が湧(わ)くようにふうと息をしながら云いました。
「あ、あすこ石炭袋(ぶくろ)だよ。そらの孔(あな)だよ。」カムパネルラが少しそっちを避けるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥(おく)に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。ジョバンニが云いました。
「僕もうあんな大きな暗(やみ)の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」カムパネルラは俄(にわ)かに窓の遠くに見えるきれいな野原を指して叫びました。

 ジョバンニもそっちを見ましたけれどもそこはぼんやり白くけむっているばかりどうしてもカムパネルラが云ったように思われませんでした。何とも云えずさびしい気がしてぼんやりそっちを見ていましたら向うの河岸に二本の電信ばしらが丁度両方から腕を組んだように赤い腕木をつらねて立っていました。
「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」より


2002年04月02日(火)
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